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社説:「普天間」移設 地元納得の案へ修正を

 日米両政府が合意した「在沖縄海兵隊のグアム移転に関する協定」が国会で承認された。28億ドルを上限にした日本側の資金提供と資金の目的外使用禁止が協定の2本柱だ。そして、その海兵隊移転は沖縄県宜野湾市・米軍普天間飛行場の名護市への移設とパッケージになっている。

 国会の審議では、資金の使用目的や積算根拠などの問題点が解明されたとは言えず、また、普天間飛行場の移設も地元との協議が難航している。政府は、グアム移転に関する疑問に明確な回答を示す努力を継続すると同時に、普天間飛行場の移設問題に本腰を入れて取り組み、15日に復帰37年を迎えた沖縄の基地負担軽減を実現すべきだ。

 協定内容の問題点では、グアムの米海軍や空軍も使用する施設整備に海兵隊移転を名目にした資金を提供することが「目的外使用」に当たらないのか、という疑問は解消されなかった。また、日本の負担上限額の積算根拠も明確にならなかった。

 また、国会審議ではグアム移転による在沖縄海兵隊の削減数をめぐる問題が新たに明らかになった。政府は「海兵隊員約8000人とその家族約9000人のグアム移転」と説明してきた。協定にも明記されている。ところが、削減は定数の1万8000人を1万人にするとの意味で削減実数ではないという。沖縄海兵隊の実数は現在約1万3000人だから、実際の削減数は約3000人ということになる。「8000人削減」は沖縄の負担軽減の象徴的な数字だった。これでは、負担の軽減がこれまでの説明ほどではないということになってしまう。事実上の軌道修正と言われても仕方ない。

 これら協定の疑問は残されたままだが、宜野湾市の市街地に近接する普天間飛行場の移転は、周辺住民の安全確保、騒音や環境問題解決のためにぜひ実現しなければならない。

 日米両政府の返還合意から13年が経過した。06年に両政府が合意した米軍再編の「ロードマップ」では、普天間飛行場の代替施設を名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に14年までに完成させる計画だ。来年春までに結論を出さなければならない。沖縄県と名護市は、騒音・環境対策で日米合意案より沖合への代替施設移動を求めている。政府は地元自治体や住民の意向を尊重し、柔軟に対応して早期合意を目指すべきである。

 一方、民主党の政策「沖縄ビジョン08」では、普天間飛行場の移転は「県外移転を模索し、国外移転を目指す」となっている。政権につけば、日米間で協定を見直すということだろうか。近づく総選挙に向けて、新代表の下で沖縄政策を実現する道筋を具体的に示してもらいたい。

毎日新聞 2009年5月15日 東京朝刊

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