国民の目に魅力ある戦いとせねばならない。小沢一郎代表の辞任表明に伴う民主党代表選は鳩山由紀夫幹事長と岡田克也副代表による一騎打ちの構図が固まった。小沢氏のグループが鳩山氏を支持する一方、岡田氏は小沢氏と距離を置く中堅・若手が擁立の中心となり「親小沢VS非小沢」勢力の対決色が強まっている。
今代表選は次の衆院選に向け首相候補を決める舞台であり、派閥的なグループの連携や小沢氏との距離感で新代表を選んでは、政権選択の前哨戦の名が泣く。16日の投票を控え選挙期間は限られるが、政権を担い得るかの政見を両候補は競う責務がある。政策、体質とも党の力量が問われる局面である。
鳩山、岡田両氏とも14日の記者会見では、代表選後の挙党態勢の構築に努める姿勢を示した。
鳩山氏は、同氏や小沢氏のグループなどが推し、基礎票で優位とみられている。記者会見では「小沢代表の歩んだ道は間違っていなかった」と路線踏襲を強調、同氏の処遇についても「選挙でしっかり仕事をしてほしい」と期待を示した。一方で「小沢院政」が敷かれる懸念が出ていることに「かいらい政権だと呼ばれるつもりはない」と反論した。
岡田氏は毎日新聞の世論調査で代表にふさわしいと名を挙げた人が鳩山氏の倍近くあり、「選挙の顔」としての優位さをアピールしている。「オープンで国民に開かれた政党」を掲げ、代表就任の際の小沢氏処遇については「全員野球」を強調しつつ、明言を避けた。
小沢氏の辞任表明から5日後の16日の両院議員総会の投票による短期決着となり、オープンな政策論争を行う期間が限られたことは、残念だと改めて指摘したい。自民党ですら意識的に公開討論など開かれた総裁選びを進める中、内向きな代表選びに終わっては国民は興ざめだ。投票する国会議員は、その選択を党員らに説明することが望ましい。岡山県連は党員・サポーターの意向を電話で聞く予備調査を行うことを決めた。こうした工夫も一法だろう。
「政治とカネ」をめぐる焦点である企業・団体献金の禁止時期について両氏とも「3年後」で歩調をそろえるなど、本筋の政策で違いが見えにくいことも気がかりだ。消費税率引き上げについて鳩山氏は「議論すらすべきでない」と語った。岡田氏は引き上げは当面困難との見解を示しつつ、持論である年金目的税化に言及した。論争を深めてほしい。
毎日新聞の世論調査では、小沢氏辞任に66%が「遅すぎた」、83%が説明責任を果たしていないと答えた。厳しい国民の視線を見誤っては、党の反転攻勢はできない。
毎日新聞 2009年5月15日 東京朝刊