先月、DVDソフト発売でちょっとした“快挙”があった。アメリカで『ロストワールド』の復元版DVDがリリースされたのだ。もちろん、スピルバーグの映画『ジュラシック・パーク』の続編じゃなく、コナン・ドイル原作、ウィリス・オブライエンがクリエイトした1925年の人形アニメーションのほうだ。
この『ロストワールド』、完全版のランニング・タイムは104分と言われているが、1930年にライブラリー・レンタル用の短縮版を作るためネガをカットしてしまい、今日に至って68分のヴァージョンしか現存していなかった。このまま放っておけば、どこかに存在するかもしれぬ完全版が経年消失してしまう可能性も高い。そこで短縮版35ミリネガを保管しているジョージ・イーストマン・ハウスが復元に立ち上がったものの、修復作業にはお金が必要。そこでインターネットを通じて募金を募り、地道にリストレーションへの道を歩んできたのである。
その甲斐もあって、失われたシーンは海外へ流出したプリントなどの発見によって次々と次々と確保され、104分のランニング・タイムのうち94分までが甦った。今回、その活動の成果がようやくDVDにおいて知ることが出来るというワケなのだ。実際、ロンドンを徘徊するブロントサウルスなど、復活したダイナソー・シークエンスには息を飲むばかりだ。
ただ、現存する最良のヴァージョンにロストフッテージを継ぎ接ぎすることで画質のトーンがバラつくことを懸念してか、この復元版はカットシーンが多く残るフィルモビー・アーカイブ保存のコピーネガをマスターに使用している。画質だけを云々するなら1998年にルミヴィジョン社がリリースした短縮版のほうがクリアなのだ。
こういった事例は我が国にもあって、例えば短縮版作成時にオリジナル・ネガをカットした東宝の『キングコング対ゴジラ』は、復元したカットシーンとの画調統一を図り、全体の彩度とエッジのシャープネスを犠牲にしている。そのため徹底したノイズ処理が施されたハズのDVDより、8年前に東宝がリリースしたLDボックス『ゴジラ激闘外伝』に収録されている短縮版が「一番画質がクリア」という矛盾が生じる始末。
そもそもオリジナル・ネガをカットなんかするなよと言いたいところだが、映画が消耗品→保存へと観念が移行したのは極めて最近であり、その修復作業も商業性が伴わねば重い腰が動かない。DVD化というのは、その修復へのよい口実となるのだが。
……ああ、すでに主張が齟齬だらけ。『画質の悪いDVD愛好会』の看板に自傷行為でキズをつけるオレ。結成3カ月にして早くも解散か!?
今回本編に挿入された、ブロントサウルスの情緒あふれる帰還シーン。
2コマ程度のスチール挿入なのが残念。
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▲ルミビジョンから出ていた『ロストワールド』64分ヴァージョン。画質を優先するならこちらのほう。 |
▲『ロストワールド』新ヴァージョンDVD。インナースリーブは当時のプログラムの縮小復刻版。 |
(初出誌:ワールドフォトプレス「フィギュア王」2001年6月号)
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