★No.24 フライシャー兄弟『スーパーマン』★

 前号の【近況&プロフィール】で、「画質の悪いDVDソフト愛好会」の設立宣言をしたところ、頼みもしないのに真に受けた同志からいろんな申告があり、ちょっと嬉し迷惑な今日この頃。
「『レザボア・ドッグス』は思わず大空に向かって飛ばしたくなるDVDだ」とか、
「黒沢清の『CURE』は、予告編のほうが本編より画質が良くて新鮮な驚きです」
 など、みんな嬉しそうに語る語る。アレでしょうか。傍目にも怪しいに店に入って10万円ぼったくられ、そんな自分の浅はかさを自慢に転化する心理に近いというか。

 もうブロックノイズばりばり、オーサリングの段階で手ぇ抜きまくりなモノや、使用マスターの悪いモノ。とにかくありとあらゆる“画質が悪い”DVDソフトを巡る購入談は、明日への活力。最近は画質がいいと「ちぇっ」てな気分にさえなる。そりゃいかがなものかと思うけど、自分が太鼓判を押した『人食いアメーバの恐怖2』が、DVDのファンサイトで「人類が生んだ最悪のDVD」などという評価をされてたりすると、まるで自分が褒められたような気になるよ。

 ちなみにオレちゃんの最近のヒットは輸入版で恐縮だけど、マックス&デイヴ・フライシャーの名作アニメシリーズ『スーパーマン』。最初に購入したIMAGE版は、バキバキに退色したプリントをマスターに使いましたって感じのシロモノ。個人コレクションの16ミリプリントを大学の再撮室でテレシネしたあの日を思い出さずにはおれない画質は、軽いめまいを呼ぶ。
 ああ、こりゃあかんと思って懲りずに購入したのが、FOX LORBER版。これは御丁寧に[レストレーション・デモ映像]なんか入っていて、ことさら高画質を強調しているもんだから「すごいキレイになっているに違いない!」と思ったのがドツボ。修復したはずの画面がIMAGE版よりさらに悪い! 買えば買うほどクソのような画質のDVDをつかまされる快感は、まさにゼニを払ってでも経験したいものだけど(実際、払ってんだが)。ここまで脱力させられると、ネタとして披露しモトをとるしかない。フライシャー版『スーパーマン』はテクニカラー作品っスから、オリジナル・ネガさえ現存してれば目も醒めんばかりの高画質のハズなのに……。さらに昨年、IMAGEは新たに全話収録の『スーパーマン』DVDをリリースしたけど、またダメダメな画質に落胆するかと思うと既に購買意欲も萎え萎え。

 ……ていうか俺、画質の悪いDVD愛好会の会長として『スーパーマン』購入の動機が矛盾してないか? まぁ『ハンニバル』をアニメとか言っちゃう人ですからして。



 ▲オザキ推薦、イチ押しの『人食いアメーバーの恐怖2』だ!
「これならいっそ出さないほうが潔い」という見本のようなソフト。
▲『スーパーマン』のIMAGE版。全話収録されているが、画質的にはイマイチ。
▲修復を殺し文句にしている『スーパーマン』FOX LORBER版。


(初出誌:ワールドフォトプレス「フィギュア王」2001年4月号)






BACK   MAIN