2009年5月15日 10時36分 更新:5月15日 11時0分
福岡市東区の「海の中道大橋」で06年8月に起きた3児死亡事故で、危険運転致死傷と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪に問われた元同市職員、今林大(ふとし)被告(24)の控訴審判決が15日、福岡高裁であった。陶山博生裁判長は、1審・福岡地裁判決が適用しなかった危険運転致死傷罪の成立を認定し、懲役20年(求刑・同25年)を言い渡した。高裁は、業務上過失致死傷罪などを適用して懲役7年6月を言い渡した地裁判決を破棄した。
陶山裁判長は「事故原因を脇見運転とした1審判決には事実誤認がある」と指摘した上で、「飲酒の影響で前方注視が困難な状況にあり、被告もその認識があった」と故意性を認定した。
08年1月の地裁判決は、原因を脇見運転とする今林被告の供述の信用性を認定。最高刑懲役20年の危険運転致死傷罪の成否について「事故前に蛇行運転や衝突事故もなく、水の持参を頼んだ言動などから判断能力を失っていない」とし、酒気帯び運転と断定した。
その上で、現場まで道路状況に応じてハンドル操作していることや、事故から48分後の飲酒検知の数字が呼気1リットル当たり0.25ミリグラムで警察官が「酒気帯び状態」と認定した検知結果を重視し、「飲酒の影響で正常な運転が困難だった」との検察側主張を否定。業過致死傷と道交法違反の罪を併合した最高刑を言い渡した。
控訴審で検察側は、現場での走行実験を収めた動画を新たに提出。「現場付近の道路は横切る形でこう配があり、前を見てハンドル操作しないと直進できない」と脇見運転を否定。「飲酒の影響で前方注視を怠った」と主張し、改めて危険運転罪の適用を求めた。
危険運転罪は▽正常な運転が困難な飲酒や薬物摂取▽制御困難な高速走行--などで人を死傷した場合に適用される。死亡させた場合の最高刑は懲役20年だが「故意」の立証が難しく、適用件数は年間300件前後にとどまる。3児死亡事故では地裁が結審後、検察側に予備的訴因として業過致死傷罪の追加を命令した。【和田武士】
今林被告は06年8月25日夜、飲酒後に車を運転し、大上哲央(あきお)さん(36)一家5人が乗ったレジャー用多目的車(RV)に時速約100キロで追突して博多湾に転落させ、長男紘彬(ひろあき)ちゃん(当時4歳)▽次男倫彬(ともあき)ちゃん(同3歳)▽長女紗彬(さあや)ちゃん(同1歳)の3人を水死させ、哲央さんと妻かおりさん(32)を負傷させた。被告は現場から約300メートル逃走した。