小沢一郎代表の辞任表明を受け、後継を選出する民主党代表選の日程が決まった。その内容を聞いて驚いた人も多いのではないか。
日程は十六日の午前中に代表選を告示して立候補の届けを受け付け、午後から両院議員総会での立会演説会などを経て、全国会議員の投票で新しい代表を選ぶ。要するに選挙運動期間は無いに等しく、わずか一日で決着をつけることになった。
国会が開会中で、次期衆院選も間近に迫っている。こうした環境下で、代表選に十分な時間をかけられないのはやむを得ないだろう。短期決戦になると予想されたが、まさかこんな早期決着になるとは思わなかった。
今回の代表選は、小沢氏の公設秘書が起訴された西松建設の巨額献金事件で失墜した党の信頼回復と、衆院選に向けた態勢立て直しの場といえる。
同時に衆院選で政権交代の可能性が取りざたされる中、次の首相候補を選ぶ重要な選挙でもある。有権者の関心も高く、衆院選での投票行動の判断材料にもなろう。
代表選は小沢氏を支えてきた鳩山由紀夫幹事長と、小沢氏と距離を置く岡田克也副代表の対決となる見通しだ。活発な政策論争を通して、政権担当能力を評価できる好機と思われたが、期待は裏切られた。少なくとも数日間は選挙運動期間を設けるべきだったのではないか。
代表選の日程を決めた両院議員総会では、早期の決着に異を唱える議員もいた。しかし、執行部が押し切った。小沢氏の意向といわれるが、首をかしげざるを得ない。
小沢氏の辞任表明を受け、共同通信社が実施した全国緊急電話世論調査では、小沢氏の辞任が衆院選で民主党に有利に働くかどうかについて「有利」は19・2%、「そう思わない」が35・5%に上った。
ただ、最多は「どちらともいえない」の44・1%だった。新代表の手腕次第で局面が大きく変わる可能性がありそうだ。それとともに代表選がどう展開され、新代表がどのようにして選ばれるか、といった要素も影響を与えよう。
既に鳩山、岡田両勢力の多数派工作が活発化している。一方でこんな党内攻防に不満を抱く対応も表面化した。民主党岡山県連所属の国会議員三人が「開かれた代表選」を唱え、党員・サポーター約三千人の意向を電話で聞いて投票することを決めた。さまざまな動きが国民の目にどう映るだろうか。
麻生太郎首相と来日したロシアのプーチン首相の会談が行われ、最大の懸案である北方領土問題解決に向け、双方が受け入れ可能な方法を模索する作業を加速することで一致した。
麻生首相としては七月の主要国首脳会議(G8サミット)でのロシア・メドベージェフ大統領との首脳会談で領土問題解決への具体策を引き出すため、プーチン首相の認識を確かめることが大きな狙いだった。
プーチン首相は歯舞、色丹、国後の三島と択捉島の一部を返還する三・五島返還論への見解を問われ「首脳会談ではあらゆる選択肢が話し合われる」と柔軟姿勢を示した。「ロシアでは(領土問題を)解決しないでいいという考えもあるが、自分は逆で障害は取り除く必要がある」とも述べている。
だが、プーチン首相は領土問題の具体論には踏み込まず、森喜朗元首相との会談では二〇〇一年のイルクーツク声明が協議の土台との考えを伝えた。声明は一九五六年の日ソ共同宣言の有効性を確認する内容で、共同宣言は歯舞、色丹二島引き渡しと引き換えに平和条約を締結するとしたものだ。今後を楽観視することはできない。
首相会談では両国がエネルギー開発、省エネ技術や運輸などの分野で互恵的協力関係を推進する方針で合意。会談終了後、日ロ原子力協定などの署名式も行われた。
金融危機に端を発した世界的な景気後退でロシア経済も曲がり角にきている。大統領との役割分担で経済を担当するプーチン首相は日本との経済交流拡大には積極的といわれる。
経済的な結びつき強化をてこにした粘り強い働きかけで、ロシア側を領土問題解決へどう誘導していくか。日本の外交手腕が試される。
(2009年5月14日掲載)