「危険運転」高裁の判断は
「危険運転」高裁の判断は 05/14 19:24

幼い兄弟3人が犠牲になった、福岡市の元職員による飲酒運転事故の裁判はあす、控訴審の判決が言い渡されます。

一審で認められなかった「危険運転」が適用されるかどうかが、再び最大の焦点となっています。

大上哲央さんの長男・紘彬くん、二男の倫彬くん、長女の紗彬ちゃんの3人が、暗い海の中で命を落としたのは2006年の8月25日。

飲酒運転で事故を起こしたとして、危険運転致死傷などの罪に問われた福岡市の元職員・今林大被告の裁判が始まってから、まもなく2年がたとうとしています。

去年1月の一審判決は、焦点となっていた「危険運転罪」については適用しませんでした。

福岡地裁は、今林被告が100キロ近いスピードを出していたとしながら、事故前に道路や交通などの状況に応じて運転していたことなどをあげ、事故原因は「わき見」と認定したのです。

量刑は、検察側の25年の求刑に対し、判決では業務上過失致死傷罪などを適用し、懲役7年6か月でした。

控訴審でも、危険運転致死傷罪が成立するかどうかが最大の争点となりまりた。

検察側は、一審が事故原因と認定した、今林被告による最大12.7秒のわき見運転を否定。

一審判決後に事故現場で実施した実験ビデオを証拠として提出し、「左右方向に道路の勾配があり、長時間の脇見運転はできない」と主張しました。

その上で、「飲酒によって正常な運転が困難な状態だった」と、あらためて危険運転の適用を求めています。

一方、弁護側は、事故原因は今林被告の4〜5秒にわたるわき見運転に加えて、追突された大上さんが居眠り運転で衝突を回避しなかった過失もあると主張し、大幅な減刑を求めています。

大上さん夫妻は、法廷での意見陳述を控訴審になって初めて行い、今林被告側の主張に強く反論しました。

妻のかおりさんは、何度も声を詰まらせながら、「何にも代えがたい宝物だった」と、亡くなった3人の思い出を振り返りました。

ところで、控訴審では、事故の再現映像を証拠として採用する一方で、検察側が、「長時間のわき見運転が現実問題としてはありえない」ことを立証するために、裁判官による現場検証を求めましたが、結局、実施されませんでした。

控訴審について専門家は、「一審判決は厳格に事実認定をしている。量刑は非常に重い厳しい態度をとっているが、事実認定については、かなり厳格な事実認定をしている。今までの全体的な流れ、厳罰化に戻していくのか、あるいは、厳格な事実認定を維持するのかが、非常に興味深い。今回の事件だけでなく、裁判員裁判の下での危険運転罪の適用に大きく関わってくるというのが、注目される」と話しています。

去年8月、命日を前に事故現場を訪れ、花を供えた今林被告、控訴審判決を前に何を思っているのでしょうか。