13日、「ポスト小沢一郎」に名乗りを上げた幹事長・鳩山由紀夫と副代表・岡田克也は、ともに国会議員票を取り込む多数派工作を本格化させた。ただ、「親小沢(鳩山)対非小沢(岡田)」の構図が強調されることで「党分裂」の印象を与えることを恐れ、両者とも虚像の「挙党一致」の演出に追われた。
「3000人に事前調査します」。13日昼の民主党代議士会。若手衆院議員、津村啓介が、地元の岡山県連では党員・サポーターの意向を電話で聞き、代表選での投票に反映させる考えを示した。
ところがその後、民主党国会議員、都道府県連代表あてに、党選管名の「人気投票・予備投票禁止規定の順守について」と題したファクスが届く。予備選結果の事前公表禁止を徹底する内容だが、党内に「小沢主導で党員投票が見送られた」との不満がくすぶる中、予備選が広まって「非小沢色」があぶり出されることを懸念した小沢・鳩山執行部は先回りして注意を促した。
それでも、出馬に先手を打ったのは岡田だった。午後に東京都内の小沢事務所に姿を見せ、小沢に「出ます。決意を固めました」と伝えた。その後国会内で記者団に「民主党の代表、日本のリーダーになる思いを新たにし、決意した」と語った。
一方、鳩山は13日午前、旧社会党出身で選対委員長の赤松広隆と国会内で会談し、14日に旧社会党グループが鳩山支持を打ち出すことを聞いた。夕方には国会内で、若手・中堅15人と合流。衆院議員の松原仁が「挙党体制なら鳩山さんが一番」と促すと、鳩山は「心に決めたものはある。重く受け止め、明日にでも態度を表明したい」と力を込めた。
しかし、両陣営とも対立構図が露呈することを警戒している。鳩山はもちろん、小沢と距離を置く勢力に推される岡田も同様だ。13日夜には民放番組で「非小沢・親小沢という次元の低い争いにしたくない」と述べた。12日深夜に岡田と出馬時の政策を議論した衆院議員の中川正春は、「小沢路線を大きく変えるべきでない。親・非小沢を争点化しない方がいい」と提案した。
党代表代行、菅直人は12日夜に岡田と、13日には鳩山と会談。「親小沢、非小沢にならないように」と忠告した模様だ。12日深夜には自らのグループ数人を集め「私が出馬して三つどもえにした方が小沢さんを巡る対立の図式は弱まるのでは」と提起する一幕もあった。(敬称略)
毎日新聞 2009年5月14日 東京朝刊