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 『天道家の人々』 シーン13そのあとに...


「へへ……」
 らんまが口元からこぼれた汚れを拭いながら自嘲気味に笑った。息の乱れをひそめながら良牙はそのらんまの笑みを横目に見ていた。
「なあ良牙、最後までやってみねえか?」
 良牙は舌がひきつったような表情をした。らんまの顔を窺ったがすぐに目を逸らしてしまった。
「ここまでしちゃったし、俺もう後に引けない気がすんだ」
 良牙は床を見ていた。
「それに、正直言うとよ、してみたい、なと」
 らんまの告白に良牙は顔を上げたが表情は固く、無言のままらんまを見返した。
「な、いいだろ。しようぜ」
 らんまは自らの言葉に押し倒されるように、さっさとひとりで床に寝そべった。しかし、すぐに起き上がった。
「あん、これ床、痛てえな」
 床を指先ではじいて首をかしげる。
「う――ん」
 少しの間考えて、天井を見上げた。
「よし。来いっ良牙」
 らんまは勢いよく立ち上がると良牙の腕を掴んで引っ張った。
「いや……」
 良牙のささやかな抵抗は無視された。らんまは良牙を引きずるように廊下を走り、階段を駆け上がった。ドアの前に来ると手慣れた様子で静かに、素早くドアを開けて、ふたりは風のように部屋に入り込んだ。
 部屋の中に入ってすぐ良牙の顔が複雑に歪んだ。
「こ、ここは……あかねさんの部屋!」
 良牙が言うとおり、まさしくあかねの部屋だった。
「あーいろいろ考えてみたけどよ、ここが一番安全だと思う」
 らんまはあかねのベッドを見ている。
「だいじょぶだって。あかねはまだ三十分やそこいらは絶対戻らねえからよっ」
 あかねが自分と入れ違いで病院に向かったというかすみの話を根拠にしてか、自信を持った口調で言い切った。
「い、いや、そういう」
 らんまは鼻歌混じりにベッドの上を整え始めた。
「だから、でも、やっぱり……」
「ほら、早くしろよ。うだうだ言ってるとほんとに時間なくなるぜ」
 らんまはベッドの上に座って手を招いた。
「え、え? ん……。だけど……俺……」
「なに迷ってんだよ。ほら、早くこっち来いよ」
「う、ううっ、んん……」
 膝が崩れそうになるような歩き方で、良牙の足が半歩前に進んだ。
「ほらほら、早く」
 上着の胸を五センチばかりはだけさせて、らんまは作為的な潤んだ瞳で良牙を見上げた。なまめかしい息づかいもした。それはあまりにも意識的な仕草だったが、良牙は息を飲んで苦しそうな呼吸をした。それから足がさらに半歩進んだ。
 らんまが両手を差し伸べると、もう膝が崩れ落ちそうになっていた良牙はためらいながらも確実に手を差し出した。
 らんまは指と指を交互に絡ませて良牙の手を握った。そのまま引き寄せると、良牙は窮屈そうに体を折り曲げて、身震いしながららんまの体に覆い被さった。
「ベッド、上がれよ」
 言われて良牙はそっとベッドに膝を乗せて、らんまの太股を跨いだ。
 ふたりは顔を合わせた。
「はぁ、なんか、もうドキドキするなあ」
 白い歯を見せながら微笑むらんまの言葉にこたえる余裕が良牙には無いようで、肯定も否定もせずに体を強ばらせている。
 らんまは膝を立てて、足と足の間に良牙を導いた。良牙の視線はらんまの、トランクスと足の付け根の隙間に向いた。そこにある隙間はとても狭く奥はすっかり翳っていて、ほとんど何も見えなかったが、らんまの隠された部分がその陰の中にあることだけは確実だった。さりげなくそこを覗き込んだ良牙の下半身で、緩やかに頭を下げていた濡れたままの少年の性欲が熱をもった。
「じゃあ、良牙」
「うん」
「ここから」
 らんまはトランクスの隙間の部分を少しだけ横にずらして、陰部の縁を露わにした。すべてがさらけ出されたわけではなかったが、汗ばんだ溝があり細い毛があった。
「み、見えてる?」
「え? ああ、うん」
 良牙は泳いだ瞳で二度三度らんまの隠れた部分を見た。
「いあ、見るなよ。見ないで、きてくれ」
「う、ん」
 良牙が膝で進んで、らんまの足の間に割って入った。
 らんまはトランクスの隙間を押さえたまま、良牙を見ていた。
 良牙は無言で、いきり立った棒をトランクスの隙間に一見無造作な手つきで差し入れた。
「見るなぁ良牙」
 入れる場所を確認しようとした良牙を遮る声は、弱々しい声色に聞こえた。
「じゃ、じゃあ、する、ぞ」
 良牙はらんまに確認した。
「ああ」
 良牙が腰をもぞもぞと動かす。前後左右、そして上下。
 らんまの膝がひくひく動いた。
「うううッ! あ!」
 突然良牙が悲鳴を上げて、体を捻って飛び上がり、ベッドに腰掛けた。
「どど、どうした?」
 らんまは体を起こして良牙を見た。
「ぬんっ、やばい、でる」
 歯を食いしばった良牙が苦々しく言った。顔はなんとか余裕の笑みを取り繕おうとしていたが、情けなくわななくばかりで一向に笑みにはならず、それどころかたちまち泣くような表情に変わっていった。
「おい待て」
「んんっ。あ、ああ」
 良牙の先端から白い粘液が飛び出した。あかねの部屋を汚すまいとして、良牙は両手で包み込むようにして精液を受け止めた。おかげで床は汚されなかった。
「出ちまったのか」
「……」
 羞恥にまみれた良牙の顔はやっと笑みを浮かべたが、自虐の色をはっきり示すものだった。
「いいよ」
 らんまはベッドを降りて、あたりを見回した。
「コレ、借りとこ」
 あかねの机の端にあったハンドタオルを取ると、やさしい手つきで汚れた良牙の手を拭った。
 手を動かしてもこぼす心配がなくなったところで、良牙はらんまからタオルを取って自分で最後まできれいに拭った。
「それにしても良牙、おめえ早すぎだって」
 意地悪い笑みをたっぷりたたえたらんまは良牙から使い終わったタオルを受け取ると、あかねの机の上に放った。
「くっ、お、俺は、お前みたいに経験ない……から……」
 良牙はすねた表情でつぶやくように言った。
「ばかっ俺だってしたことねえよ」
「うそっ」
「ホントだって。だから、おめえの方が先に……」
「……」
 ふたりは黙ってしまった。そして意味もなく床を見つめた。
「じゃあな、良牙お前下になれよ」
 らんまは良牙を突き飛ばすような勢いで押し倒した。
「え、あうん」
 良牙がベッドの上に横たわった。
 その姿勢は『気をつけ』に近かった。
「いくぞお」
 らんまの威勢のいい声に良牙は無言で頷いた。跨っている相手を見上げる目は期待を通り過ぎて困惑の色すらあった。逆に良牙の上で仁王立ちのらんまの様子はというと、口を開いて惚けているような、だらしのない笑顔だった。
 そんならんまのトランクスの陰から、縞のようなものがチラッと見える。
「あ、見るなよ良牙、目つぶっててくれ」
「うん」
 良牙はどこに目をやったらいいのか分からないというように、あちこちを注目せずに見た。
 らんまがゆっくり膝を曲げ、腰を落とした。
 良牙はらんまの顔をずっと見た。
「じゃ、入れるぞ」
 トランクスの隙間から、良牙を招き入れる。腰を小刻みに揺らすようにして位置を定めた。
「あ」
 らんまがぐっと腰を沈めた。
「うあ、入ったぁ……」
 らんまはため息のような声をあげた。それから確かめるように自分の下腹部をのぞき込んだ。
「どうだ? 良牙」
「うん」
 らんまが腰を揺すると、布同士が擦れる音に混じって動物らしい音が漏れた。
「うっ、ふっー」
 らんまは良牙に顔を近づけて、小さな吐息を何度ももらした。良牙の胸に頬を当てるようにしたかと思うと、身体を起こして背筋をピンと伸ばして天井を見たりした。
「は。へそ、んとこに」
 らんまは悶えて、また腰を動かした。時折、痙攣したかのようにひとりでに震えている。
「すげぇ……こんな、ほら良牙も……」
 良牙はらんまを凝っと見ながら、腰をおとなしくもぞもぞと動かした。
 しゅるるッとらんまが口を鳴らした。
「おぁ、良牙、おまえのが、すごく」
 らんまは動きを止めて、良牙に抱きついた。
「らんま」
 良牙は腹筋を引き締めてらんまとくっついたまま身体を起こした。
 ふたりは座って抱き合うような格好になった。顔と顔が近づいて、息がかかる。
「はぁ、良牙。もう、あとはおまえがやってくれ」
 らんまはそう言うと、そのまま後ろに倒れた。
 良牙が迷いながらも動き始めると、らんまは枕を取って自分の顔に乗せた。それは大きなマスクのようだ。
 良牙が一つ息をのんでから、らんまの膝を掴んで開いた。
「ダメだ良牙、見えちゃうじゃねえかよ」
 枕の中かららんまのくぐもった声がする。
「あ、うん」
 らんまの膝を少し閉じてから、良牙は腰を前後に揺すった。
 ベッドが軋む。
「うぐぅ。すごいすごい、良牙、おれすごい」
「お、俺も、きもちいいぃ」
 陰毛どうしがこすれたり絡まるような音に混じって、ペシャンペシャンというプールサイドで聞くような音がする。
 良牙はらんまの様子をうかがいながら、ちらちらと何度か結合した部分を見た。
 らんまの縮れた細い陰毛の茶色の中に自分の固い肉が刺さっているのを目の当たりにして、息を荒げた。
 勢いよく引き抜くと、らんまの濁ったピンク色の肉が盛り上がって、粘着して引っ付いてくるかのように見える。
 出したり入れたりを繰り返していく内に、らんまとどんどん一体化していく。混ざっていくよう。
「ぐぐぐ……ん」
 らんまは良牙の二の腕を握って、喉の奥で激しい息を漏らした。顔の上にあった枕は床に落ちた。
 良牙の方は奥歯を噛みしめた赤い顔で、荒々しい鼻息をはいては胸一杯に深く息を吸い込んだりしている。
 良牙はテンポよく腰を突き出した。その度にらんまが弾んだ。
 グッチャングチャンと肉がはじける音がした。
「い、い、い、い、い、よお」
 激しい揺れの中ではっきりしない声のらんまが断続して悶えた。
「はっ、はっ、良牙ぁ、俺もう、先に出そうっ!」
 らんまは口をぱくぱくしながら股間に手を伸ばした。
「あ、そか、出るわけねえ、か、はっ」
「んんっ、らんまぁ」
 良牙も歯を食いしばった口の隙間から鋭い息を吐き、らんまの顔をのぞき込む。
 小鼻をひくひくさせながら、らんまは悶えていた。
「なぁあ、おれぇ、良牙にぃ見られる、のか」
「んんぅ〜」
 良牙の腰は一つの旋律をもって、強くらんまを突いていた。
 無駄に納豆を掻き混ぜている時に聞く音がふたりの股間で生まれ、空気と一緒に深まり絡まる。
「いくとこ見られんの、やだけどお、うっ、あぃッ!」
 らんまは口を開けて、半分笑うような顔で良牙を見た。それは不安を滲ませた引きつった顔だった。
 らんまの膝が大きく開き、自ら陰部を前方に押し出す格好をした。
 ブッ
 つま先立ったふくらはぎがピンとし、ふとももが揺れた。それからゆっくり力を失って沈み、焦点の定まらない瞳で良牙を見つめながら何度か痺れた。大きく足を開いたまま、らんまは力を失っていく。
 良牙は崩れ落ちたらんまの弛緩した身体を抱きしめるようにして、そのまま呻いた。数度呻いて、静かに動きを止めた。
 良牙の額から落ちた汗が、すっかりらんまを濡らしていた。目尻に汗とも涙ともつかない水滴をたくわえたらんまは、はっきりしない声で「いった」と、とても小さくつぶやいた。そして眠りに吸い込まれるように目を閉じた。
 良牙はらんまを抱いたまま動かなかった。良牙も目を閉じていた。
 ふたりは気付かないかもしれないが、熱気が部屋に充満していて、息苦しいほどに汗のにおいもする。
 良牙は時間をかけて息を整えた。
「俺、お前のこと好きになるかもしれない」と、独り言のような告白を、誰も聞き取れないくらいの声で囁いた。
 良牙の声を耳元で聞いたはずのらんまは動かず声も出さず、じっとしていた。
 良牙は頬でらんまの気配を探ってみたあと、ためらいながら、顔をらんまの方に向けた。
 間近で見るらんまの顔は汗をかいていて瑞々しく輝いていた。のぼせた顔色は桃色で、とけそうだった。
 らんまは眠っていた。
 良牙は起きあがろうとして、自分の背中に回っているらんまの腕をほどいた。
 腕は両側に流れて落ちた。
 良牙はうすく唇を開いているらんまの顔を間近で見続けた。
 らんまの吐息を吸った。良牙の頭は数センチ下がり、唇は接した。
 触れてすぐ良牙は体を起こし、らんまから離れた。唇を舐めてから半分萎えている陰部のしこりを触った。それは濡れている。らんまを見た。
 らんまは両手両足を開いた格好で眠っていた。
 らんまの足の付け根のあたりを見た。そこを遮っているトランクスも濡れていた。
 体の調節をするように、良牙は深呼吸をした。その拍子にベッドの縁で小さく表示されているデジタルの時計を見て、良牙の顔から気怠さが無くなった。
「な、なあ、らんま。寝ちゃ、まずいんじゃないか」
 良牙はらんまの肩をさすった。
「らんま、ほら、寝ちゃまずいって、らんまッ」
 あかねの部屋がふたりを包み込んでいられる時間はあまりないはずだった。
「らーんま、らーんま、起きてくれよ」
 良牙がらんまを揺する手の動きが大きくなり速度も増した。らんまの顎が円を描いて揺れた。
「んーん」
 らんまの勢いのない声を聞いて良牙の手はさらに動きを増した。
「おーきーろって!」
「……あんだよ、あん?」
 しかめっ面のらんまが良牙を見据えた。
「ああん? 良牙か。せっかく人がいい夢見てたってのによう。なんだ」
 らんまは舌打ちをしてから身体を起こした。
 股間を掻くようにまさぐって、髪を手でなでたり掻いたりして、また良牙を見た。
「なんだよ?」
 らんまは良牙を睨んで歯を剥いた。
「え? いや、だから、あかねさんが……」
「あかね?」
 あからさまに不機嫌な様子のらんまは、また股間を掻くようにまさぐった。
「ああ? ん? ここ、あかねの部屋じゃねえか」
 自分が眠りから起こされた場所があかねの部屋だったことで、らんまは素直に戸惑いの表情を見せた。
「お前が……ここがいいって言ったんじゃないか……」
「はぁ? それにしても、なんでオレあかねのベッドなんかで寝てたんだ」
 らんまは良牙を牽制するように見ながら、股間をまさぐるように掻いた。
「らんま、おまえ」
「ん?」
 顎を突き出して、らんまは良牙の二の句を待った。
 良牙と見つめ合っているらんまの表情が、みるみる強ばり始めた。
 良牙の下半身を見たあと、反射的な動作でトランクスに手を入れた。
 下半身を露出したままの良牙を見て、らんまの眉毛が動いた。
「お、おまえ、ま、まさか、オレを……」
 良牙は目を伏せた。
「し、し、した、のか?」
 良牙は否定しない肯定をした。
 言葉より先に、鋭く突き出されたらんまの左拳が良牙の右顎にめり込んだ。
「ぐがっ」
 良牙は首を不自然に歪めながら床を這った。
 良牙はかろうじて目を開けたまま、右腕を盾にした。その右腕をらんまの足が吹き飛ばした。床を転げて、うずくまったまま顔だけ上げて身構えた。身構えた瞬間に脇腹に衝撃を受けた。直後、後頭部をらんまの踵が擦って通り抜けた。汗ばんだ髪が焦げるような音をたてた。
「ま、まて! らんま!」
 良牙は手を突きだして制止した。すぐに手は手刀で弾き落とされ、胸元に硬い拳が飛び込んだ。
 ずんっと空気が振動して、良牙の体は宙に浮いたまま壁まで飛ばされた。壁で頭部を打った。白目を剥いたが意識は保ち、さらにらんまを制止した。
「ちがう!」
 良牙の否定の絶叫を聞いてらんまの動きは一時、停止した。が、次の言葉次第ではすぐさま再開するという構えを崩していない。
「らんま、ま、おま、おまえが、しようってっ!」
 ――。
「あんだと? このやろうふっざけた言い訳ほざくじゃねえか」
 床を蹴ったらんまの体は低く飛び出し、良牙の懐に潜り込んた。
 良牙の顔が引きつった。
「らんま!」
 良牙はらんまの腕を掴んだ。らんまの肉をえぐるように突き上げられた拳は鳩尾に触れたところで制止した。
 対乱馬戦では辛酸をなめ続ける良牙も、女になったらんまに対して力勝負で負けることはない。
 腕を完全に封じられたらんまは良牙を蹴って飛び離れ、間合いを計った。
「うぐぐぐぐぅ」
 拳を握り、構えはしているものの、歯をくいしばっているらんまの顔から徐々に戦意が失われていくのがはっきり見て取れた。
 あっけないほどに、らんまの殺気は消えてゆく。
 らんまの視線は良牙の下腹部で止まった――
「最っっっ低!」
 らんまは叫んで、床を叩いた。カーペットに吸収されて音はそれほど響かなかったが、振動は家屋の隅々まで行き届いた。
 突っ伏したらんまの肩はひくひくと震えた。ぶつぶつと何事か囁いたがことばは聞き取れない。懺悔にも呪文にも聞こえる小さなつぶやきだった。
 ギロッと、らんまは顔を上げるなり良牙を睨んだ。
「俺が誘ったテ、ぉんとか」
 苦々しい表情が示すように、らんまの声は震えていて、聞き取りにくかった。
「あ、ああ、ホント、だ……すまん。――だ、けどっ、俺は、その、軽い気持ちとかじゃなくて、……だから」
「……もしかして……」
 らんまは胸を押さえてガラス窓の方を見た。
「え? どうした?」
 良牙の問いかけにも答えずらんまは固まっていた。
「くそっ! シャンプーか!」
 舌打ちをすると同時に駆けだした。
「おい、なんだ、らんま、どうした!」
 良牙を無視してらんまは部屋を飛び出て行った。
 ドダダダッと、階段を飛び降りていく音が聞こえる。
「かすみさーん」
 らんまの声が階下で聞こえる。
 良牙は足下にあったごみ箱を手に取り、陰部を隠すとらんまを追うように続いて部屋を飛び出て行った。
 誰もいなくなったあかねの部屋は、とたんに静かになった。
 部屋の中につい今まで人が居た温度やにおいはすぐに消えていく。だが、机の上で丸まっている濡れたタオルと、しわになったシーツと、無くなったごみ箱は、あかねが部屋を出たときの光景と違ったまま。
 ミシシ……
 小さな軋む音がした。
 風に吹かれて、開いたままの扉がひとりでに閉まった。
 バタンッ――


〜つづくんですってば (>_<。)〜  


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