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社説:補正衆院通過 基金乱造は見過ごせぬ

 一般会計規模13兆9000億円、国債増発10兆8000億円の09年度補正予算案が衆院を通過した。

 時期が異例な上、規模は過去最大である。内閣府の試算によると、これにより09年度の実質成長率を3%押し上げる経済効果があるという。具体的には雇用対策や底力発揮・21世紀型インフラ整備、安心・安全確保策などのきめ細かい各種施策に加え、公共事業発注の大幅前倒しなどの効果だ。

 財政出動の規模がこれだけ大きければ、何らかの経済効果があるのは当然だろう。問題は、その効果は本当に国民に届くのか、安心や安全の回復につながるのかである。また、族議員や霞が関の関係省庁の既得権益温存や増殖を防止する手だては不十分と言わざるを得ない。

 結論を先に言えば、予算を交付する基金を乱造したことに象徴的に示されているように、霞が関バブルになっているということだ。

 これまでにも、複数年にわたる施策、地方や民間が受け皿になる事業では、基金が作られることはあった。しかし、今回の補正予算は異様である。民主党の細野豪志衆院議員の質問主意書で明らかになったが、46基金に約4兆3000億円が交付される。しかも、46のうち30は新たに創設される。

 基金は政府が一部を民間に、それ以外は自治体に設置させる。国の予算に計上された事業でも多くは地方が執行する仕組みになっているからだ。地方分権改革の趣旨からすれば、生活に関連する仕事は地方に権限と財源の移譲を行うのが筋だ。それができていないことの反映が、このような地方自治体でのひも付き基金創設となる。関係省庁や利権にかかわる議員による地方支配の継続と言われてもやむを得ない中身だ。結果として、地域ニーズを反映しない全国一律の施策になってしまう。

 なぜ、こんなことになったのか。

 景気対策を名分に国債頼みで予算規模を膨らませたためだ。事業ニーズの把握や絞り込みは二の次になった。これこそバブルである。財政緊縮路線の下、利権にかかわる予算を削減されてきた省庁や関係議員にとって好機到来である。

 補正予算案には再就職支援や雇用創出、地域医療再生など緊急度の高い施策も盛り込まれ、基金に必要経費が交付される。しかし、これらはなぜ基金経由でなければならないのか。20にものぼる農林水産業関係の基金は本当に必要なのか。こうした疑問は衆院での審議では解明されなかった。

 今からでも遅くはない、参院では核心に迫る審議で、不要不急の基金や利権につながりかねない基金を外すなどの措置を行うべきだ。

毎日新聞 2009年5月14日 東京朝刊

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