続いて話題は、これからの雑誌に求められるものに移る。河尻氏はそれを“ありがたみ”と表現した。紙で作られたモノである雑誌は作り手の視点を表現しやすい。単純に付録を付けるのではなく、内容としてのありがたみが必要と考えているようだ。さらに、雑誌広告にはまだまだ未来があるとも話してくれた。

ヌードを特集した「広告批評」No.335(画像クリックで拡大)

 最近の休刊ラッシュについては、僕が言うのもビミョーなんですが……。(休刊雑誌のリストを見ながら)「フロム・エー」(リクルート)といった情報誌はやっぱりネットでやったほうが効率的なんでしょうね。雑誌の性質上、休刊は仕方ない気もします。「諸君!」(文藝春秋)「論座」(朝日新聞)も休刊なんですか? うーん、オピニオン誌に興味を持つ人が少ないのかもしれません。いま“オピニオン”なんて言うと、上からものを言う感じが僕はしますがどうでしょう? インタラクティブの時代に合致していないのかもしれない。「月刊プレイボーイ」(集英社)は残念でしたね。篠山紀信さんがおっしゃっていましたが、ヌード写真は、今厳しいみたいです。ヌードを載せると広告出稿に響くといった理由で、避けられたりもするようです。

 今後の雑誌は“紙”の強みを生かしたことをやるしかないでしょうね。情報はネットで検索すれば得られる訳で、雑誌に対して読者は情報そのものを求めているわけではないと思います。どちらかと言うと、紙は編集というプロセスを経ることで、作り手の視点を感じさせやすいですし、モノですからブランドイメージを作りやすい。その意味では“ありがたみ”がキーワードじゃないでしょうか。付加価値を作っていく、ということになるのですが、とは言え、単純に雑誌に“おまけ”をつければいいってもんじゃないと思いますが。

 後、これは現状では難しいと思いますが、もしかするといまの流通システムを根本的に考え直せば、新しい可能性も見つかるかもしれませんね。これからは書店だけが雑誌をプレゼンテーションする場所ではないはずです。むしろ書店がマルチ・カルチャーステーションになっていくといいんですけどね。読者とより深くつながれそうな場所があれば、そこに雑誌を置いてもらう手だってあるかもしれない。雑誌が“雑誌”を超えて世の中のいろんなものとつながって、刺激的な存在になるといいですね。