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【から(韓)くに便り】ソウル支局長・黒田勝弘 食の世界化とは?
韓国人は自分たちが世界で何番目に位置するか、世界ランキングが大好きだ。いろんなテーマで韓国は今、世界で何番目かというのがいつも話題になる。マスコミにはしょっちゅうその順位表が出る。今朝の新聞には「アジア大学ランキング」特集があり、韓国の大学が2つ入ったと伝えている。
順位を見て競争心をかきたてられ「順位が上がるよう頑張ろう」というわけだ。これは韓国発展の原動力の一つだろう。とくに日本より上か下かという日本との比較は、韓国人にとっては尽きない「元気の素(もと)」である。
先日、韓国では李明博大統領が省エネ・グリーン政策のイベントで自ら自転車に乗って「自転車時代」をアピールしていた。その呼びかけも「5年以内に世界3大自転車王国に」だった。
最大の自転車王国は台数の中国なのか普及率のオランダなのか。そして2番目はどこなのか。「3大王国」の基準がよくわからないが、ここでも「世界で3位」になりたいというのだ。
さらに最近、大統領夫人を名誉会長に官民挙げてスタートした「韓国食世界化推進団」でも「韓国料理を世界5大料理に」とゲキが飛ばされている。
世界的な人気料理としてフランス料理、中華料理、イタリア料理、日本料理が挙げられていて、これらに次いで韓国料理も「ベスト5」に入れるよう頑張ろうというのだ。
「その志やよし」だが、ただ近年、日本料理が各国で人気だからといって日本人が日本料理を「世界でベスト何番目」などとは発想しないだろう。
韓国では最近、「韓国料理の世界化」とか「料理でも韓流を」などといって、韓国料理の国際的売り出しに懸命だ。その背景には明らかに日本からの「刺激」がある。とくにフランスのグルメ誌が日本料理を高く評価しているとのニュースが伝わったあたりから「わが国も!」となったように思う。ここでも韓国にとって日本は「元気の素」だ。
フランス料理はともかく、中華料理やイタリア料理の「世界化」には移民の影響が大きい。いずれも中国人やイタリア人の海外移民によって国際的に広がった面がある。その意味で、移民とは無関係の日本料理の国際的広がりは、日本の文化的パワーを物語っていて面白い。
日本料理には清潔、きれい、かわいい、ソフト、小さい、静か…日本文化の核のようなものが込められている。
では韓国料理はどうか。韓(朝鮮)民族は南北で約7000万の人口があり、その約10%に相当する移民が米国、中国、日本、ロシアを中心に各国に存在する。国際的にも有力な“移民国”だが、それにしては韓国料理はこれまで国際的広がりは弱かった。
理由は、においが強い、辛い、赤すぎる、見栄えがいまいち…?
しかし韓国料理が現在、世界で最も普及している国は日本だろう。ところが韓国料理と日本料理の違いは大きい。だから日本での成功(?)の秘訣(ひけつ)を探れば「世界化」へのヒントが探れるかもしれない。あの焼き肉だって韓国人自身が「もはや日本の方がうまい」といっている。
今後、日本人が「韓国料理の世界化」に一役買うかもしれない。米国では韓国人経営の日本料理店も多いと聞く。先年、モスクワのすし屋でも韓国人の板前がすしを握っていた。