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家族救おうと…悲劇 統合失調症の弟を殴り死なす (1/2ページ)
57歳の弟ともみ合った末に死なせたとして、東京都武蔵野市吉祥寺南町、自営業、田中健一郎容疑者(60)が今月3日、警視庁武蔵野署に傷害致死容疑で逮捕された。弟は統合失調症で最近は薬を飲まず、2人暮らしの父親(89)に暴力を振るうなど荒れ気味。事件当日も、田中容疑者がその暴力を止めようとしたところだった。攻撃的になることもあるとされる統合失調症患者。田中容疑者の犯行は許されないが、父親らから話を聞くと、過酷な状況に置かれた家族の現実が浮き彫りになってくる。
同署や父親ら家族によると、弟は統合失調症で、5年以上前には1年間ほど入院。退院後は無気力な状態が続いていた。「長男のおれが面倒を見ないと」。近所に住む田中容疑者は妻にそう言っていた。自身も脳出血を経験しているが、食事などの世話を続けた。
「病気が治ったんだ」。そう説明する弟は数カ月前から薬を飲まなくなった。実際、元気を取り戻したかに見え、田中容疑者は「あいつに奇跡が起こった」と喜んだがつかの間だった。次第に「変な買い物をするようになった」(父親)弟は、勝手に車を買ったり、庭師を呼ぶようになる。
「病院に行ってくれ」と説得する父親に「お前」と乱暴な言葉を使い、殴るようにもなった。父親と田中容疑者は「どうしようもなくなったら警察に行こう」と話し合っていた。
事件が起きた今月2日。父親は徐々に興奮気味となっていく弟に不安を覚え、自分の介護に来たヘルパーに寝室で相談した。「(弟のことで)弱った。入院してほしい」。たまたま近くで父親の言葉を耳にした弟は激怒。「お父さんが出ていくか、僕が出ていくか。家族会議だ」。矛先はヘルパーにも向かい、「帰れ」と怒鳴って追い出した。弟の豹変(ひょうへん)ぶりに危険を感じた父親は田中容疑者に「助けてくれ」と電話した。