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2009年5月11日

ハプニングバー経営者の弁護人を裁判官が一喝

 先週、法務省や東京地検などび裁判員制度に反対する内容の封書がたくさん届いたらしいですね。緑色の液体が入っている小型醤油入れが同封されていたし、「サイバンインコを殺す」なんてことが書いてあったそうな。

 反対する気持は十分に理解できるんだけどこういう抗議は間違っているでしょ。以前、東北地方での似たような手紙が郵送された事件があったけど、逆効果なんですよ。
 脅迫や業務妨害と考えて郵送したのかも知れないけど、「サイバンインコを殺す」って書いてますからね。実は、サイバンインコは着ぐるみで、中に人が入っているんですよ。実行したら、殺人罪で裁かれるわけ。そうなると、裁判員裁判が行われることになるんです。

 なんで反対を装って、裁判員制度を応援してるんだろ。重大事件を起こさなければ、裁判員裁判は行われないのにね。
 問題点も多いし、反対している人が多いのは分かってるんだけど、皆が「あんな制度、事実上なくしてやる」って考えれば、重大事件がなくなるかもしれないのに。もし、事件数が減るんなら、悪法であっても十分に意味があると思うんだけどな。

 さて、今回は、5月8日に行われた国弘周被告人(逮捕当時43)の裁判の話。罪名は公然わいせつ幇助。

 東京・六本木のマンションに開設されたハプニングバー“Jewel Kiss”で、公然わいせつの疑いで客の男女6人と、同幇助の疑いで経営者である被告人がそれぞれ現行犯逮捕された事件ですね。
 客6人は不特定の客に見える状態でわいせつな行為をし、被告人はそれを手助けした疑い。

 ハプニングバーは、客同士がわいせつな行為を見せ合うことなどを売りものにした飲食店。調べによると、同店は昨年12月に開店し、ホームページで会員を募集。これまでに約190万円の売り上げがあったとみている。

asozan090511.jpg

※事件の舞台となった六本木の夜景(写真は本文とは関係ありません)

 被告人の肩を持つわけじゃないんだけど、これって公然わいせつになるのかね。ハプニングバーの営業自体に問題があるのかもしれないけど、罪に問われているのは公然わいせつ幇助だからね。マンションの1室に公然性があるとも思えないのだが。

 起訴されたのは2つ。3月7日午後11時20分から26分の間、六本木“Jewel Kiss”内のプレールームで、男女3人が全裸もしくは半裸の状態で性交。被告人はその場を提供したという件。もう1つは同日午後10時45分から午後11時26分の間、他のプレールームで男女3人が性交することを知りながら、被告人は部屋とコンドームを提供したという件。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は20年前からミュージシャンを続けながら、グラフィックデザイナーや飲食店勤務などの仕事をしていたとのこと。
 “Jewel Kiss”は他の人物が、平成18年3月に乱交パーティー会場として開店。被告人は、平成19年2月から勤務。平成20年11月からは、被告人が経営者だったらしい。
 同店はホームページやメールなどで宣伝をして、客を集めていた。会員制になっていたが、初回の男性客から身分証をコピーするだけで、会員になることができたとこのと。

 取り調べに対して、被告人は「会員制に関しては、身分がわかっていれば、お客さんに自制心が働いて変な行動はしないだろうと思って、身分証のコピーをとっていた。なかなかセックスが始まらないときは、カップルや単独の女性客にコスプレしてもらったり、男性客の間に女性客を座らせたり、皆が楽しくセックスできる雰囲気作りを経営者として心掛けていた」と供述しているらしい。
 職業によって、気にしなきゃいけないことは様々ですね。

 法廷には、被告人の母親が出廷。「音楽の収入が安定せず、バイトをしているだけと聞いていた」「今後は社会の枠の中で生活してほしい」等々、述べていました。
 そして、被告人質問。まずは弁護人から。

 弁護人 「起訴状に間違いはないですね」
 被告人 「はい」
 弁護人 「店で“ハプニング”と呼んでいたのは、自然発生的に起きる性行為なんですよね」
 被告人 「はい」
 弁護人 「性行為を強制していないですね」
 被告人 「僕自身、セックスは気が合った人同士が行うものだと思っていたので、お客様次第です」
 弁護人 「経営者として気をつけてたことは?」
 被告人 「居心地の良さ、クオリティーです」
 弁護人 「電話の対応はどのようなものでした?」
 被告人 「あの、お客様から…」

 と、店の状況に関する質問が続いたところで

 裁判官 「弁護人! 何を聞きたいんですか? 事件と関係あるんですか?」

 と、裁判官が被告人の答えの途中で割って入って、関連性が薄い質問に注意です。すると、

 弁護人 「あのぉ…公然性の低さを証明しようと思いまして」

 と、反論。罪の軽さを立証しようとしているようです。しかし、その質問が、

 弁護人 「会員登録は誰でもできたんですか?」
 被告人 「信頼できるか確認していました。安心できる空間が必要なので」
 弁護人 「困ったことは?」
 被告人 「六本木なので、酔ってくる人やグループで来る人がいるんです。その場合は、他のお客様に迷惑になるので、断っていました」

 と、やっぱりお店の営業に関する質問なんです。これを聞いた裁判官が、ちょっとイライラしながら、

 裁判官 「そんなこと聞いても、公然性に何の判断にもなりませんよ~」

 と一喝。弁護人は仕方なく、反省に関しての質問に変更です。

 弁護人 「違法だとは?」
 被告人 「漠然と。同業者が摘発されたと聞いたので」
 弁護人 「悪いとは思っていたと」
 被告人 「はい」
 弁護人 「反省してます?」
 被告人 「近隣やマンションの住人に迷惑をかけたのが申し訳なかった思っています」
 弁護人 「調書では“社会に迷惑をかけた”と。そう思ったのは?」
 被告人 「エレベーターにも音が漏れていたので」

 迷惑掛けたと反省しているのは音漏れのようです。これは後で、裁判官からチクリと言われることに。
 次は、検察官から。

 検察官 「どんな人を断ったんですか?」
 被告人 「酔った男性とかマナーが悪い人。あと、風俗店と勘違いしている人とか」
 検察官 「他は?」
 被告人 「あまりにアブノーマルな方ですね」
 検察官 「ん? アブノーマルって?」
 被告人 「女装やSMのハード系はNGです。ま、細分化されてますけど、(同じ性癖の人に分けたのが)うちが成功した理由です」
 検察官 「ま、あなたも十分アブノーマルだと思いますけどね」

 と、イヤミを言って、質問終了。
 最後は、裁判官から。

 裁判官 「あの、あなたが話してる内容聞いてね、(傍聴席にいる)お母さん、本当にがっかりしてるよ」
 被告人 「はい」

 そして、弁護人の質問の時にイラついてたから、怒りだすのかと思ったら、

 裁判官 「うーーん、(本件の問題点の)答えは言わないよ。自分で考えないとだめだな、あなたの場合」

 と、優しく語りかけて、質問終了でした。たぶん、エレベーターに音が漏れていたのが、一番の問題ではないんでしょう。
 このあと、検察官が懲役3月を求刑して、閉廷でした。
 どうやら、会員制と言っても、最初は知り合いだけだったのが、ネットの宣伝を見てきた人もいて、500人弱の会員がいたらしい。
 その数だけで公然性があるのかわからないんだけど、公然わいせつの起訴ってのがなぁ。
 法律のことは全くわからないけど、ハプニンバーって、風営法的には大丈夫なのか? そちらで起訴されてれば、「こんな店を営業して」と責めることもできたんだろうけど。

注目の裁判

5月11日(月)被告人・鈴木克彦:名誉棄損
<ブログ上の名誉棄損事件> 09年2月、茨城県日立市の会社役員、鈴木克彦(当時41)は、ブログで以前の勤務先の会社経営者を中傷したとして逮捕された。会社を辞めた2年前から、中傷するブログを100以上立ち上げていた。

5月11日(月)被告人・嶋田孝一:殺人(控訴審初公判)
<暴力団幹部の刺殺事件> 08年5月、指定暴力団稲川会系組幹部の嶋田孝一(当時41)は、暴力団の内部トラブルで幹部を刺殺したとして逮捕された。

5月11日(月)被告人・板垣宏 十亀弘史 須賀武敏:爆発物取締罰則違反
<迎賓館などにロケット弾が発射された事件> 1986年に迎賓館などにロケット弾が発射したとして、中核派の須賀武敏、十亀弘史、板垣宏が逮捕された。1審では証拠不十分で全員が無罪とされたが、2審では無罪判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。上告審も2審判決を支持し、1審に差し戻された。

5月12、15日(火、金)被告人・篠沢大介:死体遺棄ほか
<不動産会社社長の死体遺棄事件> 07年4月、住所不定無職の高科龍軌(当時31)須和名聡(当時31)篠沢大介(当時36)らは板橋区のマンションから殺害した不動産会社社長、冨田威裕(たけひろ)さん(29)の遺体をカバンに入れて群馬県吉井町の雑木林まで車で運び、穴に埋めた。

5月12日(火)被告人・中島聡子:覚せい剤取締法違反(所持)(初公判)
<元五輪選手による覚せい剤事件> 09年2月、体操の元五輪選手・中島(旧姓岡崎)聡子(当時46)は、覚せい剤の袋を多数所持していた疑いで、覚せい剤取締法違反(所持)で現行犯逮捕された。中島はモントリオール五輪に15歳で出場し、引退後はタレント活動もしていた。

5月12日(火)被告人・国弘周:公然わいせつほう助(判決)
<ハプニングバーでの公然わいせつ事件> 09年3月、ハプニングバー「Jewel Kiss」の経営者国弘周(当時43)は、店内で男女6人が客に見える状態でわいせつな行為をする手助けをしたとして、逮捕された。

5月12日(火)被告人・杉崎徹:強姦未遂
<都営地下鉄職員が女子高生に乱暴しようとした事件> 08年9月、東京都交通局職員杉崎徹(当時33)は都営地下鉄三田線御成門駅で、改札口を通った女子高生(当時17)に声を掛け、駅員休憩室に連れ込んで暴行しようとした。1審で懲役3年の判決を受けた。(「不正乗車の女子高生への「お仕置き」はベッドで?」参照)

5月12日(火)被告人・清水大志:殺人等(控訴審判決)
<架空請求グループによる殺人事件> 04年10月、住所不定、無職の清水大志(当時25)と渡辺純一(当時27)は架空請求詐欺で得た金を奪おうとした仲間4人を都内のビルの一室に監禁し殺害した。1審で清水に死刑、渡辺に無期懲役の判決が下された。

5月13日(水)被告人・神崎修一:児童買春・児童ポルノ禁止法違反
<少女のわいせつDVDを制作した事件> 09年2月、タレントプロダクション「ピンキーネット」の経営者、神崎修一(41)らは、水着などを身につけた少女にわいせつなポーズをとらせたDVDを制作したとして逮捕された。08年6月に当時16歳の少女にスタジオでわいせつなポーズをとらせて児童ポルノのDVDを制作した。

5月13日(水)被告人・椿山譲:詐欺未遂
<架空の警備会社をかたった詐欺未遂事件> 09年1月、川崎市の無職、椿山譲(当時41)は、架空の警備会社をかたって男性会社員に「セキュリティー友の会に入会すれば、24時間体制で訪問販売業者などから守る」などとうそを言って、入会金約20万円を詐取しようとした疑いで逮捕された。

5月13日(水)被告人・森岡勝男:傷害致死(判決)
<路上生活者が仲間に暴行し死なせた事件> 09年1月、無職、森岡勝男(当時61)は東京都江戸川区の遊歩道で、60代とみられる路上生活者の男性を投げるなどして頭部に傷害を負わせて死亡させたため逮捕された。

5月13日(水)被告人・宮坂周作:強制わいせつ(判決)
<女子高生のスカートをめくった事件> 09年1月、東京都新宿区の会社員・宮坂周作(24)は、同区で女子高生(当時15)の後をつけ、マンション入り口でスカートをめくるなどした疑いで逮捕された。

5月13日(水)被告人・中島宏明、新井拓:暴行
<中核派活動家による大学職員暴行事件> 07年4月、中核派全学連活動家で法大2年の新井拓(当時32)と同派支持者の元法大生の友部博文(当時24)は、退学処分への抗議デモで大学職員を引き倒し暴行の現行犯で逮捕された。

5月13日(水)被告人・佐々木孝夫、阪口修司、小脇修:独占禁止法違反(不当な取り引き制限)
<建材用亜鉛めっき鋼板をめぐる価格カルテル事件> 08年12月、日鉄住金鋼板の佐々木孝夫・元専務(当時64)、日新製鋼の小脇修・元建築建材販売部長(当時53)、淀川製鋼所の阪口修司・元鋼板部長(当時61)らを公正取引委員会の追加告発を受け、独禁法違反(不当な取引制限)罪で東京地検特捜部から在宅起訴された。

5月13日(水)被告人・佐藤栄佐久、佐藤祐二:収賄(控訴審初公判)
<福島談合事件> 福島県知事の佐藤栄佐久は、福島県発注の大型ダム工事をめぐり、実弟の佐藤祐二経営の縫製会社の土地を時価より高値で買い取らせる形でゼネコンからわいろを受け取った。

5月13日(水)被告人・関本正信:麻薬取締法違反(麻薬原料植物栽培)(初公判)
<自宅でマジックマッシュルームを栽培した事件> 09年4月、東京都練馬区の清掃員、関本正信(当時30)は、自宅で幻覚症状が出るキノコ「マジックマッシュルーム」を栽培したとして逮捕された。別の麻薬取締法違反で起訴されていた。

5月13日(水)被告人・飯島勝:殺人
<両親と姉を殺害した事件> 04年11月、茨城県土浦市の無職飯島勝(当時28)は、自宅で包丁や金づちで両親と帰省中だった姉を殺害したとして逮捕された。調べに対して飯島は「殺される前に家族を殺そうと思った」などと供述した。

5月14日(木)被告人・小川俊之:爆発物取締罰則違反
<皇居に向かって火薬を詰めた消火器を発射した事件> 08年9月、神奈川県相模原市の元陸上自衛隊員の小川俊之(当時34)が、火薬を詰めた消火器を皇居に向けて発射したとして、逮捕された。


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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