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スタッフ日記
手作りコンニャクビジネス化
   日本アグリビジネスセンターが主催する「経営アグリビジネススクール」は二年目に入る。初年度は621人が受講し修了者(3回受講した者)は71人に達している。人々は講座で学んだことを、経営の現場で生かしながら事業を行っている。第一期生がどんな経営とビジネスを展開しているのか追ってみた。第1回は群馬県甘楽郡下仁田町で「和(なごみ)」を起業し、家族3人でコンニャク芋の生産から手作りこんにゃくの販売までを行っている橋敏夫さん(29)を紹介する。




「和」をモットーに百姓ライフ

写真: 手作りこんにゃく 「手造りこんにゃくにたずさわる人」「手造りこんにゃくの原料を作る人」「手造りこんにゃくを創る人」。3人の名刺で、最初が敏夫さん、次が父親の和夫さん(58)、そして母親の一江さん。「コンニャク芋の栽培は親父が、コンニャクの加工はお袋が、私がマーケティングとプロデュースを」という家族経営体だ。昨年4月に立ち上げた。

  「和」としたのは、和物を扱うことや土着のもに目を向けていきたいという起業の思いと、3人の「和」を大切にしていきたいとの家族の心が込められている。

 下仁田町はこんにゃくの町として有名だ。コンニャク芋の栽培を始め、芋を乾燥させて精粉にする製粉業者、製品に加工する練り業者などが集まっている。分野ごとの専門業者のほか、精粉から食品加工まで一貫しておこなう企業もある。農家は芋を二、三年かけて育て販売する。昔から養蚕の盛んな地域で橋さんも十五年前まで養蚕農家であった。経済的に合わないので止め、コンニャク中心の経営を行っている。

 敏夫さんは東京の大学を卒業後、宝石輸入商社に入った。タイのバンコク支店ではアジア金融危機にもろに見舞われ、悪戦苦闘した体験を持つ。一線の商社マンがなぜ農業を継ぐ決心をしたのか…。

 「自分としての仕事がしたい。農業ならそれを実感できる。これを強みに自分の生き方、『百姓ライフ』を生活感覚として確立していきたい」と考えた。「売り上げ、売り上げというなら、他の仕事をしたほうがいい。たくさん給料がほしいとか、大きな経営がしたいというだけではない。金だけが豊かさの尺度でもない。人生の目標は違うところにある」と思い、「単なる経済的な豊かさというだけでなく。豊かさとは何かという生活感を実践から得ていきたい。現代はブラックボックスのなかで生活しているようなもの。足を地につけた生活、それが農業であればできるのではないか。会社では時間まで自分のものではない。それはいやだ。それには自分で経営し、生産から販売まで持っていないと実現できない」と詰めて踏み切ったのである。

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プロ三人が役割分担し、本物の味づくり

写真: 高橋敏夫さん(右端)と和夫さん(左端)一江さん(中央) 芋の生産から加工、販売まで、プロの3人が分担して当たる。手作り一貫体制である。個人の農家としては、芋からこんにゃく製品まで作っているのは橋さん一軒だけである。「一貫経営は付加価値を付ける農業であり、将来性も、話題性もあると思った。中山間地は農業者も減る一方だけれども、ニッチ(隙間)なものに将来をかけるのが一番で、やり方しだいで展望が開ける」と可能性にかけてたのである。

 コンニャクを加工する一江さんは日本特産物協会が認定する地域特産物マイスター。伝統の作り方で添加物を一切使わない。芋を目の細かいおろし金ですりおろし、凝固剤の石灰も地元産を使い、緑の山々が生み出す水で溶き、よく混ぜる。「生ずり」「手練り」である。この手法だと均一の製品に仕上げるのが難しいのだけれど、長年の技がこれを克服し、いつも同じ製品ができるようになった。一江さんは「自分の家で作った芋を加工の技術を生かして製品化し、消費者に食べてもらう。安心して食べてもらえる」と。食べた人から「おいしかった」の評価に自信を深めている。

 敏夫さんは商品パッケージを工夫し、アイテム数を増やしたりと知恵を出している。商社仕込みの行動力を生かして、販路の拡大に飛び回っている。今は近隣の直売所4か所、スーパー1店それに通販で…。九州の飲食店や大阪にもだしている。こんにゃく製品、手作り用生玉、種芋なども販売する。方向としては飲食店などを中心に受注生産していきたいという。

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役立ったスクールの体験

 起業とともに敏夫さんはアグリビジネススクールに参加した。そこで多くを学んだ。

 まず個人ではとても会えない人に会って話が聞け、しかも大きな視点での話が聞けることが将来を考える上で参考になったという。自分の地区以外のことが聞け、思考に深さが増し、全国ベースの話から自分の思い入れをはっきりさせることもできたのである。スクールで知り合った人々のネットワークを通じ、販路拡大や商取引のアドバイスを受けている。

 自分なりのテーマを持って参加し、質問したり、話し合ったりすれば、解決の手法や方向が見えてくる。敏夫さんが課題としたのは、家族経営でやる場合の最適規模、一農家としてやるならどれくらいか、ということだった。講座を通じて1.5から2.0ヘクタールで売り上げの限界が2000万円との話を聞いた。自らの目標とほぼ同じだと思ったという。講座を受けて先が見えてきたわけで、これからどう自分で課題を解決していくかだ、と話していた。

 「原料を作るだけではなく、付加価値を付けて行かなければこれからの農業はない」と思っていた和夫さんの夢が、敏夫さんの参加で一歩進みだしたのである。営業が先ではなく、喜ばれるものを作ることに原点を置き、手作り一貫体制ですべてが自家製という農家の精魂込めた製品を扱う「和」、新たな家族経営のタイプを作ろうとしている。

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