5月14日に風邪をひいてからというものの、3週間風邪が抜けませんでした。更新が大幅に遅れましたことをお詫びいたします。
@ マイクロフィルムで復刻・刊行された『外務省茗荷谷研修所旧蔵 戦中期植民地行政史料 教育・文化・宗教篇』(ゆまに書房、2003年12月)の解題を、熊本史雄氏が書いています。題名は「『解題 外務省茗荷谷研修所旧蔵記録 I門』の史料的位置」。
A 原田環氏「第二次日韓協約調印と大韓帝国皇帝高宗」、『青丘学術論集』第24集(財団法人 韓国文化研究振興財団、2004年4月)所収、は第二次日韓協約の締結交渉において皇帝高宗が、日本の協約案を修正して調印する方向に韓国政府の大臣たちを動かしていたさまを描いています。
B 奈良岡聰智氏の「加藤高明とイギリスの立憲君主制」が伊藤之雄・川田稔編『二〇世紀の天皇と君主制』に掲載されています。これまで系統的に使用されてこなかったイギリス公文書館所蔵の外交文書やタイム紙を活用し、加藤がイギリスの立憲君主制をどのように理解し、それは加藤の政治指導にどのような影響を及ぼしたのかについて検討を加えています。加藤高明と政党政治についての氏の一連の研究の一環をなすものです。
C 高原秀介氏の「ウィルソン外交と日本 その可能性と限界」が『創文』463号(2004年4月)に掲載されています。「自由主義的・民主主義的国際主義」を標榜しつつ、アメリカこそが正義であると自認し、国内外の政治体制の変革を追求することがアメリカの使命であるとのアメリカの態度は往々に「ウィルソン主義」と呼ばれますが、著者は、ウィルソン主義とウィルソン外交の実相は明確に区別されるべきだとして、ウィルソン政権による対日政策をアメリカの東アジア政策史の系譜に位置づけました。
D 川島真氏の「中国が『普通の国』になる中で 中国研究の艱苦」も、同じ『創文』463号(2004年4月)に掲載されています。
E 山口輝臣氏の「愛息の徴兵に立ち向かう福沢諭吉」、『史淵』141号(九州大学大学院人文科学研究院、2004年3月)は、一行目を読み始めたが最後、絶対に止められなくなります。
F 宮地英敏氏の「初期農商務省の政策対立」が『歴史と経済(旧 土地制度史学)』183号に掲載されています。宮地氏が東京大学日本史学研究室に提出した卒業論文のテーマを、数年の研鑽・研究を経て深めたものです。著者の研究の出発点となった問題関心が鮮やかにまとめられています。現在、著者は東京大学大学院経済学研究科助手。
G 高橋勝浩氏の「外交再建策としての対米特使派遣構想−満洲事変期を中心に−」が『國學院大學日本文化研究所紀要』第91輯(2003年3月)に、同「宮内庁書陵部所蔵三上参次『御進講案』その一 解題と翻刻」「宮内庁書陵部所蔵三上参次『御進講案』その一二」が、『國學院大學日本文化研究所紀要』第92輯(2003年3月)93輯(2004年3月)に掲載されています。特使派遣構想についての論文は、若槻・犬養内閣期から斎藤内閣期にいたるまでの、さまざまな対米特使派遣案の意義を、出淵勝次日記、倉富勇三郎日記、鶴見祐輔日記、本庄繁日記、関屋貞三郎日記、石井菊次郎日記や、憲政資料室所蔵の当該期の書翰を渉猟し尽くして書かれた論稿です。御進講案についての解題と翻刻は、昭和天皇の明治天皇理解や歴史理解の形成過程を考える上で、非常に貴重な論点を提供するものとなるでしょう。三上は大正13年から昭和5年にかけて、全部で27回、昭和天皇に御進講しています。
H 高橋勝浩氏にはほかにも「外務省革新派の思想と行動−栗原正を中心に−」、『書陵部紀要』第55号(2004年3月)があります。外務省革新派についての研究は、白鳥敏夫や川村茂久中心に、塩崎弘明氏や佐道明広氏によってなされてきた観がありますが、ここに栗原正が加えられたことになります。栗原正のご子息である栗原昭氏から著者が提供を受けた、栗原の旧蔵図書目録も一見の価値があります。
I 岩壁義光氏による昭和天皇「御幼少期関係資料」の翻刻・紹介が一段落した模様です。徳大寺実則日記と木戸孝正日記に示された、詳細な記録です。これもまた、昭和天皇がいかなる教育を受けたのかを論ずる際には不可欠な史料となるはずです。すべて、『書陵部紀要』第53号〜第55号まで(2000年3月から2004年3月)に掲載されています。なお、岩壁氏にはほかにも、「明治天皇紀編纂と史料公開・保存」、『広島大学史紀要』第6号(2004年3月)所収がある。
J 栗原純氏の「台湾における日本植民地統治初期の衛生行政について」が『史論』第57号(東京女子大学、2004年3月)に掲載されています。
K 保谷徹氏の「一八六四年英国工兵隊の日本報告(6)」が『東京大学史料編纂所所属画像史料解析センター通信』第25号(2004年4月)に掲載されています。
L 文書・記録管理の最前線を知りたい方は、小谷允志氏の「組織の倫理と記録管理」、『レコード・マネジメント』47号(2003年度研究大会特集)を是非お読みいただきたいと思います。
M アーネスト・メイ、進藤榮一訳『歴史の教訓』(2004年)が岩波現代文庫に入りました。この機会に手に入れておくと、学生との読書会などの折に便利です。同様に、ホブスン、矢内原忠雄訳『帝国主義論』(上・下)が、岩波文庫の2004年のリクエスト復刊に入っています。
N 貴重な博士論文の成果が刊本となったものに、一ノ瀬俊也氏の『近代日本の徴兵制と社会』(吉川弘文館、2004年)と、古川江里子氏の『大衆社会化と知識人』(芙蓉書房、2004年)があります。
O 注目すべき書籍として、以下のものがあります。
浅野豊美、松田利彦編『植民地帝国日本の法的構造』(信山社、2004年)、同『植民地帝国日本の法的展開』(信山社、2004年)
。国際日本文化研究センターの共同研究「日本植民地法制度の形成と展開に関する構造的研究」を基礎として刊本となった共同研究の成果です。
佐々木陽子『兵役拒否』(青弓社、2004年)。ドイツ、アメリカなどについての良心的兵役拒否についての論稿。
永嶺重敏『<読書国民>の誕生』(日本エディタースクール、2004年)
西野嘉章編『プロパガンダ 1904〜45 新聞紙新聞誌新聞史』(東京大学出版会、2004年)⇒表紙の装丁に使われた、マヤコフスキー葬儀の日のプラウダの紙面の顔の迫力がまた、、、。
小林英夫・加藤聖文・南郷みどり編『満鉄経済調査会と南郷龍音 満洲国通貨金融政策史料』(社会評論社、2004年)
⇒南郷龍音史料の重要部分の翻刻。