新型インフル、強毒性ウイルスへの変異も=WHO
[ジュネーブ 12日 ロイター] 世界保健機関(WHO)は12日、世界中に感染が拡大している新型インフルエンザウイルスは、今後毒性の高いものに変異する危険性があると警告した。
また世界的大流行(パンデミック)を引き起こした後、世界を少なくとも3周する可能性があるとして注意を呼びかけている。
WHOは「インフルエンザ・パンデミックの深刻さの考察」と題された報告書を公表。そのなかで、医療保険制度が発達している地域では感染しても症状を抑えられる可能性があるものの、医薬品不足や医療機関の整備が十分でない地域では感染者の症状が重篤化する危険性があるとし、パンデミックが引き起こされた場合、世界各地での被害状況は異なると指摘した。
豚インフルエンザウイルスから変異した今回のH1N1型の新型インフルエンザウイルスは、季節性のインフルエンザウイルスよりも感染力が強く、この新型インフルエンザウイルスに対して免疫を持っている人はほとんどいない、と警告している。
国連の最新のデータによると、これまでに30の国と地域で5251人の感染が確認された。これまでに感染によるものと確認された死者は61人。WHOによると、内訳は、感染被害が最も大きいメキシコで56人、米国で3人、カナダとコスタリカで各1人となっている。
新型インフルエンザの症状は、発熱、頭痛、下痢など季節性インフルエンザの症状とよく似ており、感染しても症状が出ない場合もあるという。ただ、WHOはインフルエンザウイルスは頻繁に変異する特性を持ち、どのように変異するかは予測不能なため「パンデミックが発生している間にウイルスが強毒性のものに変異する可能性は決して排除できない」と警告している。
さらに「パンデミックが発生した場合、世界を少なくとも2周する可能性があり、場合によっては3周する恐れもある」とし指摘。さまざまな状況に左右されるため、第2波、第3波の被害の深刻さは、国や地域により異なるとした。
1918年にパンデミックを引き起こし、数千万人が死亡したインフルエンザウイルスは、感染拡大の初期は弱毒性だったが、半年後に強毒性のものに変異し、世界中で猛威を振るった。1968年に感染が拡大した新型インフルエンザウイルスも、感染拡大初期は弱毒性だった。
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