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狂映画批評

バビロンA.D.

◆アウトローヒーローとして観る者に好意を抱かせる (75点)

バビロンA.D.

© 2008 Twentieth Century Fox

 新世代アクションスターのヴィン・ディーゼルが久々に日本のスクリーンにやってきた。ジャンルはもちろんアクションで近未来を舞台にしたややSFテイストだ。

 戦争やテロで荒廃した近未来の地球。かつて、金と引き換えに様々な危険な仕事をやってのけてきた一匹狼の傭兵トーロップ(ヴィン・ディーゼル)が、最後の仕事として国際的マフィアのボスであるゴルスキー(ジェラール・ド・パルデュー)からの依頼で、ある謎の少女オーロラ(メラニー・ディエリー)を六日間でニューヨークまで運ぶという任務を引き受けるが……。

 トーロップとオーロラとその保護者であるシスターのレベッカ(ミシェル・ヨー)の三人がモンゴルを波きりにカザフスタン、ロシア、ベーリング海峡、アラスカ、ニューヨークと旅を続ける中でオーロラの様々な秘密が除々に明かされていく。そして、行く先々で様々な危険が三人を襲い掛かる。ここでヴィンのアクションが観られ、楽しませてくれる。

 ヴィンが人気K-1ファイターのジェロム・レ・バンナ扮するストリートファイターと肉弾戦を繰り広げ、スノーモービルで雪原を疾走させながら空から攻撃を仕掛けてくる二機の無人戦闘機との大攻防戦を展開し、カーチェイスをやってのけたりというアクションはありがちではあるものの面白くて印象深い。ヴィンにとっては『リディック』(04)から四年ぶりのアクション作品であるが、ブランクによるパワーダウンや見劣り等は一切なく、実にカッコよくて勢いのある最強アクションをしっかりとキープできていたことが何よりも良いのだ。ミシェル・ヨー、ジェロム・レ・バンナが魅せる格闘アクションも注目すべきポイントだ。

 主人公トーロップは、今までに散々人々を殺してきた究極の悪党、アウトローであるが、自身が決め込んだ強固なルールには忠実に従って行動する。不良性感度を醸し出すチョイ悪なイメージのヴィンにとってはピッタリなキャラであり、その好演ぶりも注目度が高い。でも、オーロラやレベッカに対して時折魅せる優しさや温かさがさらにイイ男としての魅力を発揮させ、アウトローヒーローとして観る者に好意を抱かせる。

 監督は、役者としても活躍するフランスのマチュー・カソビッツ。彼の見せ場作りは結構優秀であり、無駄を少なくして手際良く90分にまとめ上げたという腕前はまさに素晴らしい。

 ヴィン・ディーゼルはアクション復活作品でその健在ぶりをしっかりとアピールできたのである。本当にそれだけでも十分良いのだ。

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