この春、沼津市に転勤した。失礼を承知で言えば、中心街の最初の印象は「道路が窮屈で、車で走りにくいなあ」「都市計画を間違えたんじゃないの」というものだった。1カ月余たった今も、そう感じている。
市は、JR沼津駅周辺の道路や水路などの総合的な基盤整備を進めている。だが、鉄道を高架にするための用地の取得を巡って、地元住民との対立が続く。反対派の団体は栗原裕康市長との協議を拒み、これに栗原市長が「いつまでもごねて」とストレートな発言をする始末。溝は深まるばかりだ。
住みやすい街づくりを目指して、これから活発な議論がなされることを望むが、高架化問題の歴史は20年に及ぶだけに一筋縄ではいかない。今後、両者がテーブルに着くことがあるのか。多額の税金が使われる事業でもあり、しっかり動きを見守りたい。
以前は静岡市に住んでいたが、この鉄道高架化の問題が話題に上ったことはほとんどなかったように思う。これは県の事業でもあるが、県民がどれだけ理解しているのかも、気がかりだ。【田口雅士】
毎日新聞 2009年5月13日 地方版