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養護学校 足りぬ作業場

2009年05月13日

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学校の中庭に特設した中学部園芸班の作業場。保護者有志と学校が協力して作った=熊本市出水5丁目の県立熊本養護学校

  知的障害の子が学ぶ養護学校の生徒数が急増して校舎が狭くなっている。教育の質と生徒の安全を両立させようと学校の中庭や別の教室の改修などで工夫するが、限界がある。県教委は今年度、有識者らで協議会をつくり、養護学校など特別支援学校の慢性的な教室不足や安全な学習環境の整備方法などを話し合う。28日に第1回協議会を開き、年度内に報告書をまとめる。(磯部佳孝)

  熊本市出水5丁目の県立熊本養護学校(小学部、中学部、高等部、合計191人)の校舎の間に、園芸作業をする木製の小屋がある。中学部の生徒がパンジーやサルビアなどの花を育て、生活のリズムを学ぶ。もともとは学校の中庭だったが、校舎内に適当な空き部屋がなく、学校と保護者有志が手作りした。

  「作業学習の場所を設置できるスペースがどんどん狭くなっている」と池田雅明校長。園芸作業場のほか、部屋を二つに仕切り、パソコン室と中学部のろうそく作りの作業場に代用している。

  作業学習は、花を育てたり、せっけんや器を作ったりする過程すべてを教材とし、数の数え方や色の知識、社会のルールを学ぶ。算数や美術といった教科別の学び方を苦手とする知的障害の児童生徒には欠かせない授業だ。

  知的障害の児童生徒の増加は全国的傾向だ。児童生徒数が増え、教室を増改築した結果、作業学習の場所が足りなくなった。

  県教委によると盲学校や聾(ろう)学校の児童生徒数は横ばいだが、養護学校の児童生徒数は急増。熊本市と市周辺の4校は、児童生徒数が10年間で約4割増えた。宇城市の松橋西養護学校でも、別目的の教室を改修し対応している。熊本養護学校の児童生徒数は高等部を新設した82年度から増えており、高等部を中心に94年度〜08年度で約50人増えた。

  全国各地で教室や教員の不足が問題になっている。文部科学省特別支援教育課は「保護者が子どもの障害を受け入れ、就職も支援する専門教育を望むようになってきたためではないか」と分析する。

  県教委は養護学校を新設し各学校の定員数を増やすなどして対応してきた。各養護学校も、教育の質と児童生徒の安全を両立させるべく工夫を重ねた。一方で「これ以上募集定員を増やせない」「改修できる教室がない。教室を増設する敷地もない」との悲鳴もあがる。県教委が発足させる協議会では(1)児童生徒数増への対応(2)重度・重複障害児が安心、安全に学べる環境整備(3)複数の障害に対応した学校の在り方などについて議論し、改善につなげる考えだ。

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