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受け入れ拒否 /神奈川

 約1カ月前、父が救急車で運ばれ入院した。78歳。痴呆と老衰が進んだうえ、脱水症状を起こしたためだ▼土曜の朝。川崎市内の実家に救急車が駆けつけた。救急隊員は手始めに近くのかかりつけの病院へ電話で問い合わせるが、受け入れを次々に断られる▼実家からどんどん遠ざかる。30分余りたち、十数キロ離れた病院から「とりあえず来てください。ただし入院が必要となってもベッドは空いていないかもしれません」。6カ所目だった。救急隊員が「それでもいいですか」と念を押してくる。「ここをやめると、もっと遠くになりますよ」▼病院では他の救急患者が数人いて、医師はてんてこ舞いの様子。父は幸いベッドが空いて入院した。母は「一刻を争う人の場合は、どうなるんだろう」とつぶやいた。「救急車で運ばれるような病気になったら終わりだね」と続けた。お寒い「受け入れ拒否」の現実に、返す言葉がなかった。【吉田勝】

毎日新聞 2009年5月13日 地方版

 
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