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【社説】

民主代表選 問われる『政権担う力』

2009年5月13日

 民主党代表選が十六日に行われ、辞任する小沢一郎氏の後継が決まる。総選挙をにらんだ“短期戦”だ。一連の混乱で政権を担う力が疑われた。その懸念を払拭(ふっしょく)できるか、濃密な議論を求めたい。

 民主党としては「のどに刺さったトゲが取れた」ことで、これまでの沈滞した空気を一気に振り払おうということなのだろう。

 辞任表明からわずか五日後の代表選告示で即日、新代表を選出する日程に、中堅・若手議員からは期間が短すぎる、地元の有権者の声を投票に反映できない、などと異論が相次いだ。しかし、執行部は突然の衆院解散に備えたい、と押し切った。

 長期の「政治空白」をつくった自民党総裁選を反面教師にしたのかもしれない。速やかに新代表を選ぶことは妥当だが、もう少し日程に余裕があってよかったのではないか。

 代表選には今のところ、代表経験のある岡田克也副代表、鳩山由紀夫幹事長の立候補が取りざたされている。

 麻生自民党に政権選択の戦いを挑む「首相候補」を決める選挙だ。どのような国づくりを目指すのか、聞き応えのある政権構想を語ってほしい。一方通行の演説ではなく、討論などの場をできるだけつくる工夫が必要だ。

 問われるのは、国民の信頼回復に向けた決意と処方せんである。

 違法献金事件で小沢氏の秘書が逮捕されて二カ月余、民主党は事実上の活動停止状態に陥った。自らの危機管理もままならない政党に日本のかじ取りはできるか−。世間の視線は非常に厳しい。

 焦点は「政治とカネ」の問題を政権を狙う党としてどう総括し、けじめをつけるかだ。検討中の企業・団体献金の全面禁止方針も、いつ始めるか明確にしてほしい。

 民主党が打ち出す経済政策には財源の裏付けがないと批判にさらされてきた。政権交代すれば何とでもなる、が小沢氏の持論だったが、荒っぽさは否めない。党の内外を納得させる答えが欠かせない。「生活が第一」を旗印に手厚い支援を重視した小沢マニフェストの具体化が急務だ。

 自衛隊海外派遣などの安全保障政策でも、党内の意見対立を恐れず、オープンな分かりやすい議論を展開してほしい。

 政権交代に期待したいが、民主党政権には不安を抱く−。こうした有権者は少なくない。その思いを十分にくみ取った熱い代表選こそが出直しの一歩となる。

 

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