音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

社説1 2期連続の逆風が問う経営者の覚悟(5/13)

 企業の業績発表がピークを迎え、事前の予想通りの厳しい数字が相次いでいる。主力の電機や自動車では主要企業の多くが2期連続の赤字を見込み、早期の業績回復の見通しは立っていない。サービス業でも日本航空(JAL)など運輸関連企業の不振が目立つ。

 企業の収益基盤が大きく揺らぐ中で難局にどう向き合うか、経営者の覚悟が問われる局面だ。

 自動車ではトヨタ自動車のほか、12日に決算発表した日産自動車やマツダも2009年3月期に続いて10年3月期も赤字の見通しを公表した。日産のカルロス・ゴーン社長は「優先課題はキャッシュ(現金)の確保や収益の改善」と述べ、守りの姿勢を鮮明にした。

 電機業界では、半導体のエルピーダメモリのような市況産業だけでなく、「不景気でも底堅い」とされてきた日立製作所などの総合メーカーの収益も落ち込んだ。日立は09年3月期の最終赤字が7000億円を超えたのに続き、今期も2700億円の最終赤字を見込んでいる。

 業績の悪化はこうした輸出型製造業にとどまらず、人やモノの移動を担うサービス産業にも及ぶ。経営再建途上のJALは2期連続の赤字に陥る見通しで、年金改革を含む背水のリストラに乗り出した。好調を続けた海運も荷動きが鈍り、日本郵船は今年度上半期に180億円の営業赤字を予想している。

 資源高で潤ってきた商社の利益成長にも急ブレーキがかかる。10年3月期の純利益は、三菱商事など大手5商社そろって前期比20%以上の減益を見込んでいる。

 売り上げの伸びが期待できない環境で、各企業がコストダウンに取り組むのは当然だ。加えて、供給過剰などの構造要因を抱える産業では、業界の再編集約も不可欠だろう。経営統合を決めた半導体のNECエレクトロニクスとルネサステクノロジのような大型再編が今後も相次ぐとみられる。

 目を凝らせば、逆風下でも健闘する企業もある。小型車に強いスズキは日米欧の新車市場が冷え込むなかで、インドなど新興市場で踏ん張り、黒字を確保した。ゲーム機の任天堂は「不況どこ吹く風」で順調に販売を伸ばし、最高益を更新した。他社と横並びではない独自の商品、独自の戦略が功を奏した。

 やや気になるのは、政府支援をあてにする空気が企業の間に広がっていることだ。経営の原則は自己責任であり、自力で危機に立ち向かう気概こそ復活への第一歩である。

社説・春秋記事一覧