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社説:民主党代表選 政権像を語らなければ

 反省を踏まえた議論を本気で国民に示す覚悟があるのだろうか。民主党の小沢一郎代表の辞任表明が正式に了承され、後継代表の16日選出が決まった。党内では鳩山由紀夫幹事長、岡田克也副代表ら党首経験者の名が浮上している。

 衆院選を間近に控えた代表選びには、首相を選ぶ政権選択の予備選的重みがある。それだけに、党内議論を封印する思惑で早期の収拾を意識したとすれば、党の置かれた状況の厳しさへの自覚を欠いている。名乗りを上げる候補は政権公約の概要などの構想を提示したうえで、新代表の座に挑まなければならない。

 代表の選出手続きで党員の参加方式を求める声もあったが、両院議員総会による投票、しかも週内選出というスピード決着となった。国会会期中でいたずらに時間をかけられないという事情はわかる。だが、党首の辞任表明からわずか5日後の後継決定で、党の立て直しに向けた議論を果たして国民に示せるだろうか。若手議員らに疑問や批判が出ているのも無理はない。

 「小沢体制」を総括し、次期衆院選に向け党の政権公約の骨格を明らかにする作業が肝要だ。小沢代表下では党の結束と国会での与党との対決が重視される半面、政権公約を柱とする政策的な発信は必ずしも十分でなかった。新代表の掲げる政策は衆院選の結果次第で新政権の方針に直結する。候補者はそれぞれ政権交代の際の青写真を具体的に掲げ、代表選にのぞむ必要がある。

 特に、焦点は小沢氏を辞任に追い込んだ「政治とカネ」への対処だ。同党は企業・団体献金の全面禁止に向け議論しているが、実施時期などをめぐり調整は難航している。小沢氏問題の評価と併せ、候補者は明確な指針を打ち出さねばならない。

 基本政策も重要だ。同党は消費税率の当面維持を主張しているが、将来の社会保障財源をどうするのか。小沢氏の「第7艦隊で米国の極東におけるプレゼンスは十分」との発言が波紋を広げた日米同盟や安保政策についても、各候補は体系的な説明を迫られよう。

 新代表候補に浮上している鳩山、岡田両氏は代表経験者だ。鳩山氏は代表時代に改憲論議に積極的で、岡田氏はさきの衆院選で年金目的消費税を主張、事実上の税率引き上げ路線を掲げた。こうした経緯も踏まえ、政策を具体的に語る責任がある。

 民主党内では小沢氏の辞任表明と同時に反転攻勢への期待が高まっている。だが、看板を替えれば失点は挽回(ばんかい)可能、との安易さが漂っていないか。そんな気持ちで代表選びにのぞめば、国民のさらなる怒りをかうことは自明である。

毎日新聞 2009年5月13日 東京朝刊

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