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太鼓持あらいのほやほや対談:/1 有機農業を営む、高見高央さん /福井

 ◇「人の命は土が養う」昔の農業分析し、地力回復--高見高央さん(74)

 食の安全・安心を脅かす事件や出来事が後を絶たない。化学物質の過剰摂取が原因とみられる疾患も増え続けている。こうした状況の下、注目されているのが、化学肥料を使わず自然との調和を基本にした有機農業だ。大野市で独自の有機農業を実践している高見高央さん(74)は「人間の命は土が養っている」と力説した。

 ◆なぜ、有機農業を始めたのですか。

 安全な作物を作る原点は土だと思ったからです。尿や汗などの排せつ物として出せないものが体内に蓄積されますが、石油で作られた農薬や化学肥料は蓄積され、さまざまな影響が出ています。これらの危険性を少しでも減らしたかった。もう一つは、地球環境にかかる負荷をできるだけ軽くしたいと思ったんです。

 ◆体や環境にはよいのでしょうが、日本の食料自給率(カロリーベース)は約40%。有機農業で量産できますか。

 有機農業でも上手にやれば化学農業に負けない収穫量を確保できます。今、有機農業で収穫量が上がらないのは土にパワーがないからです。これまで田畑に化学肥料を入れすぎて自然の循環システムが壊れてしまいました。山の木や山菜はだれも農薬をやらないけど毎年ちゃんと育ちます。自然に任せ、落ち葉を栄養にしているからです。田畑では自然本来の養分を化学肥料で補ったため地力が落ちました。地力を回復させるため、昔の農業を科学的に分析して実践するのが有機農業です。

 ◆「安全、安心」はお座敷遊びにも共通しています。安全でないと人は笑いません。作物も横で笑ってやるとよく育つのでは。

 よく育ちます(笑い)。作物の成長過程は人間の成長とよく似ています。どちらも細胞分裂をして育ちますが、作物は2、3日でどんどん姿を変え、上手に栄養を与えると本当によく育ちます。そして作物も子孫を残そうとする生命力が強い。人間も作物も炭水化物でできていますが、一緒なんですね。

 ◆化学農業ではいつでも作物がとれるから季節感がなくなりました。そこで自然のリズムに合った旧暦が見直されています。

 種まきや収穫時期の違いで味の良しあしが左右されるのは、月の引力に影響されていることが知られています。地中の水分を引き上げる時期と、とどめておく時期があり、例えばトマトでもナスでもキュウリでも、水分を引き上げる時期には栄養分も作物の中に入っていきます。逆の時期に収穫すると味が落ちます。漬物にしても日持ちが悪い。月の引力が一番作用する月齢15日の満月を中心に前後3日間が種まきにも収穫にもよい時期です。

 ◆今後はどんなことをしていきますか。

 今の農業は石油で作物を作ることしか考えておらず、微生物が果たす役割の大切さに気づいていません。収穫量を増やし、農作業を楽にするために化学農業に頼り、大きなものを失いました。平均寿命も将来は大幅に短くなると言われています。冗談ではなく、人の細胞が弱くなっているんです。だから化学肥料で農業をしている人やそうして作られた食べ物しか知らない消費者に有機農業のよさを伝えていきたい。近々NPO法人を作って、農業をしたことのない人も参加できるようにしたいと思っています。

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 ■人物略歴

 ◇たかみ・たかお

 元県職員。企業庁技監を最後に定年退職し、農業の道へ。大野市柿ケ島で米、サトイモ、ソバを有機栽培している。有機JAS制度に基づく農産物検査員の資格も持ち、県内外で有機農業の勉強会を開いている。連絡先は事務所(電話0779・67・1037)。

毎日新聞 2009年4月26日 地方版

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