2009都議選
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【科学】石油、石炭もういらない!? マグネシウム・エネルギー社会 東工大教授が提言2009年5月12日 太陽光と海にほぼ無尽蔵に含まれるマグネシウムを使って、石油も石炭も天然ガスもいらない持続型エネルギー社会を実現する…。そんな「マグネシウム・エネルギー社会」の構築を提案している矢部孝東京工業大教授に、ベンチャー企業から自動車会社、さらにはオイルマネーまで世界中から問い合わせや見学が殺到している。実証実験も順調に進んでおり、これはひょっとすると、ひょっとするかもしれない。 (引野肇) 【クリーンで無尽蔵】高温のマグネシウムに水をかけると水素が発生する。さらに高温にすると、この水素が爆発的に燃えて再び水となる。水素を使えば燃料電池の燃料になるし、爆発力を利用すれば発電機を動かしたり、自動車のエンジンに使える。 このシステムは二酸化炭素も窒素酸化物も出さずクリーンだし、太陽光、水、マグネシウムは無尽蔵だ。矢部教授は「海水には千八百兆トンものマグネシウムがある。石油に換算すると三十万年分にもなる」と言う。 【夢の循環システム】矢部教授が提唱するマグネシウム・エネルギー社会はこんなイメージだ。 海岸に建設された淡水化・マグネシウム精錬プラント。屋根には太陽に向かって大型プラスチックレンズが並び、精錬に必要な高温を作り出している。ここで海水から農業用水を生産する一方、海水に含まれる大量の“にがり”から金属マグネシウムを取り出す。 生産されたマグネシウムはトラックや船で、各地の発電所や家庭、コンビニなどに運ばれる。発電所では、マグネシウムを石炭代わりに燃やす。家庭に運ばれたマグネシウムは燃料電池の燃料として家庭用電源となる。燃料電池の排熱は、風呂や暖房に使われる。コンビニで売られているのは真空パックに包まれたマグネシウム。これは燃料電池車やパソコン、携帯電話などのバッテリー補充用マグネシウムだ。 マグネシウムは使い捨てではない。使用後の酸化マグネシウムは、回収車によってリサイクルセンターに集められ、精錬プラントにあるのと同じ「太陽光励起レーザー」で再び金属マグネシウムに変換される。
【太陽光レーザー】現在、マグネシウムの精錬は、鉄とケイ素の合金を触媒に大量のエネルギーを投入して行われる。マグネシウム一トンを製造するのに石炭十トンを使う。こんなにエネルギーを大量消費しては、マグネシウム・エネルギー社会など成立しない。 矢部教授が提案するのは、大型レンズで集めた太陽光を、イットリウム、アルミ、ネオジム、クロムのセラミックによって赤外線レーザーに変換し、さらにレンズで集光して約二万度という高温を実現。この高温でマグネシウムを精錬しようというのだ。 このため矢部教授は二年前、北海道千歳市に太陽光励起レーザーの実験施設を作った。二メートル四方の透明プラスチックレンズで集光、その焦点にセラミックのレーザー素子を置いた。ここでの成果に自信を得た矢部教授は、実際にマグネシウムの精錬を行うため今年、沖縄県・宮古島に大型の施設を建設する計画だ。 【安全な燃料電池】現在、世界中で水素を使った燃料電池車の開発が進められている。コストの問題もさることながら、軽くて漏れやすく、爆発しやすい水素をどうやって運ぶのかという大問題がある。七百気圧の高圧ボンベに詰めるとしても、ボンベはあまりに重い。 一方、マグネシウムなら六百五十度以下では発火しないし、長期保存も簡単。「マグネシウムは石炭と同じ固形燃料と考えていい。マグネシウム燃料電池は、いまのリチウムイオン電池の約七・五倍の重量当たり出力がある。コンビニで真空パックのマグネシウムを買い、電池に差し込めば一回の充電で千八百キロくらい走る」と矢部教授はいう。 【実験で裏付け】マグネシウム・エネルギー社会がもし実現したら、火力発電所も原子力発電所も核融合炉もいらない。ガソリンスタンドも石油タンカーも不要だ。矢部教授にその実現性を聞くと「百パーセントこれは実現する。すべて実験の裏付けがあり、何も失敗するところがない」と、自信満々の言葉が返ってきた。
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