2008年01月09日

東京ディズニーランドのパレード事故の真相は

私は、東京ディズニーランドで長年に渡り安全管理の責任者を務めてきました。今回の事故報道にふれ心を痛めている者の一人です。

怪我をされた方がいなかったことが救いではありますが、この事故は東京ディズニーランドにとって「あってはならない事故」であり、開園以来最大の不祥事と言っても過言ではありません。


それでも、です。この事故の原因はまだ判明しておりませんが、私は、個人的には「潟Iリエンタルランド(以下OLC)の責任ではない」と考えています。その理由を記します。


1、柱が折れることなど想定していない
東京ディズニーランドの山車(フロート)は、皆さんがお祭りなどで見かける山車や、他の遊園地のパレード用フロート同様に「外注品」です。OLCが造っているのではありません。開園当時からOLCには整備部門はありましたが製造部門はなく、すべて専門業者にフロート製造を発注してきました。
今回事故を起こしたフロートも同様でしょう。


2、過去に事例が無い
報道されているように、約25年間、類似する事故はありませんでした。フロートに限らず看板などの落下事故も無く、今回の事故はまさに「想定外」の出来事です。


もちろん、購入した乗用車同様に所有者にはメンテナンスをしなくてはならない義務は発生しますが、今回の事故はメンテナンスの「域」を超えています。まだ推察の段階ですが、メンテナンス不足というより「欠陥品」による事故であると私は考えています。


そもそも300キロもの装飾品の支柱が折れたということは、もともと支柱にそれだけの強度がなかったのか、誰かが折れ易くする「細工」をしたのかどちらかです。
OLCがゲストや関係者に「ご迷惑をかけた」と謝罪するのは当たり前ですが、仮に負傷者が発生し、その責任が問われたとき、OLCが頭を下げるかどうかは甚だ疑問です。


新聞にはこのようにも報道されています。
「TDLでは先月、多数のアトラクションが停止する電気系統のトラブルがあったほか、今月にもアトラクションの屋根の一部が焼けるぼやが起きている。」(産経新聞)


読者の方は、他の不祥事を起こしている会社と同様に「けしからん」とお考えでしょうが、それは明らかに間違っています。
なぜならば、停電もぼやもOLCの関係者が引き起こしたものではないからです。
停電は東京電力の関連会社の作業員の配線ミスが原因です。ぼやの原因は調査中ですが、キャストがいない火の気のない場所からの出火ですから、OLCに責任が無いのは明白です。


停電の際、それでもOLCは東京電力から安定供給される電力があるからこそ、パーク運営が成り立つと考えているのでしょう、損害賠償を求める動きなどもなかったものと私は考えます。

ここから、事故責任について過去の事例をもとに整理してみます。きっと皆さんはビックリされることでしょう。


六本木ヒルズ回転扉死亡事故を覚えているでしょうか。
大阪府吹田市の溝川涼ちゃん(当時6歳)が自動回転ドアに挟まれて死亡した事故ですが、このときは「事故は予見できなかった」として、運営本部長であった森社長は起訴さえもされませんでした。
マスメディアが森社長の責任を追求することも一切ありませんでした。


ここで今日の結論を書きます。私が言いたいことです。
この六本木ヒルズ回転扉死亡事故の裁判結果を受け「ディズニー・テーマパークで死亡事故が起きても、社長は責任を取らなくてよくなった」ということです。

謝罪するのは当然ですが、運営本部長や社長は責任をとることは無いということです。


ディズニー・テーマパークではあらゆる故障や事故を「想定」し、航空機や原子力発電所並の安全性を保っています。
一方、六本木ヒルズの回転扉で死亡事故が起こる前には、何と30件以上の挟まれ事故があり、森社長にも報告されていたにもかかわらず「事故は予見できなかった」という警察の判断です。

今回のようなディズニー・テーマパークでの事故はまさに「予見できなかった」ものです。たとえ負傷者が出ていても、六本木ヒルズ回転扉死亡事故との整合性を考えれば、明らかに社長や経営陣が責任をとる必要は全くありません。


ご理解いただけたと思います。今後は誰もが私同様に「OLCには責任が無い」と判断されることを希望します。


それでは、その後に起きたJR福知山線での脱線事故やエキスポランドのジェットコースター死亡事故、そしていわゆる「食の不祥事連鎖」などに対するマスメディアの報道姿勢はどうでしょうか。「社長辞めろ」の大合唱です。

マスメディアの報道ぶりをおかしいと思いませんか。


私は数多くの企業経営者や運営責任者から、マスメディアの報道のひどさについて聞かされてきました。たとえば雪印問題の時の「眠っていない」という社長発言も、後から真実を聞けば会社自体の解体に結びつくほどのものでは無かったということも分かりました。


ベストセラーになった「国家の品格」の中で、著者はこのように書いています。
「国民の判断材料はほぼマスコミだけですから、事実上、世論とはマスコミです。」

今回の東京ディズニーランドでの事故の原因が明確になるまで、マスメディアの方々には「公正で慎重な報道」を心掛けて欲しいと願う限りです。


最後に六本木ヒルズ回転扉死亡事故に関して書いた個人ブログをリンクしておきます。私はこの事故から日本の司法が、よりおかしくなったものと考えています。

2006年03月26日
六本木ヒルズ回転扉死亡事故から2年

 

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