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【社説】

核軍縮 「北」の実験回避をまず

2009年5月4日

 オバマ米大統領が「核なき世界」を提唱し、米国とロシアが戦略兵器削減交渉を開始した。これを受け日本政府も核軍縮・不拡散の提言をしたが、目の前に難問が控えている。

 中曽根弘文外相は東京都内で講演し、全世界の核兵器の90%以上を保有する米ロに対し、自国の核弾頭削減だけでなく、協調して世界の核軍縮に指導的な役割を果たすよう呼び掛けた。

 多国間での措置として、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を訴えた。オバマ政権は十年間棚上げされてきたCTBTの批准を議会に促すと明言している。米国が批准すれば、核兵器を持つが核実験の一時停止(モラトリアム)宣言をしているインド、パキスタンに対しても批准を促す効果が期待できる。

 核テロリズムを防ぐ世界サミットの開催を支持し、国際原子力機関(IAEA)の権限強化も提言した。だが、途上国への核拡散の懸念は払拭(ふっしょく)できないでいる。

 北朝鮮外務省は先月末、声明を出し、二度目の核実験も辞さないと警告した。ミサイル発射に対する国連安保理の議長声明への反発からだ。

 「核なき世界」実現には、まず目前にある危機に対処しなくてはならない。六カ国協議の参加国は北朝鮮に対し、国際社会から完全に孤立し経済支援も期待できなくなると警告し、一致して実験回避に取り組みたい。

 カギを握るのは中国だろう。中曽根外相は講演で中国について「これまで核兵器削減に取り組んでいない」と批判したが、中国はCTBTの早期批准に前向きな姿勢を示すなど現実的な対応もしている。北朝鮮が核実験を自制するよう、中国に影響力行使を働きかけていくべきだ。

 来年五月には核拡散防止条約(NPT)の運用状況を話し合う再検討会議が開かれる。日本政府はそれに先立ち、来年初めに各国政府高官や専門家を集めて核軍縮の国際会議を主催する計画だ。唯一の被爆国として新たな核実験の禁止合意に道筋をつけるなど、NPT体制を強化する役割を果たしたい。

 日本政府が過去十五年間、毎年、国連総会に提出してきた核廃絶決議案は、オバマ大統領の登場によって、やっと風になり始めた。北朝鮮とともに、イランの不透明な核開発に歯止めをかけることも国際社会が急ぎ取り組むべき課題となる。

 

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