経営危機にある米ゼネラル・モーターズ(GM)は27日に発表した新再建計画で、ブランドや工場の追加削減に踏み込む一方、労組や銀行団、政府に債務の株式化による総額440億ドル(約4兆2600億円)の債務圧縮を求めた。実現すれば、米政府はGM株の5割を保有し、事実上、政府管理下での再建を目指すことになる。「破綻(はたん)回避の捨て身の再建策」(米投資会社)とも言えるが、銀行団は大幅な債務削減に反発しており、米政府の抜本支援の期限の6月1日までに同意を得る保証はない。
「新計画はGM再建の重要な一歩」。米自動車救済問題を担うオバマ大統領の自動車作業部会の委員は27日、GMの新再建計画を評価した。
GMは再建計画で、ブランドの追加削減やディーラー網の4割削減などの規模縮小案を提示。従来GMがこだわってきた規模を追う経営をやめ、米国市場が1000万台程度に低迷しても利益の出る体質への転換を図った。実際、ピーク時に5割を超えた市場占有率は、計画では18%台まで低下する内容になっており、「より現実的」(自動車アナリスト)といえる。
ただ、焦点の440億ドルの債務圧縮の行方は混とんとしている。退職者向け医療基金に対する204億ドルの債権を持つUAW(全米自動車労組)と154億ドルの融資債権を持つ政府は債権の半額カットをのむ代わりに、それぞれ39%と50%のGM株を保有できる。しかし、社債を保有する銀行団などは270億ドルの債権の9割を放棄するにもかかわらず、手に入るGM株は10%にしか過ぎない。銀行団は「社債保有者を露骨に軽視した不合理な案」と猛反発しており、交渉は難航している。【坂井隆之】
毎日新聞 2009年4月29日 東京朝刊