きょうのコラム「時鐘」 2009年5月12日

 作詞・阿久悠、作曲・三木たかし、と来れば「津軽海峡・冬景色」「能登半島」を残した演歌の名コンビだ。七〇年代のシンボルでもあった

阿久さんに続いて三木さんも亡くなった。享年64。「能登半島」の制作当時は32歳だった。若い才能が花開くのは時代の力を抜きにして語ることはできないと痛感する。金沢出身の歌手・保科有里さんの師でもあり、ヒット曲「さくらの花よ泣きなさい」の作曲でも知られる

阿久悠・作詞憲法15条というのがある。歌は時代とのキャッチボールだ。「どうせ」と「しょせん」の言葉を排する。個人の小さな出来事を描きながら社会のメッセージにならないか、などが有名だ。どれも七〇年代流行歌の神髄だろう

偶然だが、昨日スタートした本紙連載小説「ここがロドスだ、ここで跳べ!」の冒頭が「一九七〇年―」で始まっていた。七〇年代はやはり時代の節目なのか。それぞれの胸に「時代の歌」が刻まれている

印象に残る時代と、何となく過ぎて行った影の薄い時代がある。自分はその濃淡をどう生きたのか振り返り、明日を応援する「援歌」があってもいい。