みなさん初めまして。NHKアーカイブスで「コンテンツ管理」を担当している【あ】です。以後、よろしくお願いいたします。 さて、みなさんは、古書店やレコードショップなどで価値あるものいわゆる「お宝」がないか探すことを「通」の間では“掘る”という言葉で表現するのをご存じでしょうか?実はわたしはコンテンツ管理の中でも、その「発見・発掘」を仕事にしているのです。このコラムの初回は、タイトルにもなっている「お宝」とは何か、についてお話してみたいと思います。 NHKでは、日々放送されているさまざまな番組や、番組に関する資料がアーカイブスに納められています。しかし、テレビ放送が始まったのは1953年(昭和28年)のことですが、すべての番組が保存対象になったのは、1980年代になってからです。裏返せば、約30年分のテレビ番組は保存されていないのが普通だったのです。当時、放送用テープは大変貴重なものでした。この時代の番組の映像は、もはやほとんどが失われてしまいました。 しかし、アーカイブスに移管されることなく、ひっそりと保管されていた昭和30年代の番組のフィルムが地域の放送局の倉庫からひょっこり顔を出すなんてこともあります。取材した職員が、次の企画のために廃棄せず取っておいたが、当人の退職後ながらく内容がわからなくなっていたといった様なケースです。 また、1980年前後といえば、家庭にビデオデッキが入り始めた頃です。普通のご家庭でしまわれたまま、忘れられた古いビデオテープの中にも、これまでNHKで保存されていない貴重な番組映像が埋もれているかもしれません。 もちろん、古い映像や音声ならすべてが貴重、という訳ではありません。勢い込んで再生してみたら、すでにアーカイブスで保管されているテープのコピーだったということの方が多いものです。しかしまれに、今では撮影できない失われた風景や風俗などの貴重な映像が見つかることもあります。こうした「NHKアーカイブスの日々の業務だけでは収集ができないコンテンツ」こそ、私たちアーキビストにとっては大変な「お宝」なのです。わたしはこうしたお宝を見つけ出し、きちんと検索データをつけて保管する仕事をしています。まさに「発掘屋」の仕事です。 テレビが始まる以前の映像も「お宝」です。現在のホームビデオほどではありませんが、戦前にも動く映像の撮影を趣味とする人はたくさんいらしたようで、古い家が大掃除された時など、錆びたフィルム缶に入った映像が発掘され、NHKに持ち込まれることがたびたびあります。なんでも受け入れる、という事にも参りませんが、中には是非、とお願いしてNHKに保存させて頂くことになったものも少なくありません。 NHKアーカイブスでは、単に放送テープを保管するだけでなく、たくさんの人が、託されたコンテンツをきちんと整理し、より価値を高めるための仕事に取り組んでいます。なかでもこのように、「偶然」とか「何かのきっかけ」で発見される「お宝」を見つけ出す仕事は、とてもエキサイティングなものです。これからも様々な「お宝」発見の様子をみなさんにご紹介して行きたいと思います。 【あ】
【あ】のもとに送られてきたお宝の山
デジタルテープやDVDにコピーされた「お宝」
今では使われていない4分3インチテープです。
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