×消去 |
「タイム・トラベラー」が放映された昭和47年(1972年)当時は、カラー放送が本放送されて間もない時期で、ビデオテープによる放送も珍しい時代でした。(現在、再放送されている昔のテレビ番組はほとんどフィルム撮影によるもの)
当時は、ビデオテープ自体が非常に高価なものでもあり、何度も重ねて使用していたそうです。また、放送局にも映像を保存するという概念は、まだ生まれていませんでした。したがって「タイム・トラベラー」でさえ例にもれず録画ビデオテープ消去の運命をたどることになったのです。 |
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●録画 |
昭和47年、和歌山県の田舎町で、ひとりの中学生の少年が、喜びで胸をいっぱいにしていました。それは憧れのビデオデッキが自分の家に来たからです。少年の家は小さな電気店、そのビデオデッキはお客さんの注文により問屋からとりよせた商品なんですが、なにせ珍しい物なので、しばらく試験的に使ってみようというこになったのです。少年が録画したいものは決まっていました。それは、ぜったい見逃せないと思っていたNHKの「タイム・トラベラー」。そのころSF小説にはまり込んでいた少年は、小松左京や星真一、光瀬龍、筒井康隆らの文庫本を読みあさっていたので、筒井康隆の原作がテレビ化されると聞くと、これを見ないわけにはいきません。
そして「タイム・トラベラー」は期待通りのドラマでした。それからの6週間の土曜日は、いつも朝からドキドキしながら夕方の6時がくるのを心待ちにしていました。ドラマの内容も最高でしたが、主役の芳山和子にも憧れました。いっしょに「タイム・トラベラー」を見ていた妹は、やっぱりケン・ソゴルの大ファンでした。
放送の録画は、残念ながら最終回しか残っていません。それは、当時ビデオデッキ自体も高価でしたが、使うビデオテープも高価だったのです。デッキが約30万円、60分テープが1万円。デッキの価格はそれほど高くなかったと思う人もいるかもしれませんが、当時は1ドル360円の時代。物価も今の3分の1ぐらいの感じで、30万円なら新車の軽自動車が買えたといいます。いま、60分のVHSテープなら数百円で買えますから、ほんとに驚きです。1本1万円もするテープを何本も使えるわけもなく、泣く泣く、録画は1本のテープに重ね撮りしました。それで、結局、最終回のみが残ったというわけなんです。 |
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>>早送り |
録画した「タイム・トラベラー」のビデオが貴重なもので、NHKにも映像が残っていないと知ったのは、約10年ほど前のことです。確かTBS放送の「テレビ探偵団」という番組(司会:三宅裕司、西田ひかる)で「タイム・トラベラー」が話題になったとき、NHKにも録画が残こされていないと報告されていました。
実は、このときTBSに連絡をしようと思ったのですが、ほんとうに自分が持っているテープに目的の「タイム・トラベラー」が録画されているのか記憶もあやふやで、一度、自分で中身を確認してから連絡しようと考えました。当時はまだ、東京・秋葉原のオーティオ機器の中古販売店なのでは、旧式のビデオデッキを見かけることもあって、それを購入して確認しようと思ったりなどしたのです。しかし、その試みも面倒となりテープの件もいつしか忘れることになってしまいました。 |
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▲再生 |
1997年11月、NHK衛星放送で、懐かしいヒーロー特集を見ました。この中で「少年ドラマシリーズ」の特集もあったのですが、視聴者の一番リクエストが多かったのが「タイム・トラベラー」でした。しかし、やはりここでも「タイム・トラベラー」の映像は残っていないということでした。
さっそく、私はNHKに電話してテープが残っていることを連絡しました。対応してくれたのは、当時の番組担当者のK氏で、すぐ氏宛にテープを送ることにしました。しかし完全な映像を再現するのには、それからしばらくの時間を要したようです。NHKの方でも、当時の家庭用ビデオテープを再生する機器は残っていず、メーカーなどあちこちに手を回されたようです。けっきょくNHKの放送博物館(神谷町)にデッキが残っていましたが、録画テープとメーカーが一致しなかったようです。当時の家庭用オープンリール型ビデオは、電子機会工業会の「統一1型規格」というものでしたが、これはカラーVTR推薦規格準拠というもので、テープの形状や録画方式が同じであるものの、微妙に記録方式が異なり、いまのVHSのように録画したテープがそのまま他のメーカーのVTRで見られるというような簡単なことではなかったようです。いろいろVTRメーカーからの協力のもとに、ようやく「タイムトラベラー」の映像が残っていることが確認されました。
再現された映像は、ノイズが入っていたり、ところどころで映像が乱れるもので、音声は非常に小さく場所によっては聞き取れなくなってもいました。NHKでは、この映像をデジタルに変換し画像を修正、音声はオーティオテープ(他の視聴者が録画していた)に残っていたものを使用したといいます。こうして、昭和47年から27年後の未来に「タイム・トラベラー」はタイムリープしてきたのです。(最終話の中で、芳山和子とケン・ソゴルは27年前へタイムリープしています。何かの因縁でしようか) |
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再び ●録画 |
まさか、自分がテレビに出るとは思ってもいませんでした。連絡を受けたのは、放送日(1999年7月3日)より約2週間前のこと、『土曜スタジオパーク』で「タイム・トラベラー」の特集を放送するということで、その件についてコメントが欲しいとのこと、その時は簡単に電話でいきさつを話したのですが、しばらくしてから再び電話があり、インタビューを録画したいという。快くひきうけたものの自宅で録画ということで、もう大変、家の大掃除です(笑)。テレビなんかの「お宅拝見」の番組はさほど気にはならなかったのですが、やっぱり自分と同じ気持ちなんだろうなと思うと愉快になってきました。
放送の件を実家に連絡すると、実はビデオを録画したビデオデッキが残っているということが分かり驚きました。なんでも、ビデオデッキの持ち主が、新しいVTRに買い換えた際に処分を依頼してきたんだが捨てずに残していたということ。さっそく田舎から送ってもらいインタビュー録画にそのビデオデッキも登場することになりました。 |
  撮影:1999年6月25日(金) |
放送は、7月3日午後1時50分からの『土曜スタジオーパーク あなたの声に答えます』。
実は、スタジオ(CT450)の中にも私は出現していたのです(笑)。録画で出演している本人がスタジオ内にいるというのも妙なので、観客席の一人として隅の方に隠れ気味に座っていました。放送を録画された方は確認してください。見つけた人には何も賞品はだせませんが・・・。観客は30名、ほとんどはゲストの三倉マナカナ目当てで、「タイムトラベラー」関係は、私ともうひとりの女性。この方はインターネットの掲示板で知ったということで少しお話しさせていただきましたが、かなり感動されていました。画面でも出演されていましたね。たぶん、スタジオの外には「タイム・トラベラー」目当てで訪れた人もいたでしょうが、中に入るのは抽選で選ばれなけらばならず残念な思いをされたことでしょう。
ともかく放送は無事終わって、自分的には一段落というところなんですが、反響の大きさには驚かされました。近所の方からも「実は、私も当時のファンだったんです」と聞かされることもあったり、また自分のE−mailに感謝のメールをいくつもいただきました。 |
放送当日は雨模様
NHK放送センター正面 |
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『土曜スタジオパーク』の
放送台本 |
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〓 イジェクト |
「タイム・トラベラー」最終回をビデオで販売するという企画を、すでに耳にしています。おそらく近々実現されることと思います。7月3日の放送では、数分のダイジェスト版となりましたが、全編をご覧いただけます。だた、やはり残念なのは1話から最終話までのすべてを録画していなかったということです。これはもう「タイムトラベル」が実現される700年後を期待するしかありませんね。
※補足 「タイムトラベラー」は2001年3月23日 「少年ドラマ・アンソロジーT」というタイトルでDVD化、発売されました。 |
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謝辞 |
このたびの「タイム・トラベラー」最終回の復活にあたり、多大なるご尽力いただきました多くの皆様方に感謝の謝辞を述べさせていただきます。インターネットでお世話になりました、やんべ様、Jason様、にのP様、ARGONAUTS様、滝沢様、ASCIIの木暮様、遠藤様、そして放送の際にお世話になりましたNHKの佐々木様、加藤様、そしてなによりも多数の嘆願をNHKに送られた全国の「少年ドラマシリーズ」ファンの皆様に厚く御礼申し上げます。 |
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