ニュースネットいじめは「単なるからかいではない」 自殺した少年の父親訴えネットいじめ問題の深刻化が進む米国で、ネットいじめを苦に自殺した息子を持つ父親が、カンファレンスで対策を訴えた。(ロイター)2009年05月12日 14時09分 更新
全米の半数ものティーンエージャーに影響が及ぶとなれば、「ネットいじめ」は学校の校庭で袋だたきに遭うのと同じくらい、あるいはそれ以上にひどい苦痛をもたらしかねない。ネットいじめはあまりに非情で、あまりに大きな精神的苦痛を与える行為であり、ときには自殺という結果につながることもある。 メール、インスタントメッセージング(IM)、携帯電話、チャット、Webサイトなどの手段を介した、ネットいじめの問題が深刻化している。 米国では、学校にいじめ対策を義務付ける法律を制定した州がこの10年間で37州まで増えている。 「人々も徐々にこの問題を深刻に受け止めるようになってきている。ネットいじめについて話す子供が増えており、また残念なことに、自殺という極端な解決策を選ぶ生徒や自傷という行為に出てしまう生徒が増えつつある」と名誉棄損防止同盟(ADL)のニューヨーク支部でエデュケーショナルディレクターを務めるダン・タープリン氏は語っている。ADLは、反ユダヤ主義など各種の偏見と戦っているユダヤ人団体だ。 タープリン氏によると、学校でのからかいやけんかとは異なり、電子メディアを介した場合は、その匿名性ゆえにいじめがエスカレートしやすく、またネットワークが広範囲に及ぶがゆえに、卑劣で残酷な発言や好ましくない内容の写真や動画が瞬時に無数の人々に送られることになりかねない。 「電子的な形態のいじめには、避難場所がない」とADLの教育部門でカリキュラムとトレーニングを担当するディレクターのスコット・ハーシュフェルド氏は語っている。同氏は、ネットいじめ対策のための意識向上プログラムを立ち上げた人物だ。 「ネットいじめは24時間365日行なわれている。オンラインで常に進行しているのだ。いくら自分のコンピュータの電源を切っても、Webページまで止めることはできない。つまり、自分に関するうわさが広まり続けているということだ。こうした容赦のなさは精神的に非常につらいものだ」と同氏。 単なる「からかい」ではないADLが主催した1日がかりのカンファレンスに参加したティーンエージャーたちは、いじめを苦に自殺した息子を持つジョン・ハリガンさんの話を聞くまで、ネットいじめを「単なるからかい」だと思っていたという。ハリガンさんの息子ライアンくんはネットと学校の両方で何年間にもわたりいじめに遭い、2003年に13歳で自殺した。 「息子は、ゲイだという中傷を執拗に受けていたようだ」とハリガンさんは取材に応じて語った。米バーモント州在住のハリガンさんはIBMの元マネジャーで、現在は全米の学校を回り、ライアンくんの経験について講演している。 自分の息子がどれだけひどいいじめに遭っていたのかをハリガンさんが知ったのは、息子の死後だったという。 「息子はなんとか自分の力で解決しようとしていた。痛ましいことに、今も多くの子供たちがそうしている。わたしは、まさか息子にとって周りの友人がこんな危険な存在になろうとは思ってもいなかった」とハリガンさんは言う。 ハリガンさんは傍観者たち、つまり、ネットいじめに気付きながら、何も行動を起こしていない人たちに対し、周囲からのプレッシャーの力でネットいじめを阻止するよう呼び掛けている。 またハリガンさんは保護者に対しては、子供と話をするよう訴えている。 「ときにはコンピュータの電源を切り、きちんと子供と向き合って、毎日の生活についてじっくり会話してみることだ。子供たちが自分の気持ちや自分の置かれている状況について素直に話せるようなチャンスをできるだけたくさん与えてあげることが大切だ」 バーモント州ではライアンくんの死から7カ月後に「いじめ防止法」が制定されたが、ハリガンさんはこの制定にも尽力した。 タープリン氏によると、ADLの市民権部門はまだこうしたいじめ防止法を制定していない州に対し、規範となる法律を策定し、ネットいじめなどのいじめ問題を解決するための法律制定に役立てられるようにしているという。 「そうした法律により、学校などの教育機関も自分たちの組織におけるいじめ防止対策に責任を持って取り組むようになるだろう」とタープリン氏は語っている。 関連記事
[ニューヨーク 11日 ロイター] copyright (c) 2009 Thomson Reuters. All rights reserved.
(翻訳責任について)
(著作権、商標について) 新着記事
|