危険過ぎる実験。Vol.9の「反重力リフター」について

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昨日、私はたまたま、2007年のウェブ特別記事を見た。ちょうどMake英語版 Vol.9の編集を行っていたときの記事だ。楽しい思い出がよみがってきた。あの時、私たちは仕事に没頭していて、なかでも「反重力リフター(Antigravity Lifter)」プロジェクトに燃えていた。私たちは、このクールだけど高圧電気を扱う非常に危険なプロジェクトを掲載してよいものかどうか迷った。そして、Makeのテクニカルアドバイザリボードにかけられることになった。編集長のMark Frauenfelderは、メンバーにメッセージを送り、議論は白熱した。その経緯はすべてオンラインで公開している。

ここに、リフターの背景情報を掲載します。これは本誌に掲載される予定だった文章です。

「リフター(別名:イオンクラフト)は、電線とアルミ箔で構成され、非対称コンデンサーとして動作する単純な装置です。アルミ箔の上に、バルサ材などの軽い材質で作った柱を使って、長辺に沿って細い電線を張ります。


電線のエミッタにマイナス、アルミ箔のグラウンドにプラスの電圧をかけると、両極に静電気が溜まります。電圧が高くなると、電線の電子が周囲の空気に漏れて空気分子します。イオン化されるのは、おもに酸素分子です。窒素のイオン化にはもっと大きなエネルギーが必要だからです。マイナスの電荷を帯びた空気分子は、プラスの電荷を帯びたアルミ箔に向かって下方に飛んでいきます。こうして、リフターは継続的に空気を下に押し流します(このほかの力も働いていると主張する研究者もいます)。家で実験できる普通サイズのリフターは、20KV、0.4mA程度で浮上します。

これほどの高電圧になると、電線からの余分な電子が、アルミ箔に直接ジャンプしてしまうことがあります。そのため、周囲の空気をイオン化するための電子の量が減り、リフターを押し上げる力が減ります。これが起こると、エネルギーは揚力ではなく火花に変わってしまいます。リフターを飛ばすためには、こうしたアーク放電が起きないように調整することが大切です。

リフターは、空気清浄器や雷雨と同じく、オゾンや亜酸化窒素など、気分をさわやかにする気体を発生します。

不思議な正体不明の現象は、高圧電気が引き起こしていると信じる人が少なくありません。この領域の研究は、その価値に見合うだけの研究がなされていなと主張する研究者もいます。そうした考えは、トーマス・エジソンへの偏見から生じていると言われています。エジソンは、敵対していたニコラ・テスラの高圧電気に関連する研究から、人々の科学的興味や関心を逸らすために、あらゆる手を尽くしたと伝えられているからです」

そしてこれが、堂々巡りの議論の一部。

DANGER:高圧電気! このプロジェクトは、あなたが高圧電気の扱いに精通した成人でない場合は、かならず専門家の立ち会いのもとに行ってください。このプロジェクトは、あくまで経験豊かな成人を対象としています。適切な防護器具を装着し、慎重に実験を行ってください。器物の損傷、重大な怪我、または死に至る危険性もあります。

いちばん重要なことは、技術を制御する能力、そして自分自身を危険から守る能力を読者に付けさせることではないか? しかし、Makeの編集者とテクニカルアドバイザリボードとの論議は平行線を辿り、結局、Vol.9での "リフター" プロジェクトの掲載は見送られることになった。

この記事を書いたのはPopular Science誌などに作品を多数提供しているイラストレーターのJohn MacNeill。彼はまた、リフター愛好家でもあり、この神秘の飛行物体をいくつも作った経験がある。彼が書いてくれたプロジェクトは最高だった。ぜひとも掲載したかった。しかし、エンジニア、技術書の著者、研究者などからなるMakeの技術顧問会議は、裸の線で飛行物体に高圧電気を送るという部分を、危険すぎると判断した。強い警告だけで十分なのか、高圧電気に関する専門知識を十分に勉強すべきではないのか? さらに、ブラウン管(CRT)を利用して高圧電気を取り出す方法も心配だった。放電、不安定な電圧や電流といった危険がある。しかし、市販のACアダプターからの0.4mAの電流は、感電死するほど危険か?(そんなことはない)。高圧限流器を使えばどうか?(たぶんいける)。経験の浅い十代の読者を、いたずらに刺激するような内容になっていなかったか? Makeの趣旨は技術の制御能力を人々に与えることではなかったか? 国際クラスのMakerによる安全性に関する電子メールスレッドは立てても、法的責任はどうなるのか?

Magazine spread.

上が掲載されるはずだった記事。非常に難しい判断だった。みんなの意見をコメントで聞かせて欲しい。

Mark Frauenfelderより:Makeテクニカルアドバイザリボードのみなさんへ: 添付の資料は、Make英語版 Vol.09に掲載予定のプロジェクト記事「高電圧リフター」です。高電圧直流電源を必要としますが、ここでは、エネルギースター以前の古いCRTモニタを利用して電源を得る方法を紹介しています。

古いCRTを電源に使う

小型リフターの浮上に十分な高圧電気を得るための、エネルギースター以前の古いCRTモニタを使う方法を紹介しよう。モニタの電源プラグを抜き、少なくとも1時間は放置して、溜まっている電気を放電させる。モニタのカバーを外し、ブラウン管にゴムの吸盤で接続されている太いケーブルを探す。これは、ブラウン管の電子銃に電気を供給するケーブルだ。ゴムの吸盤を外して、金属の接点を探す。

この接点に、絶縁皮膜のあるリード線をつなぐ。もう1本の絶縁皮膜のあるリード線を、ブラウン管を支えている金属のスプリングにつなぐ。これらが、リフターのエミッターとグラウンドにつながることになる。この2本の線は、なるべく遠くに離しておくこと。カバーを元通りにかぶせれば、準備完了だ。

私はこの解説に、少々不安を感じています。CRTにはほぼ無限に電気が溜まると聞いたことがあるからです。ドライバーなどで2本の線をショートさせれば放電ができると思いますが、恐ろしいほどの火花と音が伴うことでしょう。

私が知りたいのは、(a) 私の不安は正しいか。(b) もしそうなら、安全な放電方法はあるか? (c) このほかに注意すべき問題はないか? の3点です。よろしくお願いします。

Make技術顧問会議のメンバーの意見はここに


訳者から:肝心な技術顧問会議の意見は長いので翻訳していません。ごめんなさい。しかし、おしなべて CRT を使うのは自殺行為だという意見だったね。

- Goli Mohammadi

原文

Posted by Tetsuo Kanai | May 11, 2009 12:00 AM
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