空車を待つ車が国道にあふれ、渋滞になっていた。久留米市郊外の大型商業施設。4000台収容の無料駐車場が次々と車を吸い込み、そのたび電光掲示板が満車を告げる。
同市出身のプロレスラーつぼ原人は、数日前に見た光景が目に焼きついている。「中心商店街に、この何分の1が訪れているだろう」。そんなことを考えながら居酒屋でビールを飲んでいると、友人からこう言われた。
「中心部は駐車場料金が高いというイメージがあるけんね、それも敬遠される理由の一つやろ」
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久留米駐車協同組合(稲益一郎理事長)によると、中心部の市営駐車場の料金は100円で40‐50分。民間駐車場は20‐60分で100円。「他都市と比べて高いわけではない」と稲益理事長。
しかし、郊外では無料駐車場がほとんどという事情もあり、市民は割高に感じるようだ。
11日朝、つぼ原人は「プロレス集客の足かせになっているかも」と、あけぼの商店街の商店主に駐車場の割高感を指摘した。
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駐車協同組合は、昨年4月から23の加盟駐車場で使える100‐200円の割引券を発行。買い物客などに配ってもらおうと、5%引きで商店主たちに販売している。
同商店街でも、割引券を購入し、来場者に配ることを考えたが、手弁当で進めてきたプロレス企画は既に赤字の見通し。本年度は定額給付金を見越した抽選会も企画、資金的な余裕がない。
いつも明るい堀川泰史・同商店街振興組合理事長(53)も浮かない顔でたばこに火を付けた。
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「自助努力」が原則の同商店街だが、この日午後、堀川理事長は商店主などが株主の第三セクターまちづくり会社「ハイマート久留米」に支援を申し入れた。
「うちが個別の商店街に特別に援助するのは難しいですね」。同社の有馬龍二事業部長(62)は、紋切り型にこう答えた後に、笑って続けた。
「さっき駐車協同組合から、百円割引券を200枚提供すると連絡がありました。にぎわいづくりに頑張る取り組みに役立ててほしいそうです。つまるところ、プロレスに使ってということです」
堀川理事長に同行、トレードマークの骨を握りしめていたつぼ原人の手から力が抜けた。
■ふる里プロレス
16日午後1時から、久留米市六ツ門町の久留米六角堂広場。元横綱曙や稔が参戦。中学生以上3000円(当日300円増し)、4歳‐小学生1000円。雨天決行。あけぼの商店街振興組合=0942(32)8542。
■メモ
久留米市中心商店街の周辺には現在、久留米駐車協同組合に加盟する市営・民間の有料駐車場が23カ所あり、約2000台が利用できる。一方、郊外には無料駐車場付きの商業施設が多い。ハイマート久留米などが昨年度実施した市民調査(199人回答)では、中心部の駐車場について107人が「少ない、高い」と指摘。「駐車場がどこにあるのか分からない」という意見もあった。
=2009/05/12付 西日本新聞朝刊=