WEB採録

2001/2/25(土) 渋谷ユーロスペース

木築沙絵子 × 中田秀夫トークショー

その1

「とにかく過激にっていうのが制作の基本にあった。そのため、この作品では『前張り』をあえて全く着けないで撮影に臨んだ」

 

その2

「編集されたものを観て、木築さんのプロダクションの方がもうボカシが入ってる段階だったんですが、それを観たとたん、『これホントにやっただろう』と、プロデューサーに怒った。
それは寧ろ木築さん及び監督にとって勲章かなと思いますね」

 極限までおいこまれた壮絶な現場の中で、どこか余裕の鼻歌が聞こえる木築さんのお話に渾身の女優魂と天性ボケを感じるこのコーナーですが、惜しまれつつ今回が最終回。

 女優失踪事件の顛末から、木築監督作品のお話へ。

その3

木築『(監督作を)神代さんに見てもらったんですよ。『噛む女』に出てる時に。
どうでした、って訊いたら、「出るより、作るほうが向いてるんじゃない」 って言われて。
ショック!(笑) 「今、出てるんやあ、わしは!」みたいな。(笑)』

中田: 木築さん見てましたっけ?
その水責めの直前に、よしじゃあ中田でテストやっとこうと(笑)、いうことになったんですよ。
木築: でしたっけ?
中田: 
木築沙絵子さんと中田秀夫監督

痛いし、息が出来ないと大変だからちょっと加減しなきゃいけないよねえ、ってまあようするにデモンストレーションなんですけど(笑)
多分木築さん見てたと思いますけど、僕が上半身裸になってセットは中なんだけどステージの外でやろうと。


で、特機用の水を出すホースがありまして、皆さん普通よく見る消防車のホースだと思っていただければよいかと思いますほぼ同じモノ使ってるので、あの太さのホースからですねそれがもう固くなるくらいに一直線に水が出るようにして、それくらいおもいっきり水圧かけてバアっとみぞおちにぶち当てられたわけです。

ホースから水をかけるのは先輩の助監督で、実験台で僕にぶち当てる。

木築: (笑)どうでした?
中田: バアってみぞおちに来て、木築さんそばにいてじいっと見てるんですよ、先輩助監督とかがどうだって言って、

「ううっ、これは痛いです、息が出来ません」

って思わず言ったんです。
そしたらみんな「シラー」っとなって…。(場内笑)

要はデモンストレーションだから、僕は「ああ、意外と大丈夫ですよ」っていう役割なんですね。
それで「シラー」っとしてる。後で怒られて(笑)、「お前、全然っ分かってない!」とかって。

でも息出来ないものは出来ないですもんね。

これでは息も出来ないはず。乳房が歪んでます。
『箱の中の女 処女いけにえ』より
木築: 息が出来ないのはホント辛かった。
中田: なおかつその時は多分ホースの手元が映るかなんかしてたんでしょうね、普通雨降らしだとか水を扱うのは特機と呼ばれるパートのスタッフがやるんですが、『箱の中…』でも特機のスタッフはついていて最初はその人がホース持ってたんですが、「生ぬるい」ってことになって、途中から小沼監督が自らホースもって木築さんにぶつけるようになって。
木築: やってましたね。
中田:
この右下の白い影が、小沼監督といわれている

手元も一瞬映ってるかどうかだと思いますけど、あの時のぶつけてる監督の顔を見てると、まあやっぱ鬼だと思いますよ。(場内笑)

そこまではまあやりきれないと思うんだけど、でも監督本人はわざとちょっとはずしてるんだって言うんですけどね。(笑)

木築: してないよ。(笑)
中田: ちょっと演技しやすいようにはずしてあるって。
木築: 
木築沙絵子さん

っていうか、もう一通りのリアクションをやっちゃってもういいだろうってなってるんだけど、全然カットがかからないから、まだダメかダメかって…。

時間の長さが求められてるのかなあって思いましたけど。

中田:  そうですね、この後2作目の『箱の中の女2』はフィルムで撮られていて、これは伝統的というかそれまで小沼さんがやられてきたSM映画のノリに近い映画だと思いますが、『箱の中』の1だけはなんか、どこか違うんですよね。いままでと。
いってみればドキュメント「風」に演出してみたかったってこと、なのかなあ。
木築: そうですよねえ。
中田:  
中田秀夫監督
この『箱の中の女』というのはこれだけで僕、劇映画1本撮ってやろうと思ってたくらいエピソードが多い現場だったんです。
女優さん、木築さんじゃないもう一人の女優さんが撮影中にいなくなってしまって、結果的には4日間だったんですけど撮影から逃亡したんです。
彼女を追い求めて4日間、僕もなぜか米軍の横田基地に出かけたりとかして大捜索をしたんです。
木築: やりましたねえ。
 

 

(註:映画『箱の中の女』撮影中、その撮影のあまりのシンドサにストーカー夫婦の妻役女優が突如「失踪」する。わずかな手掛かりをたよりに、プロデューサーを始めとするスタッフは失踪した女優の大捜索を開始する。
女優の友人関係や恋人関係から、一人の米軍軍人が浮かび上がりその男とスタッフは接触する。黒人の軍人は口を割らない…。

ドキュメント『サディステック&マゾヒステック』ではこの顛末が当時の関係者の証言によって語られ、劇映画以上のスリリングな面白さになっている。是非、ご覧ください。)

 

中田: まあ探して4日後になんとか連れ戻して、みんなで…。
木築: 監禁した。(笑)
中田: 

そう、撮影所の近くで監督と木築さんとその女優さんと僕とでなぜか合宿生活に入って、合宿というと聞こえはいいんですが、体のいい軟禁ですよね。(場内笑)
もう逃げちゃだめよ、(笑)という。


中田: 木築さんとはこの『箱の中…』の後、神代(辰巳)組の『噛む女』でもご一緒してるんです。この間ちらっと耳に入れまして、木築さんご自分で2本位監督してるんですって?
『噛む女』('88)
監督:神代辰巳
木築: うん、自分で撮ったのが2本ありまして、もともと始めは神代さんの『もどり川』って映画のエキストラにバイトで行ったんですよ。
高校生くらい、もしかしたら中学生の時だったかな、その時に映画の現場を初めて見て、ああ、いいなあって思って、スゴイ辛かったんですけど、それがきっかけだったんですよ。映画やりたいって思ったきっかけ。
中田: 神代監督に見せたとか。
木築:

で、映画やってく中で、例えば写真集とかプロモーションビデオとか作るようになって、それで自分でも作りたいなあって思って、2本自分で作ったんですよ。

1本はちょっと、失敗しちゃって(笑)、もう1本の方を神代さんに見てもらいたいなあって思って、見てもらったんですよ。『噛む女』に出てる時に。
どうでした、って訊いたら、「出るより、作るほうが向いてるんじゃない」って言われて。
ショック!(笑)「今、出てるんやあ、わしは!」みたいな。(場内笑)ショックでしたね。あれは。

中田: 実は去年、実現はしなかったホラーの企画で、木築さんにある役をお願いしてまして、残念ながら実現はしなかったんですがこれからも是非おつきあいよろしくお願いします。
木築: こちらこそ。
中田:   本日はこれだけ沢山の方にお越しいただきまして、大変嬉しく思っております。『箱の中の女』、ロマンポルノの持つ最後の金字塔というべき作品です。どうかごゆっくりご覧ください。どうもありがとうございました。

 

(終)

う〜ん、木築監督作品!観てみたいですねえ。

木築さんのお話を聞いていると、神代監督の発言はあながち冗談ではなかったような気がします。
木築さんへの感想メールなどどんどんくださいね。

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