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デブほど借金に苦しむらしいがどうすべきか

プレジデント5月 8日(金) 11時30分配信 / 経済 - 経済総合
肥満と負債に、明らかな相関関係が!?
 肥満と負債には、統計的に見て明らかな相関関係がある。私たち大阪大学の研究グループが2005年に行った全国アンケート調査が、それを裏付けた。住宅ローンを除いた「負債あり」と「負債なし」のグループを比べると、「あり」のほうが男女とも肥満者の比率が高いのだ。ちなみにここでいう肥満とは、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割ったBMI(体格指数)が25以上のことである。
 ではなぜ、このように負債者のほうが太っているのか。それは、肥満というのは経済学から見れば“借金”そのものだからだ。食べる楽しみを優先したことで背負った健康上の“負債”だと考えればいい。結果として、洋服が合わなくなったり、苦しいダイエットが必要になったり、将来の病気のリスクを背負い込むといった“利息”を支払うことになる。

 いったいどんな人が“借金”をするのだろう。実は同じ財貨でも時間の開きがある場合には価値が違ってくる。例えば、いまもらえる5万円と、1年後に手に入る5万円のどちらを取るかといえば、誰しもきょうの5万円を選ぶだろう。現在の5万円に比べて、1年後の5万円は割り引いて考えるわけだ。経済学では、その割り引く割合を「時間割引率」と呼んでいる。
 実際にこの割合は「100万円の受け取りを1年後まで待ってほしいといわれたら、何%の金利を要求しますか?」と尋ねることで測定できる。ちなみに、先のアンケートでの平均は1.16%だった。その数値が高い人ほど、せっかちで、辛抱強さがなく、将来の体形より目先のご馳走に目がくらんでしまう。当然、カロリーを摂りすぎて肥満になりやすいし、借金も繰り返す。

■「後回し」傾向という自滅的な性質

 さらに問題なのは、同じ「辛抱強さ」でも、直近と遠い将来とで大きな差がある点である。遠い将来については辛抱強い計画ができるのに、目先の選択となると、急にせっかちになってしまうのだ。ダイエットの実行が1カ月先なら、「3カ月で10kg減量達成」など、かなりしんどい目標でも立てられるが、実行日の前日になると、何だかんだと理由をつけて「もう少し延ばしてもいいか……」と後回しにしてしまう。
 こうした「後回し」の性質がダイエットを失敗させ肥満を増長させる大きな原因になる。それではダメだとわかっていても、目先の辛さを避ける。当然、肥満度は増すばかりだ。
 肥満はいろんな意味で“リスク”につながる。重い成人病になれば、手術や入院費を覚悟しなければならない。その費用は日々の家計を圧迫することになる。多重債務者の多くが病気による収入の途絶がきっかけだ。

 なるほど肥満は本人の選択を反映しているのだが、その選択が「後回し」傾向といった選択者の自滅的な性質に基づいているとすれば、こうした経済学的な肥満メカニズムの知識を歯止めにして、有効な対策を取らなければならない。その一つの方法が「コミットメント」である。要するに約束事で自分の手を縛って節制の「後回し」ができないようにしてしまうのだ。
 たとえば、思い切ってきつめのズボンを買ってみたり、スポーツクラブの会員料を何カ月分も前払いするといった具合だ。仲間同士でBMIがいくつを超えたら罰金を払う「やせ我慢の会」を結成するのもいいだろう。同じ志を持った人たちとの約束なら実行力が増すはずだ。

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大阪大学社会経済研究所 教授
池田新介
1957年生まれ。神戸大学経営学部助教授などを経て、98年から現職。消費者の選好とマクロ経済などの研究を進めている。

岡村繁雄=構成
熊谷武二=撮影

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  • 最終更新:5月 8日(金) 11時30分
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