アラサー女も加齢臭AERA5月11日(月) 13時19分配信 / 国内 - 社会しか〜し! ワキや足だって臭うはず。 以前は感じなかった、自分と他人のニオイが気になる。── クサい、クサい。私、なんだかクサい。時刻は午前4時を回っている。誰もいない編集部で、こよいも居残りの原稿書きだ。でもクサくて身が入らない。額のあたり、いや胸元あたりから臭う。20代のころは臭わなかったのに、最近、気になって仕方がない。女、34歳。これって加齢臭なのか。 「加齢臭」という言葉がこの世に登場したのは、1999年。中高年特有のニオイのもととしてノネナールなる原因物質を突き止め、資生堂が名付けた。本誌3月30日号の記事「加齢臭はあゝ21世紀の匂い」は、男50代の加齢臭がテーマだった。それは、オヤジの代名詞だったはずなのに……。 女性のからだの悩み相談を受けることの多い、「らら女性総合クリニック」(横浜市)の松村圭子院長は、 「男性の加齢臭はいわゆるアブラギッシュな方に多いですが、女性だって同じ。皮脂の量が多い男性に比べれば弱いものの、中年に近づけば女性にも加齢臭はありますよ」 と話す。 だが、私のニオイはオヤジのそれとは違う。ノネナールのニオイはろうそくにも古本にもカメムシにもポマードにも例えられるけれど、それとは絶対に違うと断言したい! ■他人のをかいで治せ 「体臭の原因は加齢だけではありません。脂っこいものが好きな人は体臭も強い。便秘の人も体臭がきつくなる傾向があります。歯槽膿漏なら口臭がしておかしくないし、根本的に手術しないと治らないワキガの人もいます」(松村院長) 脂っぽいものがとりわけ好きでもなく、便秘でも歯槽膿漏でも、たぶんワキガでもない。それでも、クサいのはなぜだ。 筆者が神経質になるのにはわけがある。同年代の女の知り合いが最近、どうも臭うのだ。特に雨で湿気がこもっている日。脂っぽいような、生臭いような。長い髪をバサバサかきあげるとむわんと臭気が漂い、もうたまらない。さりとて、本人は気にしているふうでもない。たいして親しくもないから、指摘もできないし。 そう。ニオイは自分で気づきにくい。だからとっても困る。 格言。 「他人のニオイかいで我がニオイ治せ」 梅雨の前に、対策を練りたい。 昔の日本人はほとんど体臭がなかったと言われる。だが、食生活も生活習慣も変わってきた。だけどそこは清潔好き、ニッポン。気がつけば、ニオイ退治に躍起になっていた。 1970年代半ばから制汗デオドランド剤「8×4」シリーズを展開するニベア花王の研究所R&Dユニット1伴和佳さんは、2000年ごろから消費者が制汗よりニオイのケアを重視するようになった、とみている。 ■6割の女性が「不安」 01年には女性の約6割が使用していた制汗剤だが、07年には75%に上昇したという。品質面で重視する点は、「汗のニオイを抑える/消す効果が長続きする」が、6年間で9%から27%に跳ね上がった。いま流れている8×4のCMでも、「私は、緑茶で消臭!」とニオイ退治を強調する。 日本人は1日に約1リットルの汗をかくといわれるが、分泌したばかりの汗そのものは臭わない。汗の成分がコリネ菌などの皮膚に常在する菌で分解されてニオイが発生する。 「水と皮脂などの栄養がなければ、ニオイのもととなる菌は繁殖しない」(伴さん) となれば、一般的に皮脂の分泌量が多く、代謝が活発な男性のほうが体臭は強い。 制汗剤「Ban」シリーズを発売するライオンが、20〜30代の男女それぞれ10人に7時間着たTシャツのニオイをかいでもらったところ、「臭気の強さ」では男女ともに男性に軍配が上がった。でも「臭気の不快度」では、 「女性の体臭を不快に感じた男性よりも、男性の体臭を不快に感じる女性の方が多いんです。男女では体臭の感じ方に違いがあるようです」(ライオンビューティケア研究所の西部明日香さん) 一方でこんな数字もある。ライオンの調査では約6割の女性が、「実際に自分がどのくらいにおっているかわからない」と不安を感じていた。同社の松崎謙一さんは、 「最近のデトックスブームで、女性にとって汗を出すことはいいことという風潮も汗の臭いを意識する要因ではないか」 と分析する。 ■度が過ぎると自臭症 先の松村院長は、 「話している相手が鼻に手を当てたり、電車の中で避けられたりという経験がニオイを気にするきっかけになることが多い。でも、その大半は自意識過剰です。あまり度が過ぎると、自臭症という精神疾患の一種になってしまう」 と警鐘を鳴らす。松村院長は婦人科が専門なだけに、ニオイの相談では女性器に関するものも多いが、9割方が正常の範囲なのに気にしている。「まれに膣炎が疑われる場合や、タンポンの出し忘れもありますが、そのときは魚が腐ったようなとんでもないニオイがする」というから、多くの人は不安先行なのだろう。 一方で、電車の中で香水や化粧のニオイが妙にきっついのに、本人は素知らぬ顔、という人がいるのも事実。 「よその家のニオイはすぐわかるのに、自分の家のニオイはよくわからないのと同じで、人間の鼻というのは、同じニオイをかぎ続けていくと麻痺してしまう」(ニベア花王の伴さん) というからコワイ。 汗っかきでもなく、香水も普段はつけない私。自臭症ってほど神経質でもないし、思い当たるのは、洗濯物の生乾き、部屋干し臭というやつではないか。 ライオンの「部屋干しトップ」は、01年10月の発売から月100万個以上の売り上げを誇ったヒット商品だ。同社ファブリックケア研究所の宮前喜隆さんは、 「部屋干しは現代のライフスタイルを反映したいまどきの洗濯事情」 と位置付け、部屋干し専用の衣料用洗剤の開発に力を注いできた。 「体臭と部屋干し臭とではニオイのもとは一緒。体から出る汚れを菌が分解することで生じます。その両方を防ぐのが独自に開発した酵素です」(宮前さん) ■「サボるな、洗濯!」 汚れた洗濯物を洗濯機の中にため込む、週末にまとめて洗濯するため一度にたくさんの物を洗濯槽に詰め込んで洗う、干す空間が狭くて風通しが悪い。こうした単身者にありがちな洗濯環境は、ニオイという「見えない汚れ」の温床になる。胸元から発する私のニオイ、たぶん部屋干ししたブラジャーだ。 梅雨の季節、部屋干し上手になるためには、 「部屋干し専用の洗剤を使うことも有効ですが、汚れたら早めに洗濯する、洗濯が終わったらすぐ干す、干すときは間隔をあけて風の通りをよくするのがコツです」(宮前さん) ってことは、「サボるな、洗濯!」ってことですね。 今夜も徹夜、やっぱりクサい。だけど、気にしすぎはよくないな。それより仕事の効率あげて、とっとと帰ってシャワーを浴びよう。そして、洗濯をこまめにしよう。 編集部 大波 綾 (5月18日号)
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