とある日に近しい人が紹介してくれたHPがあった。
ウチのHPのLINKにもあります「万博タワー」のページ。
70年当時はそれはそれは夢のデザイン、存在感であったであろうそのタワーが、
忘れられ朽ちてゆき、解体されるまでの克明な記録のウェブサイトだった。
過去形なのは、忙しいのに夢中で観てしまったのだ。
そういえば沖縄にもあったな。
75年に開催された海洋博の目玉だった海上都市「アクアポリス」。
台風の時は半分沈んで難を逃れるというなにやらカッコいい機能を備えた、
ギリシャの神殿のようなみてくれのメガトン級のデカさの鉄の要塞。
やはり最後は忘れられ朽ちてゆき、解体という運命だった。
その両方のデザインを手掛けたデザイナー、菊竹先生(※1)の「パシフィック・ホテル」は最近サザンが唄っていたっけ。
それももう無いんだよね。
つくば博なんてぶらりと単車で跡地に行ってみたら影形もなくなってた。
以前広場だった場所が単なる芝生のくぼ地になっていて、
「ここで昔西城秀樹が一万光年の人~♪って唄ってたよ、なぁ」と、
くぼ地の一番底で感慨にふけって帰ってきたコトもあった。
あの頃小さかったワタシに夢を抱かせてくれた数々の物。
希望に満ちた未来の象徴。
それが具現化して目の前にあった興奮。
21世紀になった現在、全ては違ったワケで。
でも過去のそれらには明らかに暖かい未来に向けての「希望」が詰め込まれていたから、
見当違いの現在になっちゃったけど魅力的に思えるワケで。
コンコルドだけはそういうアイコンの中では頑張った方かもしれない。
夢の超音速旅客機。こういう時代が確実にやってくる!
というプロローグの象徴を一手に背負って彼女は飛び続けてきた。
少年だったワタシがこんな機体に惹かれないワケがない。
昔日本でサミットが行われた時、当時のミッテラン大統領がコンコルドで来日する!と聞いて、
別段熱狂的な航空ファンでも何でもないくせにコンコルドを見に羽田まで行った。
佇んでいた彼女を見てびっくりした。彼女は思っていた以上に小さかった。
YS11くらいしかない。いや、それくらいに見えた。
彼女を大きくしていたのはワタシの心だったのだ。
現実の彼女はあんな小さくて華奢な体で気品を誇示していたのだ。
でも現実は大量輸送というコンセプトのB747、ジャンボに軍配は上がり、
音速の代償であるコストや重量制限が災いし、コンコルドは単なるキワモノ扱いだった。
それでも彼女は2000年の事故までは誇りすら感じる気品で飛び続けた。
そのコンコルドも万博タワーやアクアポリスとほぼ同時期に現役を退いた。
最後まで気品を残したまま。
あの頃思い描いたのとは全然違った21世紀。
勝利の女神が微笑んだB747でさえ近年には現役を引退する。
大量輸送の時代も終わったのだ。
今は4発もの強力なエンジンで500人もの人間を一気に空へと持ち上げる、
2階建ての航空機の飛ぶ時代ではなくなったのだ。(※2)
低燃費でそこそこ人数乗れて、だからちまちま便数増やして長距離の飛べるエコ・カーみたいなのが現在の主流だ。
考えてみれば車も同じ。
スーパーカー・ブームの頃に熱狂したような2シーターという割り切ったスポーツカーは
ほぼ全滅と言っても過言ではない。
代わりに最近は人もそこそこ乗れて荷物もそこそこ乗って、そこそこ低フォルムで、そこそこスポーツ・テイストみたいな、
全般に優等生だが何ら際立ったものがないラインナップばっかりになってしまった。
バイクは現在レベルという扱いきれないくらいの高性能になってしまってはいるものの、
その性質上「本質」を失ってはいないとは思うが、
これもやはりビックスクーターという「本質」を失いつつあるものに浸食されつつある。
まあ、なんだかんだ考えても、未来にまでは責任も持てないし、ね。
でも、ね。
次の世代、ワタシやワタシの周りで瞳をキラキラさせて車やバイク、
飛行機やパビリオンなんかを見つめている子供たちが、
「全然違った未来になっちゃったけど、あの頃のものって何だかいいよね」
少なくともそれくらいは言ってもらえるようには責任持ちたいものだな。
少なくともそういう時代を造らないけん責任がある世代にはなっとうけね。なぜか北九州弁。
次の世代に
「2000年前後ってダメダメだったね」
なんていわれないように、ね。
どーしても個人的に旧いものが好きなものだから旧い車やモーターサイクルに触手が伸びてしまい、
仕方ないんですが現行にはあまりレーダーが働かなくなっちゃってますけど、
だからといって昔はよかった一辺倒になってしまい
リアルに秒針の進んでいく現在がおごそかになっちゃあイカンね!
とは最近思うんですよね。
現在に魅力的なモノが生まれ辛くなってるのは、チョットはワタシのせい?
何億分の一でもやっぱ責任発生するん?と思っちゃったんです、万博タワー観て。
とはいえ、ね。
紀元前のエジプトの壁画のヒエログリフ解読したら
「最近の若者はなっとらん」
なんざ書いてあるくらいだし。
紀元前で若者がそんな体たらくだったとしたら、
それから何千年も経ってる今のワタシらなんざもー野獣ですよ(笑)
ワタシらがガキの頃のそういう文化を嘆いていた世代もあったろうし、
あんまり人間変わらないモンかな、とも思いますけどね(笑)
過去にワタシに夢をくれたこれらの遺産に感謝しつつ、
そんなコトを考えながらシゴトしてるワタシ。
MESSAGE FROM:MUNE 2007
(※1)菊竹大先生
菊竹大先生の建築って、良くも悪くも景観も立地条件も全て無視したような「ブッ放された」イメージ全開の建築物が多く個人的には好きですが、
それが建設される地元の方にとってはフクザツなのでしょう(笑)
代表作品としては先生の公邸(スカイハウス)、エキスポタワー、アクアポリス、パシフィックホテル、
都城市民会館、江戸博物館(これ有名ですね)。
あとは上野の不忍池傍らにあったホテル、ソフィテル東京。
これも景観損ねる、次のテナントが埋まらない、で10年ちょいで取り壊し。
う~~~~ん・・・・・・
(※2)大量輸送時代
これ書いた2007年当時はまだ巨大なエアバスは登場しとりませんでした。遂に出たよ、オール2階建て・・・