知事発言に地元困惑 地域診療センター無床化
「(地域医療を)地域からつくり直す。まずは市町村が責任を持ってほしい」。達増知事は紫波町で医療行政の在り方に触れ、こう強調した。 懇談会は4月からの無床化について、知事自らが初めて住民に説明する機会。同様に無床化した花泉(一関市)、大迫(花巻市)に続く3会場目だったが、医療局によると「市町村の責任」を明言したのは初めてという。 「基本は市町村が中心」「市町村が主役」。達増知事はさらに「県は(市町村の)手が届かないところを」と述べ、県の役割を限定するとも受け取れる考えを展開した。 医療局は、発言の真意について「市町村にも協力してほしいということ」と説明するが、地元側には先行きを不安視する声が高まっている。 紫波町の藤原孝町長は懇談会の席上で「戸惑っている」と語り、同町の戸塚盛悦生活部長は取材に「県は診療センターを手放し、高度医療だけを担うつもりなのではないか」との見方を示した。 波紋は無床化対象の他市町村にも広がった。 九戸村の岩部茂村長は「県が地域医療から手を引くことも類推される」と指摘。無床化への対応に追われる花巻市大迫町の特別養護老人ホーム「桐の里」の佐藤忠正園長も「市町村に問題を丸投げするのか。理解できない」と憤る。 地域に負担を求める県の姿勢を受け、市町村側では対応策の検討も始まっている。 「無床化の責任は県にあるが、何もしないわけにはいかない。早急に医療対策協議会を発足させ、地域医療の充実策を探りたい」と言うのは、住田町保健福祉課。花巻市健康づくり課も「地域の事情やニーズを踏まえ、民間移管も選択肢に、診療センターの介護、医療施設としての活用を探る」との考えだ。 紫波町は、医療や福祉などの関係者を集め、意見を交換する方針を決めた。戸塚部長は「これまで県立病院や診療センターの経営に市町村は口を出せず、いきなり『市町村が主役』と言われても困るのが本音。だが(県に頼れないなら)市町村が主体になっていくしかない」と、あきらめ気味に語る。
2009年05月11日月曜日
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