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従業員は全員脱北者、メザニン・アイパック(下)

 パク社長は韓国人技術者10人を1カ月間、「臨時講師」として招いた。社員らはパク社長が営業に出掛けている間に、紙箱への色の付け方、サイズに合わせて型を取る方法、完成した紙箱をしっかり包装する方法を学んだ。

 地価が安い所に工場を建てたため、通勤時間が2時間もかかった。社員らは毎朝、ソウル市江西区傍花洞にある財団事務所に集合し、一緒にバスで通勤する。

 2007年に北朝鮮を脱出したチャン・ジョンジャさん(34)=仮名、女性=は、「北朝鮮では電気がよく止まるため、1日に3、4時間は暇な時間を過ごしていたが、ここでは休むことなく工場が稼動している」と語った。

 最初の3カ月は注文量をこなすのも困難だった。そのたびに社員らは、「ここで踏ん張ろう」と自分に言い聞かせた。中国の公安につかまった記憶、命を賭けてカンボジアの国境を越えた記憶、北朝鮮で苦労している家族たちに対する責任感が彼らを奮い立たせた。社員のほとんどが月給120万ウォン(約9万4000円)から10万-50万ウォン(約7900-3万9000円)をやりくりし、北朝鮮や中国にいる家族に定期的に送金してきた。

 作業班長のパク・ミョンスクさんは 「10万ウォンなら北朝鮮で4人家族が1カ月間生活することができる。北に残っている家族たちを思いながら、夜12時まで頑張って注文量を生産した」と話した。チョ・サンフンさん(45)=仮名=は「朝から休まず働いたのに目標量を達成できず、思い通りに仕事が進まないため、仲間と一緒に泣いたこともある」と述べた。

 疲れを癒やすために1泊2日で江原道の雪岳山に行ったこともある。ハン・ヨンエさん(26)=仮名、女性=は「雪岳山の頂上に立つと、遠くに北朝鮮が見え、突然涙がこみ上げた」と語った。

 「わたしは自由のある国に来て、仕事をして金も稼ぎ、肉も食べている。それなのに北朝鮮にいる友人はどれだけ苦労をしているかと考えたら、胸が詰まった」

 朴社長は「今年中に4工場に増やし、脱北者をさらに採用する計画」と語った。この工場が予想以上の成果を挙げると、SKエナジーは2カ所目の工場を建設するための資金3億ウォン(約2340万円)を支援した。SKエナジー社会貢献チームのカン・スヨン課長(40)=女性=は、「正直に言って、2-3年たたないと軌道には乗らないと思っていた。利益を上げながら脱北者たちの韓国への適応も手助けする、立派な事業モデル」と述べた。

ユン・ジュホン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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