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従業員は全員脱北者、メザニン・アイパック(上)

 「紙箱にボンドを付けたら早く運ばないと。携帯電話を手にしていたら仕事にならないじゃないの。今日、幾つ作らなければならないか、みんな朝に聞いたでしょ?」

 作業班長のパク・ミョンスクさん(55)=仮名、女性=が咸鏡道特有のイントネーションで一喝した。紙箱の継ぎ目を接着する仕事をしている最中に9歳の娘と電話で話していたイ・ホヨンさん(35)=仮名、女性=は、「はい、はい」と言いながら携帯電話をポケットにしまった。

 イさんは「北朝鮮にいたときは仕事を始める前に悠長に労動新聞の社説などを読んでいたが、韓国では脇目も振らずに仕事をしている」と語った。

 先月30日午後2時、京畿道坡州市冶洞洞にある工場「メザニン・アイパック」を訪問した。社長と管理職の 5人を除けば、従業員32人全員が脱北者という韓国唯一の事業体だ。1日に創立1周年を迎えた同社は、脱北者たちに働き口を提供し、韓国社会への適応を手助けする。利益が残れば全額再投資して設備と雇用に回す。

 「メザニン」とは英語で中2階という意味。「アイパック」は「包装」を意味する英語「パック」から付けた。設立当初は苦労したが、10カ月後の今年3月には黒字に転換した。先月には贈答用ボックス、収納用ボックス、宅配ボックスなど約500種を1日2万個生産し、2億2000万ウォン(約1720万円)の売り上げを記録した。社員らは「この調子なら今年の売り上げは30億ウォン(2億3000万円)を楽に突破する」と語った。

 設立当初、メザニン・アイパックが成功すると思った人はほとんどいなかった。同社の設立は、ソウル市中区にある「スンイ教会」のキム・ドンホ牧師(58)のアイデアが発端となった。平壌科学技術大学の建設問題でたびたび北朝鮮を訪問していたキム牧師は、2004年に脱北者のための工場を建設することを決心した。キム牧師は「北朝鮮で苦労した脱北者たちが韓国に来て“新貧困層”に転落しないよう、働き口を与えたかった」と語った。

 資金や土地、人材を準備するのに4年かかった。この教会の信徒たちが設立した財団が5億5000万ウォン(約4300万円)を提供し、SKエナジーが1億5000万ウォン(約1170万円)を後援した。特殊な技術や設備投資が必要ない紙箱工場を建設することにした。経歴10年以上の紙箱技術者を外部から社長として招いた。昨年5月1日、冶洞洞の敷地(4357平方メートル)に、建物面積1280平方メートルの工場が開設された。しかし本当の苦労はここからだった。

 パク・サンドク社長(48)は「脱北者団体の推薦と面接を経て20人を採用したが、紙箱工場で働いたことがある人は一人もいなかった」と話した。社員らの前職はさまざまだった。大学で声楽を専攻して職場でプロパガンダのため歌っていた人、陶磁器工場で絵付けをしていた人、食糧を保存して分配する公共機関でコメを配っていた人…。

ユン・ジュホン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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