農地は生活に大事であることがわかったよね。問題を抱えながらも「農地を残したい」と考えている農家は多いんだ。地元以外の人に移住を呼びかける自治体もあるし、農業に親しんでもらえるように努める人たちもいるんだ
宮崎県日南市のまちおこしグループ「酒谷グリーンツーリズム協議会」は、酒谷地区にある「坂元棚田」の市民オーナーを募っている。坂元棚田は山のすそ野にあり、昭和初期に石垣を組んで階段状に整備されたものだ。オーナーは田植えや石垣のそうじ、稲刈り、収穫祭の農作業に参加する。
トマト農家の竹川初美さん(岐阜県白川町)は2000年、就農支援施設「ファームイン竹川」を開き、研修生を受け入れている。90年に岐阜県内で農業の仕事に就いた人は9万3000人。しかし05年には6万6000人まで減り、耕さなくなった農地は約5500ヘクタールにも上った。危機を感じた竹川さんは農業指導を始めるようになった。これまでに県内外から約20人の研修生を受け入れ、うち半年以上の長期研修生として指導した8人全員が農業の仕事に就いているという。
不況で解雇などの不安が広がる中、農業の仕事に注目する人が多くなっている。「就農」に関する相談が行政機関などで急増しているのだ。全国新規就農相談センター(東京都千代田区)への相談は、昨年12月24日以降約2カ月の間に1092件に上った。それまで年間に平均約2900件にすぎなかった。
ニュースがわかる 2009年5月号
【おすすめの本】
「日本の農業」(石谷孝佑・監修、 ポプラ社)
「日本の農業を考える」<岩波ジュニア新書>(大野和興・文 、岩波書店)
「里山のおくりもの」(今森光彦・写真・文、 世界文化社)
2009年5月8日