交通事故は約3割減り、渋滞による時間のロスも年間3億7000万時間削減できる--。車同士が無線で情報をやり取りすることで交通事故を回避するITS(高度道路交通システム)が本格導入された際の効果について、総務省がこんな試算をまとめた。
システムは、通信機を搭載した車同士が、位置や進行方向などの情報を相互に無線で交換する仕組み。さらに、交差点やカーブに設置したセンサーが車や歩行者を感知して、事故の危険性がある場合に運転手に警告する仕組みも想定されている。無線には11年7月に停止するアナログ放送の周波数の一部を活用し、政府は12年からの本格実用化を目指している。
総務省は実証実験の結果などから、システム導入で追突や出合い頭の事故が減り、普及の進んだ20年には交通事故件数が3割減ると試算。車の修理や通院費などの金銭的損失額も、現在の年間4・4兆円(04年度推定額)から3兆円程度に抑えられると見ている。また事故渋滞や無理な運転が減る効果で渋滞の解消効果もあり、渋滞による時間の損失(台数×時間)は、現在の年間37億時間から1割削減できると見込む。
ただ実用化には課題も多い。通信機同士や周波数帯の近い地上デジタル放送との電波干渉を回避するなどの技術面や、通信機を車や道路に設置するための法整備などで、総務省や国土交通省、経済団体などが官民合同で解決に向けて取り組んでいる。【中井正裕】
毎日新聞 2009年5月10日 東京朝刊