[2009年4月24日 08:30更新]
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(09年4月号掲載)
今年に入って「第一経営」(福岡市)、「三和システム」(久留米市)が相次いで破綻した。負債総額は当初100億円前後と伝えられたが、最終的にはそれぞれ180億円、170億円と通常では考えられない数字に膨れ上がり、金融機関の担当者は頭を抱えている。
2社に共通しているのは金融機関からの借り入れが1年前から急増し、ともに150億円前後となっていること。民間調査機関やマスコミをフル活用し積極的な経営方針をアピールし企業イメージを植え付けることで、銀行の担当者をだましていたようである。
銀行が持っている金融検査マニュアルを逆手に取り、表向きは完璧な「粉飾決算書」を作成。担当者がコンピューターに数字を打ち込むと、それがたとえ素晴らしいイメージを演出するための架空の数字であったとしても、機械は疑うことを知らないのでわずか数秒で優良企業=融資可と評価する。その結論に従って融資は確実に実行されてしまう。
だが、数字を作り出すのは人間である。そのことを忘れ、実際に自分で企業訪問もせず、代表の人間性や背景を考えることもしない。「機械が判断したから」と安易な姿勢でいるから数字の魔術にだまされる。これが巨額の不良債権発生につながったと言っていい。
この手口は20数年前に鹿児島で起こった「池田パン」の倒産と同じである。今回はコンピューター全盛の時代を反映してか、融資額も大きい。特に都銀は地元に密着した情報を得られないために自行がメインと錯覚し融資した担当者もいたようだ。銀行も、実にバカな行員を育てたものである。
高級車の販売からスタートし飲食業部門にも進出、M&Aで買収した企業を傘下に加えるなど、若い代表が経営する華々しい企業が福岡市西区にある。ところが、1年前は約10億円だった同社の借り入れは現在30億円を超えていると言われ、ここでも先述の例と同様、経営実態と乖離した企業イメージと数字に銀行がだまされた可能性が関係者間で囁かれている。
同社は海外にも拠点があり、もし担当者が「現地法人視察」など適当な口実で海外旅行に招待されれば、そのたびに融資が増えることになるだろう。 先輩や上司と酒を飲み遊んでこそ一人前になると思うのだが、最近はそうした付き合いを拒否する若者が増えているという。
「飲ませつかませ」はいわば営業の常道。百戦錬磨の経営者にとって、遊んだことのない若い行員らを手玉に取ることなどたやすいはずだ。
教育を怠ったツケが莫大な不良債権という形で現れたとするならば、銀行にとっては実に高い授業料─と言うほかない。
(J)
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