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社説:党首討論 大きな節目となるのか

 麻生太郎首相と小沢一郎民主党代表との党首討論が13日に開かれる見通しとなった。昨秋以来、ようやく2度目となる。自民党、民主党それぞれの駆け引きの結果のようだが、実現するのは大いに歓迎する。

 注目されるのはやはり小沢氏だ。これまで与党は何度か党首討論の開催を提案してきたが民主党は拒んできた。民主党としても、小沢氏の公設第1秘書の政治資金規正法違反事件が足かせになって討論を逃げているという印象をこれ以上国民に持たれたくないと判断したのだろう。今回は民主党の提案だった。

 各種の世論調査では小沢氏は代表を辞任すべきだとの意見が依然、6割以上に上り、民主党内でも辞任論がくすぶり続けている。古い自民党的体質の象徴といえるゼネコンからの巨額献金をなぜ受け取り続けてきたのか。こんな疑問を晴らす場になるのかどうかが、まず焦点だ。

 小沢氏が事件の話を持ち出さないのなら首相がただすべきだろう。自民党も民主党以上に政治とカネの問題を抱えている。政治家と業界の癒着体質から脱却しているのかどうか。首相からもぜひ聞きたい。

 一方、小沢氏は企業・団体献金の廃止に言及している。ならば廃止時期などについて早急に民主党内の意見をまとめ、討論で提案し、首相の考えをただすべきだ。いずれにしても討論を聞いて国民がどう判断するか、小沢氏の進退問題にも影響を及ぼすだろう。今回は停滞気味の政治を動かす節目となる可能性がある。

 テーマはそれだけではない。忘れてならないのは衆院選を間近に控える中で開かれることだ。政治家の世襲は是か非か、今年度補正予算案は本当に日本の未来につながるのか、緊急性の乏しい税金の無駄遣いはないのか、そして将来、消費税をどうするか--など党首同士の議論は、そのまま衆院選の争点に結びつく。

 今のままでは何を争う選挙なのか、有権者は戸惑う一方だ。衆院選は政権を選択するとともに首相を選ぶ選挙でもある。世論調査で「麻生、小沢両氏とも首相にふさわしくない」と6割以上の人が答える状況が討論を通じて解消されるのか。有権者も注視しているに違いない。

 そう考えると衆院選まで党首討論を毎週開いてもいいほどだ。1回1時間足らずの時間では消化不良になるのは目に見えている。加えて時間延長を考えるべき時だ。

 民主党内には与党が補正予算案の衆院通過を強引に進めるようなら、党首討論を拒否するとの考えもあるという。与党は性急な補正予算案審議を避けるべきである。党首討論が週明け、ドタキャンという事態にならぬよう願いたい。

毎日新聞 2009年5月10日 東京朝刊

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