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トヨタ、拡大路線のツケ重く 2期連続の赤字予想

2009年5月9日0時4分

写真:トヨタ自動車の3月期決算について会見する渡辺捷昭社長=8日午後、東京都文京区、小宮路勝撮影トヨタ自動車の3月期決算について会見する渡辺捷昭社長=8日午後、東京都文京区、小宮路勝撮影

図:トヨタ自動車の連結売上高の推移トヨタ自動車の連結売上高の推移

 トヨタ自動車が2期連続の赤字予想に追い込まれたのは、拡大路線の中で急増した設備投資負担の重荷を減らせないからだ。自動車販売市場は回復の兆しが見えず、大幅な円安も見込めない見通し。6月に社長に就任する豊田章男副社長は、重い課題を背負ってのスタートとなる。

■設備投資が重荷

 「足元を固めながら成長していくと言い続けていたつもりだったが、十分でなかった。率直に反省している」

 トヨタの渡辺捷昭社長は記者会見で、こう述べた。

 トヨタは最近の世界販売の増加に対応し、毎年、富士重工業1社分にあたる50万台規模の生産能力を増強してきた。

 その結果、09年3月期は連結販売台数が前期比15%減の756万台となったのに、設備投資をすればするほど大きくなる減価償却費は1兆721億円と逆に2%増えた。10年3月期は連結販売台数がさらに14%減を見込むのに、減価償却費は1兆円と高水準のまま。資金繰りに余裕を持たせるため、久々に銀行から3千億円を借り入れた。

 期間従業員を05年のピーク時の約1万2千人から今年4月には約2500人に減員。工場の稼働延期や原価低減にも取り組んだ。09年1〜3月の生産水準を前年比で半分程度と極端に落とし、膨らんだ在庫の圧縮も図った。

 1〜3月期だけで6825億円の営業赤字を計上する犠牲を払った。しかし、能力増強のツケはあまりにも大きく、10年3月期の黒字転換は、ほど遠かった。

■プリウス効果未知数

 トヨタをはじめ、自動車業界が業績回復の特効薬として期待しているのが、各国政府の買い替え奨励策だ。ハイブリッド車で圧倒的な強みがあるトヨタには有利とみられるが、「見通しが立たない」(渡辺社長)として業績見通しにプラス材料として織り込まなかった。

 実際、18日に発売予定の新型プリウスは、すでに受注が6万台を超える大ヒットとなっているが、販売店によっては受注の8割がプリウスに集中しており、他のトヨタ車の販売台数を減らす可能性が出ている。

 海外市場は、依然として好材料が見つからない。米国の4月の新車販売は前年比34%減と歴史的な低水準。しかも、トヨタの落ち込み幅はゼネラル・モーターズ(GM)やフォードモーターより大きかった。

 米国以外でも、国内総生産の見通しを下方修正する国は多く、世界的な消費不振は、当面続きそうだ。

 渡辺社長は会見で、今後は経済成長が続く新興国や資源国に注力する考えを示したが、米国を抜き最大の自動車市場となった中国市場でトヨタは、独フォルクスワーゲンやGMに大きな差をつけられている。アナリストは「トヨタは中国では勢いが感じられない。これでは業績の急回復は難しい」と指摘する。

 トヨタは1月時点で、国内の1日あたりの生産台数を、5月には効率的な生産が可能な1万2千台に戻せるとみていたが、来年以降にずれ込む見通しだ。

 トヨタは「工場の閉鎖は考えていない」としているが、追随して設備投資を拡大した中小の部品メーカーの中では、事業の継続を断念する動きも出始めている。(中川仁樹)

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