「私は大変な借金をした大臣として歴史に残ることになる」。今国会の二〇〇九年度補正予算案審議を聞いていて、宮沢喜一元首相の言葉を思い出した。
宮沢氏は円高不況に揺れた一九八六年と、金融危機に襲われた九八年に蔵相に就任した。景気回復のために補正予算を伴う大規模な財政出動を続けたが、肝心の経済は泥沼から抜けきれないまま財政赤字を膨らませた。
麻生内閣も大型の経済対策を次々と打ち出す。〇九年度の補正予算案は過去最大となる十四兆六千九百八十七億円の財政支出を盛り込んでいる。財源が足りず、当初予算と合わせた〇九年度の国債発行額は四十四兆一千億円とこれまでで最も大きくなる。
補正予算の怖さは、予算の膨張を防ぐために設けられた概算要求基準に縛られず、大盤振る舞いになりやすいことだ。特に今回は衆院選が迫っているだけに、使い道を厳選するよりも有権者の歓心を買おうとしたばらまきが指摘される。
国会審議で、麻生太郎首相は「補正予算の早期成立で、景気不安に嘆く国民に、より良いメッセージを与えることができる」と強調した。しかし、借金頼みの経済対策では重いつけを背負うことになりかねない。
宮沢氏の嘆きを再び聞くことにならないだろうか。国会は、財源論議を高めるべきだ。