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「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」についてよく尋ねられる質問


(全般的な質問)
 この法律に書いてあることは、もう始められているのですか。
 この法律は、平成13年4月6日に成立し、4月13日に公布されています。この法律が効力を発するのは、平成13年10月13日(公布の6ヶ月後)となっています。
 ただし、配偶者暴力相談支援センター、婦人相談員、婦人保護施設についての規定については、平成14年4月1日からとなっています。

 この法律は女性に対する暴力のみを対象としたものですか。
 この法律は、配偶者からの暴力を対象としており、女性に対するものだけでなく男性に対するものもその対象となっています。したがって、男性被害者であっても、この法律による保護等を受けることができます。
 しかし、配偶者からの暴力の被害者の多くは女性であることなどから、女性に対する暴力に十分配慮した規定となっています。

 この法律は外国人にも適用されますか。
 この法律は、国籍や在留資格を問わず、日本にいるすべての外国人にも適用されます。

 籍を入れていない夫から暴力を振るわれています。この法律の対象となりますか。
 この法律における「配偶者」には、婚姻の届出をしている配偶者のほか、事実上婚姻関係と同様の事情にある者も含むことになっています。事実上婚姻関係と同様の事情にあるというのは、いわゆる「内縁関係」や「事実婚」といった場合です。これらの場合は、配偶者に含まれることとなります。ただ、「内縁関係」や「事実婚」に至らない単なる「同棲関係」である場合は、配偶者とは呼べません。
 「内縁関係」「事実婚」と「同棲関係」の区別は、それぞれの関係や本人の意思などを参考に判断されるものであり、明確な基準があるわけではありません。まずは、お近くの相談窓口で相談されることをお勧めします。相談窓口については、都道府県にお問い合わせください。

 別居中の夫から暴力を振るわれています。この法律の対象となりますか。
 配偶者は、同居していようが別居していようが関係ありません。別居中の夫から暴力を振るわれている場合も、当然この法律の対象となります。

 離婚した元夫から暴力を振るわれています。この法律の対象となりますか。
 離婚前に暴力を受け、離婚後も引き続き暴力を受けるおそれがある場合は、配偶者暴力相談支援センターでの相談や一時保護等の対象になります。ただし、保護命令の対象にはなりません。
 離婚前には暴力の問題がなく、離婚後になって初めて元夫から暴力を受けた場合は、この法律の対象となりません。

 夫は手は挙げないのですが、私を傷つけるようなひどいことをいいます。これは配偶者からの暴力になりますか。
 この法律において「暴力」とは、殴ったり蹴ったりといった身体に対するものを想定しています。したがって、言葉でいたぶるといった暴力は、原則としてこの法律の対象となりません。ただし、言葉によるものであっても、刑法上の傷害罪に含まれるようなPTSD(心的外傷後ストレス障害)にまでいたる場合は、「暴力」に含まれることもあります。
 また、配偶者暴力相談支援センターにおける相談、一時保護、婦人相談員による相談、婦人保護施設における保護等については、身体的な被害を受けた人だけでなく、心身に有害な影響を及ぼす言動を受けた人もその対象となります。

(配偶者暴力相談支援センター関係)
 配偶者暴力相談支援センターとは何ですか。
 配偶者暴力相談支援センターとは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るための業務を行う施設で、都道府県が設置する婦人相談所その他の適切な施設です。都道府県によっては、いくつかの適切な施設が配偶者暴力相談支援センターとしての役割を果たすこととなっています。

 配偶者暴力相談支援センターに行きたいのですが、どこに連絡すればよいのですか。
 配偶者暴力相談支援センターの連絡先などについては、各都道府県にお問い合わせください。

 配偶者暴力相談支援センターではどのようなことをしてくれるのですか。
 配偶者暴力相談支援センターでは、次のようなことを行います。
 <1>  相談や相談機関の紹介
 <2>  医学的、心理学的、その他の指導
 <3>  被害者やその同伴家族の一時保護
 <4>  自立支援のための情報の提供等
 <5>  保護命令制度の利用についての情報の提供等
 <6>  被害者を居住させ保護する施設の利用ついての情報の提供等

 一時保護とはどういうことですか。
 短期的に、夫と離れ、別の施設で安全に生活することです。

 どこに一時保護されるのですか。
 都道府県が設置している婦人相談所の一時保護施設か、婦人相談所から委託された民間の施設等になります。
 いずれも、安全な施設です。

 一時的に保護してもらった後、行くあてがありません。結局、夫のところへ戻らなければならないのですか。
 夫のところに戻らなくても生活できるよう、自立のための支援等が行われます。今後のことも含め、相談されることをお勧めします。

 子どもがいるのですが、子どもも一緒に保護されるのですか。
 子どもなどの同伴家族も一緒に一時保護されます。

(被害者の保護関係)
 近所の人に、夫から暴力を受けているのを見られたのですが、必ず配偶者暴力相談支援センターや警察官に通報されますか。
 法律では、配偶者からの暴力を受けている人を見つけた場合は、配偶者暴力相談支援センターや警察官に通報するよう呼びかけています。
 家庭内で行われることが多い配偶者からの暴力は、発見するのが困難な上、被害者も様々な理由から保護を求めることをためらうことも考えられます。被害者の保護を図るための情報を広く社会から求めるため、法律は、このように呼びかけています。

 医者が、傷を見て、夫からの暴力だと思った場合、必ず通報するのですか。
 この法律では、医者や看護婦等の医療関係者が、配偶者からの暴力によるケガなどを見つけたときは、配偶者暴力相談支援センターや警察官に通報することができることとなっています。ただ、この場合、被害者の意思を尊重するよう努めることとなっています。
 必ず通報されるわけではないので、心配せずに、ケガをした場合は安心して医者の診断を受けるようにしてください。

(保護命令)
 保護命令とは何ですか。
 保護命令とは、被害者を守るために、裁判所が加害者に対し出す命令のことです。
 この保護命令には2つの種類があります。
 <1>  接近禁止命令
 加害者に対し、6ヶ月間、被害者につきまとったり、住居、勤務先など被害者が通常いる場所の近くをはいかいしたりすることを禁止するものです。
 <2>  退去命令
 加害者に対し、2週間、家から出て行くよう命ずるものです。この退去命令は、夫婦が生活の本拠を共にする場合のみ、出されます。

 接近禁止命令によって、夫が電話をかけてくることも禁止されますか。
 この法律では、電話までは禁止されません。実際につきまとったりはいかいしたりすることのみが禁止されます。

 退去命令を出してもらうには、夫婦が生活の本拠を共にしていなければならないということですが、夫の暴力がひどく、一時的にホテルで生活している場合には出してもらえないのでしょうか。
 生活の本拠を共にするというのは、同居しているというよりは広い意味です。例えば、一時的にホテルや実家に避難していたり、婦人相談所で一時保護を受けているといった場合は、同居していませんが、生活の本拠は共にしていると言えます。したがって、夫の暴力がひどく、一時的にホテルで生活しているような場合でも、退去命令を出すことはできます。

 保護命令が出るのはどのような場合ですか。
 配偶者からの暴力を受けた被害者が、更なる配偶者からの暴力により、生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに保護命令が出されます。

 元夫に対する保護命令も可能ですか。
 この法律では、離婚した元夫に対する保護命令は認められていません。
 ただし、元夫からの暴力は、配偶者暴力相談支援センターでの相談や一時保護等の対象にはなります。

 保護命令を出してもらうにはどうすればよいのですか。
 保護命令を出してもらうには、まず、申立書を作成します。申立書には、
 <1>  暴力を受けた状況
 <2>  更なる配偶者からの暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいという事情
 <3>  配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に相談したり、援助や保護を求めたことがあれば、
 イ 職員の所属官署の名称
 ロ 相談したり援助、保護を求めた日時、場所
 ハ 相談や求めた援助、保護の内容
 ニ 相談や援助、保護の求めに対して執られた措置
を記載します。
 この申立書を、
 ○  相手の住所を管轄する地方裁判所
 ○  自分の住所又は居所(一時保護を受けている場合の保護施設等)を管轄する地方裁判所
 ○  暴力が行われた場所を管轄する地方裁判所
のいずれかに提出します。

 申立書はどのように書いたらよいのですか。
 特に決められた書式はありません。必要な書類を簡潔な文字で明瞭に書いてください。不明な点がありましたら、お近くの地方裁判所にお問い合わせください。

 申立てにはお金が必要ですか。
 手数料として600円が必要となります。そのほか、書類の相手方への送達のための費用などを裁判所に予納することが必要となります。

 配偶者暴力相談支援センターの職員や警察職員に相談等をしたことがないのですが、この場合、保護命令は出してもらえないのですか。
 このように、申立書に配偶者暴力相談支援センターの職員や警察職員に相談した事実等が書けない場合は、その代わりに、
 <1>  暴力を受けた状況
 <2>  更なる配偶者からの暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいという事情
 について書いた書面を公証人役場に持っていき認証を受け、この認証を受けた 書面を申立書と一緒に地方裁判所に提出します。

 暴力を受けてから3ヶ月がたっています。保護命令は出ますか。
 更なる配偶者からの暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと判断されれば、保護命令は出されます。暴力を受けてからの期間については、更なる暴力を受けるおそれがあるかないかの判断材料にはなりますが、一律、これ以上たっているからダメというものではありません。

 暴力を受け、婦人相談所に相談に行ってから3ヶ月がたっています。保護命令は出ますか。
 更なる配偶者からの暴力により生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと判断されれば、保護命令は出されます。暴力を受けてからの期間や相談に行ってからの期間については、更なる暴力を受けるおそれがあるかないかの判断材料にはなりますが、一律、これ以上たっているからダメというものではありません。

 申し立てからどのくらいで保護命令は出るのですか。
 法律で、裁判所は速やかに裁判をすることとなっています。期間については、それぞれの事案によって異なってきますが、迅速に保護命令が出されるものと思います。

 申立書を出した後、何かしなければならいことがありますか。
 裁判官に対して、事情の説明を行う場合もあります。

 保護命令を出す前に、裁判所が加害者の話を聞くことはありますか。
 基本的には、裁判所が加害者から話を聞いた後で保護命令を出すこととなります。

 加害者から話を聞いたりせずに、早く命令を出してもらわないと、暴力がエスカレートしそうなのですが。
 加害者の話を聞いていたのでは、保護命令の目的を達することができないといった事情があるとき、例えば、緊急に命令を出さなければ、被害者の生命身体に重大な危険が生じると思われるときなどは、加害者から話を聞かずに保護命令を出すこととなります。

 加害者が裁判所に出てこない場合は、いつまでたっても保護命令は出ないのですか。
 このような場合は、加害者には話す機会は与えたけれども、加害者自らがこの機会を放棄したとみなし、加害者から話を聞かずに保護命令を出すこともあります。

 保護命令に反して夫が近付いてきた場合、どうすればよいですか。
 保護命令に違反することは犯罪です。110番などにより、警察に通報してください。保護命令に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

 保護命令を取り消したいのですが、可能ですか。
 接近禁止命令については、被害者が裁判所に取消しを申し立てれば、命令は取り消されます。また、接近禁止命令が効力を生じてから3ヶ月が経過した場合において、加害者から申立てがあり、被害者が取消しについて意義がないときも、命令は取り消されます。

(その他)
 警察に相談に行くと、夫が検挙されるのですか。
 警察では、被害者の意思を十分に踏まえ、検挙その他の最善の措置を採ることとしています。

 警察は、夫を検挙しない場合には何もしてくれないのですか。

 警察では、夫を検挙しない場合であっても、夫に対して指導、警告を行ったり、被害者に対して防犯指導や適当な相談窓口を紹介したりするなど、被害者を支援することとしています。

 電話で相談したいのですが、可能ですか。
 都道府県によって異なりますので、詳しくは都道府県にお問い合わせください。多くの都道府県で、電話相談を行っています。

 相談に行っても、十分な対応を採ってもらえないのではないか心配です。
 この業務に関係する職員等に対しては、十分な研修を行うこととしています。安心して相談に行ってください。


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