2007年12月05日

限界集落を再生し共生集落にする「希望創造プログラム」

先月30日に都道府県会館で行なわれた「全国水源の里連絡協議会」の設立総会に民間の研究者として参加しました。

全国には過疎・高齢化が進行し、コミュニティの維持など、地域活動が困難な状況に直面している水源の里(いわゆる限界集落)が7,873集落あり、平成19年度国土交通省の調査によると、そのうち消滅の恐れがある集落は2,641あるとされ、今後も全国に拡大し続けることが予想されているそうです。 

 

総会には、九十一市町村の首長ら約百八十人が出席。席上、徳島県美馬市の牧田久市長が「山の中にも立派な道を造ったが、少子高齢化は食い止められなかった。集落で生活できるための施策が必要だ」と訴えた。 

さらに、総会アピールを採択。参加自治体がそれぞれが集落再生策に取り組む▽互いに積極的に情報交換する-ことを確認し、集落の活性化に向けたモデル事業の実施と各地自体の再生策に対する交付金制度の創設を、国に求めていくことを決めた。また、会長に京都府綾部市の四方八洲男市長を選んだ。(12月1日 神戸新聞記事より引用)

 

結論から申し上げますが、私は限界集落を再生し、老若男女が豊かに暮らしていける共生集落へ生まれ変わらせることは可能であると考えています。採択された総会アピールにも「農林業など地域の資源を活かした産業の創出」の必要性が叫ばれていますが、まさにこの「地域の資源」を有効活用することが、限界集落を共生集落に導く扉を開ける鍵であると自信を持って申し上げたいと思います。

 

 「地域の資源」と言ってもピンとこないかも知れませんが、木工家でもある私には資源が何であるのかがハッキリ見えるのです。それは森林であり、森林から生み出される「森の恵み」にほかなりません。以下に森林から恵みを得るプロセスを簡単に記します。

◇日本の国土の3分の2を占める森林のうち、1,000万ヘクタールの杉・桧の人工林を整備する。現在ほとんどが放置されている杉・桧に商品価値をつけ、市場に流通させるとともに、耐震補強材や仮設住宅用の建材、海外への支援物資として活用、備蓄する。余剰木材は中国などへ輸出する。

 

◇伐採した杉・桧の枝葉や表皮、木っ端(こっぱ)は、すべてバイオマス燃料の原料や、木炭、燃料ペレット、堆肥などに加工する。

 

◇伐採した「跡地」には、人の食糧となる果樹、家畜の飼料となる植物、森の生き物たち餌となるどんぐりを落とす広葉樹、そして薬の原料となる薬樹などを植林する。つまり、現在放置されている人工林を「食糧」「飼料」「バイオマス原料」の生産地に再生させる。

◇この森林開拓(実際には森林土木事業)の前線基地として限界集落を活用する。イメージ的にはスタジオジブリ作品もののけ姫の「たたら場」を思い描いて頂きたいが、当然、この営みは森のもののけたちとも共生できるものである。 

 

◇この前線基地は「飯場(はんば)」としてスタートするが、いずれは「地域の資源」であり続ける森の恵みを下流の都会に届ける「生産地」としての集落に変わり、最終的に究極のセーフティーネット型のコモンズ集落として、この国になくてはならない場所に発展していく。

 

 このように森林を開発することにより、この国に暮らす人の未来はどのようになるでしょうか。ビフォアー・アフター方式で論じてみます。

◇莫大な雇用を生み出す

<ビフォアー>

地方の「仕事」は道路建設などの土木型公共事業であったが、三位一体の改革などにより地方の「仕事」は減り、若者の都会流出は止まらなく地域の過疎化に拍車をかけている。都会での仕事も労働形態の多様化により減少し、ホームレスという路上生活者を多数生み出す結果となっている。

<アフター>

森林土木事業従事者が激増する。「しゃれ」ではないが、森林には仕事が「山」ほどあることが認知されるに連れ、日本の森林は「宝の山」であるという意識が共有されていく。森林整備やバイオマス燃料製造に関係する設備投資や技術開発も活発になっていく。ホームレスは都会から姿を消し、森林開発や関連事業所での職に就いている。

◇日本は「環境立国」として君臨

<ビフォアー>

京都議定書の数値目標の達成が危ぶまれている。中越沖地震により世界最大の原子力発電所の運転が停止したことにより、関東圏は石油を燃やす火力発電に頼らざるを得ない状況が続いている。

<アフター>

バイオマス燃料による火力発電の比率が高まっていき、将来は原子力、水力、バイオマス火力発電などで全ての電力をまかなうことになる。

電力会社にとどまらず、大型の工場なども石油系燃料を利用したボイラーからバイオマスボイラーへの転換が進み、石油などの化石燃料が枯渇した後も日本の産業は森の恵みに支えられ繁栄し続けている。

地球温暖化防止に関する日本企業の技術力はますます高まり、日本は「環境技術」の輸出大国となり世界のリーダーとして君臨しているに違いない。

 

 ◇「資源大国」に生まれ変わる

<ビフォアー>

「日本には資源が無い」、だから国策として石油資源を追い求めている。様々な理由により原油価格が高騰することにより、物価が高騰したり、企業の業績が悪化したりするなど、生活や経営に大きな影響を与えている。

<アフター>

「日本は資源大国である」ことが常識になる。もちろんこの資源とは石油や天然ガスなどの枯渇型資源ではない。非枯渇型の生物資源であり、未来永劫に持続可能な再生産可能資源である。

バイオマス燃料の製造や生ゴミなどをエネルギーに変える日本の技術は世界で卓越しており、日本に暮らす全ての人々や、全ての企業が脱化石エネルギー化にベクトルを合わせることにより、自然エネルギー関連分野では世界一の座を射止めることは疑う余地はない。

◇食糧自給率100%を達成できる

<ビフォアー>

現在の食糧自給率は39%であり、先進国では世界最低と言われている。農村は疲弊し、文化やコミュニティの破壊も進行し続けている。穀物飼料の高騰から日本の畜産産業は危機にひんしているのが現状である。

また、石油燃料の高騰からハウス栽培農家の経営にも暗雲がたち込めており、日本の農業そのものへの不安が広がってきている。

<アフター>

森林が生み出す莫大な堆肥はやせ細り、化学肥料で持ちこたえているだけの農地に「力」をつける。極めて安価な堆肥により再生された農地や水田では、食料だけではなく、葉と茎も利用する飼料イネや飼料米も大量に生産される。

再生された森林から得られる食料と合わせ、日本の食糧自給率は限りなく100%に近づいていくとともに、穀物飼料の国産化により、畜産産業は安定したものになる。

ハウス栽培の暖房用燃料も、石油から木炭を含む安価なバイオマス燃料に100%変わることにより、ハウス栽培や屋内栽培農家の国際競争力は格段に向上し、外貨を獲得する輸出に貢献することになる。

農協も復権するとともに、農業関連機械や設備のメーカーなども更なる発展を遂げることになる。 

 

 ◇日本は希望社会に変貌を遂げる

<ビフォアー>

 「生きがいや働きがいがあり、病気や年をとったときに生活を支える仕組みのある社会。そんな希望社会をつくるには、どうしたらよいのか。」

「中国やインドなどのアジア諸国が急発展し始め、追いかけてくる。負けないためには、知と技にあふれる産業や企業を育てていかなければいけない。」(朝日新聞 希望社会への提言シリーズより引用)

この 経済大国の日本では、高齢者が孤独死し、路上生活者が餓死や凍死し、経済苦で自殺を選択する人が後をたたない。将来不安から人々は凶暴になり、精神的荒廃も進んでいると誰もが考えているのが実情である。

<アフター>

森林を再生することにより、この国に暮らす人々は森林とともに生きていくことが可能になる。たとえ地球の温暖化が進んでも、緑豊かなこの国で子孫たちは永遠の生き延びて行くことができるのである。

多くの限界集落は低負担高福祉型の共生集落、バイオマスコモンズへと変貌する。生活弱者がこの集落に暮らしたり、若者が山村や農村にUターンしたり、都会の生活者が地方へ移住したりする選択肢を得ることはこの国に暮らす人々の特権になっていく。

さらにこの集落をCATのようなエコロジー・テーマパークに発展させ、海外からの観光客の訪問地にすることも可能だ。希望社会の定義は人それぞれ違うと考えるが、再生された森林と共生集落は少なくとも希望社会のインフラ(基礎構造)として位置づけられているに違いないのである。 

 

 加えて、日本から花粉症はなくなるというメリットもあります。花粉症による経済損失は3,000億円とも言われています。この森林再生による希望社会づくりプロジェクトの障害は固定観念だけです。その固定観念は以下の通りです。 

 

◇木材の商品化は不可能

杉・桧の人工林から切り出された木材は安価な外国材との競争で負ける。その理由は、@木材の加工コストがかかり過ぎる。A木材の運搬コストや製品の運搬コストがかかり過ぎる。よって一般消費者や建築会社などの利用者は国産材の利用を選択しない、というのが日本の常識である。 

 

これはまさに固定観念そのものです。メインテーマである木材の商品化(黒字化)そのものも達成可能ですが、副産物として生み出される「富」は莫大であり、このプロジェクトにチャレンジしないという選択は有り得ないものと考えます。 

民間のコンサルタントとしてこのテーマを研究してきた私が有する、このプロジェクトのシステムとノウハウを開示すれば、誰もがチャレンジする価値があることに気付くことでしょう。 

 

 

ウォルト・ディズニーがカリフォルニアのディズニーランド構想を発表した時、誰もが「成功しない」とウォルトに異論を唱えました。

東京ディズニーランドがオープンする前、出店要請を受けた日本の老舗百貨店は「我々が遊園地に出店することはない」とオリエンタルランド社側のオファーを断りました。

確かにこのプロジェクトの概要や構想は分かりづらいとは思います。それでも子ども達の未来のためにも、この国で生きて行く私たちの子孫のためにも、このプロジェクトは絶対に成し遂げなくてはなりません。

考えれば考えるほどプレッシャーにつぶされそうになる今日この頃ですが、この日本には私と意を同じにする人たちが必ずいると固く信じ、今後も活動していきます。

最後に私が講演で紹介する「元気になる話」を紹介しておきます。 

 

☆ケンタッキーフライドチキンの創始者であるカーネル・サンダースは、65歳のとき維持できなくなったレストランを手放した。彼の手元に残っていたのは、中古車と自らあみ出したフライドチキン調理法だけだった。

その後、彼はフライドチキンのオリジナル・レシピを教える代わりに、売れたチキン1羽につき数セントを受け取るというビジネスを思いつく。今でいうところのフランチャイズビジネスだ。 

 

車で寝泊まりしながら各地のお店を回るが、フランチャイズビジネスの概念が一般化していない当時、彼は、何度も「ノー」を突きつけられたという。それでも、不屈の精神力と情熱でチャレンジしつづけた。結局、彼が「イエス」の返事をもらったのは、なんと1,006店目のお店だったという。 

 

☆ 夢とは心に願うこと ウォルト・ディズニー 

 

このプログラムに関するビジネス上の記事はこちらから

FUTURE HOPES COME TRUE